ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

集団的自衛権は行使すべし12

2008-01-21 08:49:06 | 憲法
●五大国による準寡占体制と、拡大する地域安保体制

 新たにできた国際連合について見逃してならない点は、国連とは連合国国際機構であり、安保理の常任理事国となった第2次大戦の戦勝国を主役とするものだったことである。国連の集団安全保障体制とは、戦勝国が中心となって国際秩序を維持しようとした体制である。言い換えれば、集団安全保障体制は、米英ソ仏中の五大国による世界寡占体制として構想されたわけである。
 この寡占体制は、完成しなかった。できあがったのは、準寡占体制とでもいうべき中途半端な体制だった。その理由は、主に第2次大戦後に二大超大国となった米ソのイデオロギーと国益の対立による。そこにイギリス、フランスのそれぞれの思惑も絡んでいる。その結果、集団安全保障についても、理想にとどまった状態で、60年以上が経過している。今も、集団安全保障体制の実現の見通しはない。それゆえ、私は、集団的自衛権は集団安全保障を補完するものではなく、集団安全保障体制を構築するための基礎となるものと理解するのが現実的だと思う。

 国連は創設時から現在まで、国連に武力を集中しえていない。各国は独自に武力を保有しており、それをもとに地域的な安全保障体制を築いている。その地域的な安保体制は、旧来の軍事同盟にほぼ等しいものであり、集団的自衛権の行使である。
 特に安保理の常任理事国である米ソが冷戦を続けていた時代においては、国連は存在感が薄く、NATO(北大西洋条約機構)を中心とした西側と、ワルシャワ条約機構による東側が、それぞれ集団的自衛権による安全保障機構をつくって、軍事的に対峙していた。
 ワルシャワ条約機構は、ソ連の崩壊によって解消された。NATOは健在であり、今日の世界で最も強力な地域的安全保障体制である。これは、明らかに集団的自衛権に基づく機関である。NATOの加盟国は、どの加盟国に加えられる外部の脅威に対しても、結束して戦うことを条約で誓っている。
 アジア、太平洋、アフリカ、ラテン・アメリカ等に、地域的な安全保障条約機構が、多数作られ、世界はそうした地域機構が並列する体制となっている。戦勝五大国による世界寡占体制は構築されなかったが、米英ロ仏中の五カ国は、依然として安全保障理事会の常任理事国という地位を占め、また核保有大国として国際社会に強い影響力を維持している。

●旧敵国にとどまる日本

 国連憲章を論じる時、忘れてはならないのは、旧敵国条項である。わが国は連合国の旧敵国であり、連合国憲章としての国連憲章が定める旧敵国条項の該当国だとされてきた。
 国際連合は、連合国の敵国に対する軍事同盟が根本である。そのうえで、集団安全保障、集団的自衛権が規定されている。国際連合は憲章第2条1項に、加盟国の主権平等の原則を謳う傍ら、戦勝国である五大国のみには、拒否権という特権が与えられている。国際連合は、このように加盟国に明確な差別をした国際機構であり、戦勝国による戦後世界の寡占支配を固定しようとしたものである。連合国による戦後世界秩序という枠組みの中に、集団安全保障も集団的自衛権も意義付けられているということが、重要なポイントだと私は思う。
 旧敵国条項とは、第2次大戦中に連合国の敵国であった国々に対し、地域的機関などが、安全保障理事会の許可がなくとも強制行動を取り得ること等が記載されている条項である。第53条と第107条である。条文には明記されていないが、旧敵国とは、日本、ドイツ、イタリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、フィンランドの7か国を指すと考えられてきた。アメリカも中国も、ロシアもフランスも、いざとなれば自由に日本に攻め入ってもいいということを堂々と決め、それを半世紀以上も、そのままにしてきたのである。
 旧敵国は、国連に加盟してもなお差別的に扱われているわけだから、国連の枠内での集団的自衛権も、自国の安全保障には真の意味でなってはいない。旧敵国条項を削除しない限り、旧敵国は国連加盟国の基本的な権利を保障されない。わが国が国連加盟によって、個別的自衛権及び集団的自衛権を認められたと喜ぶのは、旧敵国条項を削除してからすべきものである。

 わが国は、「国連=連合国」に加入後、その一員として誠実に役割を果たし、経済復興後は、巨額の分担金を払って、組織を支えてきた。昭和45年(1970)の第25回国連総会以来、わが国は、たびたび総会などの場で、国連憲章から「旧敵国条項」を削除すべしとの立場を主張してきた。平成6年(1994)12月、ようやく総会において憲章特別委員会に対し、「旧敵国条項」の削除の検討を要請する決議が採択された。平成7年(1995)12月には、第50回総会において憲章特別委員会の検討結果を踏まえて、削除へ向けての憲章改正手続きを開始する決議が採択された。そこからもまた、長い。もう10年以上過ぎている。
 今日においても、同採択を批准した国は効力発生に必要な数には遠く及ばず、敵国条項は依然として国連憲章にその姿を留めたままとなっている。死文化されたとはいうが、条文がある以上、悪用されないとは限らない。
 わが国民には、国連に対して幻想を抱いている人が多いようだ。「国連中心主義」などという外交・防衛政策を打ち出している政治家もいる。集団的自衛権に関する論議でも、国連への期待をもとにした意見が多く聞かれる。しかし、上記の経緯・現状を見ても、「国連=連合国国際機構」に幻想を抱くべきでなく、偶像視すべきではないのである。

 次回に続く。


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