ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

女性宮家創設は皇位継承の伝統によるべし

2011-11-29 13:07:56 | 皇室
 東日本大震災を通じて、日本人の多くは、皇室の大切さを改めて深く感じた。
 大震災発生後、被災地で多くの犠牲者が出て、国民が懸命に救援・復旧に当たっているなか、3月16日天皇陛下より、国民にビデオでメッセージを賜った。直接の呼びかけは昭和天皇の終戦の玉音放送以来だった。
 天皇陛下は、そのメッセージにおいて、「被災した人々が決して希望を捨てることなく、身体(からだ)を大切に明日からの日々を生き抜いてくれるよう、また、国民一人びとりが、被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ、被災者とともにそれぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを心より願っています」と語られた。
 3月30日、天皇皇后両陛下は、福島県などからの被災者が避難している東京都足立区の東京武道館を訪問された。両陛下は、ひざまづいてすべての区画を回られ、「家族は大丈夫ですか」「本当にご心配でしょう」と声をかけられた。複数の避難所を転々とした被災者の話を聞くと、「大変ですね」と述べられた。皇后陛下は、幼児の母親に「ミルクやおむつはあるの?」「屋外で遊ぶところはあるんですか」などと聞かれ、子供たちにも話し掛けられた。
 その後、両陛下は千葉、宮城、岩手、福島と東北3県を含め、7週連続で被災地のお見舞いをされた。どれほど被災者の人々の慰めとなり、また勇気と希望を与えたか知れない。津波で壊滅した町のがれきに向かって両陛下が深々と拝礼をされた写真が国民に感動を与え、また国境を越えて尊敬を集めた。

 さて、藤村官房長官は11月25日の記者会見で、宮内庁の羽毛田信吾長官が10月5日、野田首相に対し、「今の制度の下では女性皇族の方は婚姻で皇室を離れる制度になっており、女性皇族の方々がご結婚年齢に近い年齢になっている。皇室のご活動という意味で、緊急性の高い課題がある」と伝えていたことを明らかにした。
 「緊急性の高い課題」が女性宮家の創設を意味することは、明らかである。現在皇族方22人のうち、未婚の女性皇族が8人がおられる。10月に秋篠宮家の長女、眞子様が20歳になったのをはじめ、女性皇族が相次いで結婚年齢に近くなられている。現行制度では女性皇族は結婚すると、皇室の身分を離れることになっている。悠仁親王殿下が誕生されたことで、次々世代の皇位継承問題は一段落したものの、皇族方が減ると皇統の安定的な維持に影響が出る。また、多岐にわたる公務の分担が難しくなる。そこで、女性皇族が結婚されても皇籍にとどまることのできるような制度の改正が、課題になっている。
 私は、男系男子による皇位継承のための方策は、第一に旧皇族の皇籍復帰、第二に皇族の養子制度の許可、第三に女性宮家の創設と考える。第一の旧皇族の皇籍復帰は、大東亜戦争の敗戦によって占領期に皇籍離脱した旧皇族を対象とする。第二の養子制度は、養子の対象範囲を旧宮家の男系男子とする。養子を可能にすることで現在の宮家の存続ができる。第一及び第二の方策を組み合わせれば、皇位継承の安定性は格段と増す。これらの方策をはじめから排除して、第三の方策だけを考えるのは、消極的な発想である。
 女性宮家の創設については、女性皇族を中心とする新しい宮家を設立しても、結婚相手が民間人であれば、そこに誕生するお子様は女系となる。そのため、男子が誕生しても、男系男子で継承してきた皇位の継承者にはなり得ない。だから、皇位の安定的な継承には寄与しない。まして、女性宮家の創設を将来女系継承を可能とする布石とするような発想であれば、男系男子による皇位継承を否定し、わが国の皇統を廃絶させる道となる。女性宮家の創設という案は、男系男子継承の堅持という大原則に立って設計されるのでなければならない。私は、内親王・女王が旧宮家の男系男子と結婚して新宮家を立て、皇族身分にとどまることができるように制度を変えるのがよいと思う。そのお子様は皇族となるし、また男子のない宮家へ養子に入れるようにもすれば、絶家を免れるのみならず、そこに生まれる子も皇族となる。このようにして、皇族の数が増えるならば、皇統の維持が補強される。
 詳しくは、拙稿「皇位継承問題――男系継承への努力を」に書いた。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion05b.htm
 上記拙稿の約1年後、平成18年9月6日悠仁親王殿下が誕生された。だが、拙稿の基本的な考え方は現在も有効と考える。悠仁様のご誕生により、皇位継承が少なくとも一世代長く担保された今のうちに、国民の英知を集め皇室制度を末永く守るための制度強化を図るべきである。
 以下は、関連する報道記事、及び小堀桂一郎氏の意見を掲載。

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●産経新聞 平成23年11月26日

http://sankei.jp.msn.com/life/news/111126/imp11112602520002-n1.htm
【主張】
女性宮家問題 男系の歴史踏まえ熟議を
2011.11.26 02:51

 宮内庁の羽毛田信吾長官が野田佳彦首相に対し、女性皇族が婚姻後に皇籍を離れる現制度について「皇室のご活動という意味で緊急性の高い課題がある」と説明し、藤村修官房長官も「安定的な皇位継承を確保するという意味では、将来の不安が解消されているわけではない」と述べた。
 具体的な制度の検討を首相に要請したのではないとしているが、「緊急の課題」が女性宮家創設の問題であることは明白だ。
 現行の皇室典範は皇位継承権を男系の男子に限っている。皇位継承権を持つ男子皇族は7人だが、皇太子さま、秋篠宮さまの次の世代は悠仁さまだけである。一方、未婚の女性皇族は8人で、うち成年皇族は6人だが、結婚と同時に皇籍を離脱されるため、皇族の減少が懸念されている。
 女性宮家創設は、女性皇族が結婚しても皇籍を離れないように皇室典範を改め、皇族の減少を防ごうという制度だ。将来の皇位継承を安定したものにするとともに、天皇陛下の公務のご負担を軽減するためにも、皇族の範囲を広げるべきだとする議論の過程で生まれてきた考え方である。
 その趣旨で、女性宮家創設は有意義な提案である。しかし、皇族の裾野を広げる方策は、女性宮家創設にとどまらない。戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の方針で皇籍離脱を余儀なくされた旧皇族の皇籍復帰も有力な方法だ。
 皇統は男系継承が維持されてきた。8人の女性天皇がいたが、いずれも皇后か未婚の皇女で、男系の血を引かない女系天皇の例はない。女性宮家創設を安易に女系天皇容認につなげてはならない。
 男系維持のため、小堀桂一郎氏が今月23日付「正論」欄で指摘したように、女性皇族が皇統につながる男子と結婚された場合に、その次の世代の男子に皇位継承権を与えるという考え方もある。
 小泉純一郎内閣の平成16年末、「皇室典範に関する有識者会議」が設置され、わずか1年で「女性・女系天皇容認」「男女を問わず長子優先」の報告書が出された。これに先立ち内閣官房が女系天皇を認める極秘文書を作成しており、「初めに結論ありき」の拙速な議論だったことは否めない。
 男系で維持されてきた日本の皇統の歴史を踏まえたうえで、将来の皇位継承問題を時間をかけて議論すべきだ。

●産経新聞 平成23年11月23日

http://sankei.jp.msn.com/life/news/111123/imp11112302580000-n1.htm
【正論】
東京大学名誉教授・小堀桂一郎 皇室の御安泰を真剣に考へる秋
2011.11.23 02:57

 平成21年元旦の本欄に於(お)いて、筆者は、「皇位継承に制度的安定を」と題して見解を述べる機会を得た。それは、標題に云ふところの制度的安定を図る研究は或る民間の組織によりほぼ完了したので、後は、その方策の実現を政治の力に俟(ま)つばかりであるとの含みを持たせた意見表明だつた。
 ところが、その夏に政権交代といふ事態が発生し、新たに政権の座に就いた民主党内閣の下では、この問題についての正統性に則つた論議は到底望めないと判断し、以後、皇室典範の再検討に関はる議論には公の場での発言を控へ、沈黙を守ることにしてゐた。

≪宮内庁長官の発言には疑問≫
 ところで、宮内庁の羽毛田信吾長官は去る10月27日の定例記者会見で、現行の皇室典範には〈皇位の安定的継承という意味で課題がある〉との旨を述べた由である。〈課題〉といふのは、これから解決しておかなくてはならない問題性、難点といふ意味であらう。
 この日の会見での羽毛田長官の発言は、英国の王位継承法に、継承順位を男子優先から男女の別を問はぬ長子優先へと改める動きがある(10月29日に英連邦首脳会議で法改正に合意が成立したと報じられてゐる)との報道についての感想を求められての答へであつたさうである。
 英王室の王位継承法にどの様な改定が行はれようと、それはその国固有の歴史と当面の事情や輿論(よろん)の動向に従つてのことであらうから、我々はそれを唯(ただ)静観してゐればよろしく、何らの注釈も意見も挿(さしはさ)む必要がない。
 然(しか)し、宮内庁長官が右の外国の事情を何故か念頭に置いた様子で、我が国では幾人かの女性皇族の方々が結婚に近い年齢になつてをられる時、皇位継承の安定と(女性宮様方の今後の)ご活動といふ意味で課題が生じてゐる、と述べてゐる点については批評と注釈が必要であらう。
 先づ、皇位継承の安定といふ事については、現在、今上天皇の次代以下の世代に皇位継承権者がお三方居(お)られる。その意味で、皇位の将来は実は安定してをり、謂(い)はば問題がない。

≪負担軽減目的なら皇族増加も≫
 問題はむしろ、現在の継承権者が現実に皇位にお即(つ)きになつた将来に於いて、その陛下のお近くに在つて公務を御支へ申し上げ、必要に応じて代行をも務められる皇族の数があまりにも少く、且(か)つ、当分その増加を期待することができない、といふ点にある。
 その脈絡に関してならば、宮内庁長官の所見に云ふ、女性皇族が御(ご)結婚によつて皇籍を離れ、一民間人となることへの疑問、従つて女性の宮様が結婚されても依然として皇族の身分を保たれ、両陛下の公務の補助・代行を務められる様に法改正するのが課題だとの着想は首肯できる。
 但(ただ)し、かうして創立された女性皇族を中心とする新しい宮家が皇位継承の安定に寄与し得るか否かは、その結婚のお相手となる男性の血統によつて決ることであり、直接には長官のいふ所の安定にはつながらないと考へるべきである。差当つては、どこまでも皇室の御公務の御負担の軽減といふ点に貢献する存在と受けとめておくのが適当である。
 誤解を招かない様に付記しておくが、皇位継承の安定にも寄与し得る形での女性宮家の創立といふことももちろん可能である。それは右に記した如(ごと)く、今後、結婚される女王様方の御配偶が、血統の上で皇統につながつてをり、且つ、それが、なるべく近い過去に於いて、そのつながりが証示できる様な方であれば、その御当人ではなくとも、その次の世代の男子(母方の血筋からしても、皇室の血を引いてをられることが明らかなのであるから)が、皇位継承権を保有されることは、系譜の論理から言つて、道理に適(かな)つたものになる。

≪法改正は些小の修正で済む≫
 以上に記したことは、現行皇室典範の比較的軽微な改正を以て実現できる事項である。肇国(ちょうこく)以来厳修されてきた我が国の皇位継承上不易の三大原則(念の為(ため)記しておくならば、〈一 皇祚(こうそ)を踐(ふ)むは皇胤(こういん)に限る〉〈二 皇祚を踐むは男系に限る〉〈三 皇祚は一系にして分裂すべからず〉の三項)については、事新しく再検討を促す必要は全く無い。宮家の増設といふ目的のためには、法規運用技術上の観点から現行法に些小(さしょう)の修訂を施せば済む事である。従つて一片の醜聞に終つた曾(かつ)ての「皇室典範に関する有識者会議」の如き仰々しき委員会めいたものを組織する必要もない。少数の良識ある法曹家及び国史学者に委託すれば然るべき改訂が成就できるであらう。
 3月の東日本太平洋岸大震災に際しての被災民の救恤(きゅうじゅつ)と慰撫激励の上で、国民統合の象徴としての天皇と皇室の御仁慈が如何に貴重であり、又有難いものであるか、国民全体が又改めて認識を深めたところである。皇室の御安泰と御清栄は即(すなわ)ち国民の安寧の最大の拠(よ)りどころである。今又、その事を真剣に考へるべき秋(とき)になつてゐる様である。(こぼり けいいちろう)
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関連掲示
・拙稿「皇位継承問題――男系継承への努力を」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion05b.htm
・拙稿「女系継承容認論の迷妄――田中卓氏の『諫言』に反論する」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion05c.htm

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