ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

橋下・維新八策は未だ「?」7

2012-07-24 09:37:27 | 橋下
●各方策の検討(続き)

(6)経済政策・雇用政策・税制

 (6)は、維新八策の中で最も分量が多い。経済政策、雇用政策、税制の三つに分かれている。だが、それだけ、きちんと検討がされているかというとそうではない。理念と基本方針が分かれておらず、三つそれぞれが「理念、基本方針」を並べている。うち税制だけに、「政策例」を載せている。(6)についで分量の多い(5)は、年金、生活保護、医療保険・介護保険に「政策例」が載っていた。維新八策が、内政では税制、年金、生活保護、医療保険・介護保険に主に関心を向けたものであることが、ここに表れている。
 さて、経済政策には、新自由主義的な傾向が強く出ている。「理念、基本方針」に「競争力」という言葉が4回使われ、「自由貿易圏の拡大」「イノベーション促進のための徹底した規制改革」を掲げ、「TPP参加」を明記している。小泉=竹中構造改革を批判的せず、それを継承・徹底する姿勢である。私はこの根本的な姿勢に反対なので、部分的には「既得権益と闘う成長戦略」「付加価値創出による内需連関」「為替レートに左右されない産業構造」「所得収支、サービス収支の黒字化重視戦略」など賛成できる点はあるが、橋下氏らに日本の経済政策を委ねられない。
 エネルギー政策については、「新エネルギー政策を含めた成熟した先進国経済モデルの構築」「先進国をリードする脱原発依存体制の構築」と2項目あるが、脱原発依存でエネルギー政策をどうするのか、具体性がない。橋下氏は、関西電力大飯原発の再稼働に反対した。改訂版は「脱原発依存の構築」を掲げる一方、国内産業の育成も打ち出したが、電力が安定的に供給されなければ、産業も生活も行き詰まる。だが、橋下氏から具体策は出されていない。私は、将来的なビジョンとエネルギー戦略を持っていないためだろうと思う。
 雇用政策については、「徹底した就労支援と解雇規制の緩和を含む労働市場の流動化(衰退産業から成長産業への人材移動を支援)」という項目がある。前者は、労働者や学生・女性等の支援だろうが、後者の「解雇規制の緩和」はその一方で首切りをしやすくするという相反する内容となっている。衰退産業から成長産業への人材移動は重要だが、「解雇規制の緩和を含む」と敢えて書くところには賛成できない。
 税制については、「理念、基本方針」に「『簡素、公平、中立』から『簡素、公平、活力」の税制へ』と方向性を示し「超簡素な税制=フラットタックス化」を掲げている。フラット税制は、レーガン政権が行った新自由主義的な税制である。法人税と所得税を極端に低くし、一部の富裕層と株主や経営者の所得を最大にする政策だった。結果は当初の見込みに反して、大幅減税で税収が激減し、財政赤字が拡大した。橋下氏はそのことをよく理解しているのか疑問である。
 (6)には、消費税について書いていない。(1)に「消費税の地方税化と地方間財政調整制度」とあった。(6)では、経済成長戦略と消費増税の関係を書くべきと思うが、増税には何も触れていない。「大阪維新の会」が来る衆議院選挙に出るなら、消費増税に賛成か反対か、またその理由は何かを維新八策で国民に示すべきだろう。
 消費増税法案は、第18条に景気付帯条項を設けている。第1項で「消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施する」としている。具体的には、同項に、平成23年度から平成32年度までの10年間、平均で名目GDPの成長率3パーセント程度かつ実質GDPの成長率2パーセント程度を目指す経済成長政策を講ずること。また第2項に、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分すること、としている。
 「富国強靭」を国策に掲げる藤井聡京都大学大学院教授は、景気付帯条項の規定を踏まえ、「増税するか否かは、遅くとも来年夏に誕生する新政権の判断に全て委ねられているのだ。そうである以上、日本国民は今、次の総選挙に向けて.....世間に流布された数々の虚事に惑溺されず、正しき認識に基づいて、ウソに塗まみれた邪説と真っ当な真説とを『見抜く』力を身につけねばならない。そしてその正しき認識に基づく世論を形づくり、真っ当な政権の誕生を期さねばならない」と主張している。
 この「真っ当な政権」を担うのは、民主党ではありえない。そして、消費増税で民主党と連携した現在のままの自民党でもあり得ない。私は、財務省の増税・財政規律路線の呪縛を解き、デフレ脱却と「富国強靭」を実現し得る積極的経済成長政策を推進できる政治家が政界の表面に躍り出ることを期待している。橋下氏には今のところ、私の期待に応える堅固な姿勢と明確な展望、具体的な政策がない。橋下氏と「大阪維新の会」の場合は、消費税を地方税化し、地方交付税を廃止するという全く異なった政策を掲げているわけだが、そうであれば、その立場から、消費増税法案に関して、維新八策の中で、具体的な見解と対案を国民に提示しなければならないだろう。

 次回に続く。