ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

コロナ禍で日本の死亡率が低いのはなぜか3

2020-05-28 10:38:30 | 時事
●スペイン風邪と季節性インフルエンザとの比較

 武漢ウイルス問題の「100分の1の謎」について、スペイン風邪や季節性インフルエンザとの比較を行いたい。以下、ドの付く素人の考察である。
 スペイン風邪は、わが国では風邪という名称がついているが、実態は風邪ではなく、インフルエンザである。スペイン風邪は、歴史上でも最も致命的な伝染病だった。その流行当時、世界人口は18億人から20億人と推定されている。世界全体の推定感染者数は、WHOによると世界人口の25~30%。世界人口の3分の1、または約5億人ともされる。
 国立感染症研究所のサイトは、「世界人口の 3分の1の約5億人が感染して、死亡者数は全世界で4,000万人から5,000万人」と記している。この推計によれば、致死率は8~10%。近年のアメリカの研究では、死亡者は1億人という説もある。この場合、感染者数を同じ5億人とすれば、致死率は20%となる。主に若い世代が亡くなった。私の先祖にも、幼児期にスペイン風邪で亡くなったと伝え聞く人たちがいる。
 スペイン風邪が流行した1918年は、第1次世界大戦の末期だった。スペイン風邪によって戦闘不能者が続出したことが戦争終結を早めた要因の一つだったとされている。この大戦の戦死者がおよそ900万人だったのに比べ、スペイン風邪の死亡者はその4.4倍~5.5倍。1億人死亡説なら、戦死者の10倍以上にもなる。
 このすさまじいパンデミックの中で、日本は「致死率がとても低い国」に含まれている。日本では1918年から21年にかけて大流行し、当時の人口約5500万人のうち、2380万4673人が感染。38万8727人が死亡したとされる(内務省衛生局編『流行性感冒』)。世界人口の約3分の1が感染したのに比べ、日本では人口の約43%が感染したというのだから、感染率は世界平均より10ポイントくらい高かったわけである。だが、致死率はわずか1.63%。世界全体では8~20%だから、日本の致死率は非常に低かった。この理由は何か。
 新型コロナウイルスについては、BCG仮説が出されているが、日本でBCGの接種が始まったのは昭和19年(1944年)。スペイン風邪の時代にはまだ行われていないから、これは無関係である。
 感染率は世界平均より高かったのに、致死率は非常に低かったということは、重症化しないケースが多かったと考えられる。当時のことゆえ、特効薬があるわけではない。風邪に罹った者に与える食物も限られており、日本特有の食物が回復を助けたとも考えにくい。当時の日本人は、免疫能力が高かったのだろう。医療は今ほど発達しておらず、食事は粗末で栄養摂取はよくない。だが、昔の日本人は丈夫だった。生命力が強かった。ここに、現代人が目を向けるべき点があるのではないか。
 衛生意識については、当時も今も日本人は衛生意識が高い。穢れを忌み嫌い、清潔を心がける。だが、スペイン風邪の場合、国民の4割以上が感染したのだから、衛生意識の高さや衛生的な生活習慣で、感染を防ぐことはできていない。
 現在の日本人は、季節性インフルエンザの致死率を見ると、世界平均と大差ない。WHOの統計データでは、季節性インフルエンザの世界全体における致死率は、約0.06%。厚生労働省の統計データによると、日本国内における季節性インフルエンザの致死率は、インフルエンザを直接の死因とする死亡者数では約0.02%、インフルエンザの流行によって生じたと考えられる超過死亡の死亡者を加えて推計すると、0.05%程度と推計される。この数字は、世界平均とほとんど変わらない。
 日本人は衛生意識が高いが、それによって季節性インフルエンザによる死亡者を少なく抑えられているとは言えない。このことは、このたびの中国武漢発の新型コロナウイルスについても同様に言えるだろう。
 先に、私は、BCGの効果の方が衛生意識の高さよりも「100分の1の謎」の理由の候補として有力だと思うと書いた。スペイン風邪と季節性インフルエンザとの比較考察を加えても、同様に思う。
 さて、5月23日の報道によると、新型コロナウイルスによる日本の死者が欧米より低く抑えられている背景を、遺伝子レベルで解明する試みが国内で始まった。慶応大、東京医科歯科大、大阪大、北里大、京都大を中心に8つの研究機関と医療機関約40施設が共同で研究プロジェクトを発足したとのことである。感染症や遺伝、免疫などの専門家が参画している。日本人患者の遺伝子解析から重症化要因を突き止めることを目指し、治療やワクチン開発への応用も視野に入れるものである。
 研究統括を務める慶応大医学部の金井隆典教授(消化器学)は「重症化には、HLA(ヒト白血球抗原)やサイトカイン(情報伝達物質)関連の遺伝子が関わっている可能性がある。その疾患感受性遺伝子が分かれば、発症時すぐに患者が重症化しやすいか、軽症ですみそうかを判断できるだろう」と指摘する。遺伝子レベルの要因解析は欧米でも行われており、国際的な共同研究も見据えている。金井教授は「最終的に診断時に患者の予後の予測に役立ち、第2、第3の流行の波が来たとき、医療崩壊を防ぐことにもつなげられるかもしれない」と期待を語っている。
 ぜひ専門家に、武漢ウイルス問題における「100分の1の謎」を解き、それを今後の対応に生かしていただきたいものである。(了)

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