ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

自民党が政権公約原案を発表

2012-04-16 10:04:49 | 時事
 自民党は9日、次期衆院選政権公約原案を発表した。仙台市での全国政調会長会議で発表されたもので、執行部は「民主党との違いを鮮明にする」ことを重視したという。
 「日本の再起のための政策(原案)」と題されている。自民党のサイトに、原案がPDFファイルで掲載されている。
 原案は「日本の再起のための7つの柱」を打ち立てている。すなわち、①日本の再出発、②復興の加速・事前の防災、③将来への投資・強い日本の再生、④自助を基本とし共助・公助が補う安心の社会づくり、⑤地方の重視・地域の再生、⑥自立した日本・総合的安全保障、⑦政治・行政改革という7つである。
 私は自民党を政党として支持している者ではない。政治家は人物で選ぶ。拙稿「自民党は立党の精神に帰れ」にて、立党宣言の「自主独立の権威を回復」と党綱領の「自主独立の完成」という文言の重要性を指摘し、自民党は「自主独立」をめざす立党の精神に帰れ、と私は説いている。立党の時点で弱かった部分を強化し、日本の政党としての使命を自覚し、日本の再建、伝統・文化・国柄の復興を進める日本的な自由民主主義の政党として再出発することを求め、そのために「自民党の指導層は日本精神を学び、自民党の理念に日本精神という背骨を立てよ」と要望している。
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13e.htm
 さて、この度の「日本の再起のための政策(原案)」を従来の自民党の政権公約と比較し、私は同党は立党の精神を取り戻しながら、日本の保守政党として姿勢を正しつつあると思う。
 次に特に評価できる点を挙げる。

①憲法改正を第一に掲げる
 国旗・国歌の尊重、自衛権を明記、自衛隊を自衛軍と位置付け、緊急事態条項を新設、憲法改正の発議要件を衆参それぞれの過半数に緩和 など、独自の新憲法案を以て、国民に憲法改正を訴えようとしている。
 関連して、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障基本法の制定、国際平和協力活動の一般法としての国際平和協力法の制定及び海外での武器使用基準の緩和を図る。

②復興の加速とともに、国土強靭化を目指す
 東日本大震災からの復旧・復興の加速を具体的に進めようとしている。それと同時に、 事前防災を重視した国土強靭化を図る施策を打ち出している。
国土強靭化基本法の制定、徹底した事前防災・減災対策(10年間の集中計画)、首都機能の維持・強化、バックアップと行政機能などの分散化対策、重要インフラの防御と防災・減災インフラの整備など、危機意識に立った積極策を挙げている。

③デフレ・円高脱却、経済成長戦略を明確に示す
 政府・日銀の(物価目標2%)協定など大胆な金融緩和、有効需要創出策の総動員によるデフレ・円高脱却、 円高メリットを生かした国際化・資源戦略の展開、 「貿易立国」プラス新たな「投資立国」の双発型の成長エンジン 、GNI(国民総所得)の最大化による「資本の好循環」、予算配分を「短期のバラマキ」から技術開発・人材育成など「将来への投資」に転換等を打ち出している。

④教育・人材育成に力を入れる
 教育基本法に基づく「人間力」に優れた国民の育成(道徳教育の充実、高校で新科目「公共」設置等)、若い親に対する家庭教育の支援体制の強化等、教育改革に意欲を表している。

⑤自助・共助・公助による少子化対策・若者対策を提案している。
 自助・共助・公助の考え方に基づく「少子化対策」、社会保障制度を支える若年層を応援する政策、「手当より仕事」を基本にした就労促進、現物給付の拡大、医療扶助の適正化など生活保護の抜本的見直しなど、バラマキ型・過剰依存型の政策からの転換を方向づけている。

⑥農林水産予算の復活、農地を農地として維持する支援を図る
 農家所得の向上・担い手育成、農地の維持・農業基盤の整備のために農林水産予算を復活、「所得補償」から「農地を農地として維持する支援策」への振替拡充を打ち出している。

⑦主権と領土の保全、拉致問題の解決に力を入れる
 主権と領土を守る国内法や組織・機関の整備、特定国境離島保全・振興法の制定等を行う。拉致問題の完全解決に全力を挙げるという姿勢を明示。

⑧「聖域なき関税撤廃」を前提にするTPP交渉参加に反対を表明している
 TPP参加の危険性について具体的に書いていないが、参加賛成ではなく反対を鮮明にした。
 
 上記は評価できる主な点である。一方、私が異論を持ち、または不満を感じる主な点は、次の通りである。

 自衛権を明記、自衛隊を自衛軍と位置付けるという方向性はよいが、自衛隊を軍隊と位置付けるのであれば、自衛軍ではなく国軍と称すべき。ちなみに自衛隊も自衛軍も英語では、the Self-Defense Force と表記は変わらない。

 消費税(当面10%)を含む税制抜本改革を掲げていること。デフレ・円高脱却、経済成長戦略を強力に進めるのであれば、現時点で消費増税を政策に挙げる必要はない。

 持続可能な現行年金制度の基本の堅持と無年金、低年金対策など必要な見直しとあるが、具体策が見えない。経済成長戦略の中に年金制度を包含した政策が求められる。

 家族を支える少子化対策(家族政策) とあるが、具体策が書かれていない。憲法改正案には家族の尊重を規定しているので、家族政策を積極的に提示すべき。特に親学の振興普及を明示してもらいたい。

 「資源小国から資源大国へ」を目指すとしていて、具体策が述べられていない。原子力の未来を決める10年に国民的議論で結論とあるが、もっとスピードを挙げるべき。

 TPP交渉参加に反対はよいが、わが国の国益に適った代替策を打ち出さないと、「開国」しなければ不利益というTPP推進論者を説得できない。EPA・FTA等による日本独自の主体的な構想が求められよう。

 自民党ではこれからさらに党内で議論がされるという。その過程で内容に修正が加えられるだろうが、評価できる点についてはぜひ堅持し、またまだ抽象的な部分については、より積極的・具体的な案を練ってもらいたい。
 以下は、「日本の再起のための政策」(原案)の主要部分。

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●自民党のサイトより

http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/116416.html
「日本の再起のための政策」(原案)
 政権交代選挙に向けた政策パンフレットで取り上げる7つの柱

日本の再起のための7つの柱

1. 日本の再出発
 憲法改正 / 地方制度・道州制
2. 復興の加速・事前の防災
 震災からの復旧・復興の加速 / 事前防災を重視した国土強靭化
3. 将来への投資・強い日本の再生
 円高・デフレ対策への最優先の取組み / 新しい成長モデル
 将来への投資 / 教育・人材育成 / 科学技術・文化芸術・スポーツ立国
4. 自助を基本とし、共助・公助が補う安心の社会づくり
 持続可能な財政の確立 / 年金 / 医療 / 介護 / 少子化対策・若者対策
生活保護の見直し
5. 地方の重視・地域の再生
 地方 / 地域産業・雇用 / 農林水産業
6. 自立した日本・総合的安全保障
 外交・安全保障 / 資源・環境・エネルギー安全保障 / 食料安全保障
7. 政治・行政改革
 国民のための「真の行政改革」の推進 / 中央省庁改革
 公務員制度改革 / 天下り根絶 /
 総人件費の抑制

1. 日本の再出発
<憲法改正>
① 国旗・国歌の尊重
② 自衛権を明記・自衛隊を自衛軍と位置付け
③ 緊急事態条項を新設
④ 憲法改正の発議要件を衆参それぞれの過半数に緩和 など
<地方制度・道州制>
・ 大都市制度の見直し、特別区設置のための地方自治法改正
・ 道州制基本法の早期制定後5年以内の導入を目指す

2. 復興の加速・事前の防災(国土強靭化)
<震災からの復旧・復興の加速>
【ヒト・カネ・体制】
・ 復興に必要な財源とマンパワーの確保
・ 復興庁の本格稼動と復興交付金の確保・柔軟運用
【ガレキ処理】
・ ガレキ処理の加速と広域処理の促進
【被災地の産業の復興】
・ 東日本大震災の被災地の農林水産業の復興
・ 災害対応の漁港・水産関連施設の整備と漁場の再生
・ 被災地における国家プロジェクト(世界のフロントランナーとなる防災研究、エネルギー研究など)の推進
【生活再建など】
・ 二重ローン対策、資金繰り対策など生活再建や雇用・産業育成
【除染・健康対策】
・ 除染の着実な実施と万全な健康対策
<事前防災を重視した国土強靭化:日本を強くしなやかに>
【国土強靭化基本法に基づく減災対策】
・ 国土強靭化基本法の制定による事前防災の制度化
・ 基本法に沿った徹底した事前防災・減災対策(10年間の集中計画)
【国家機能の分散化対策】
・ 首都機能の維持・強化、バックアップと行政機能などの分散化対策
【社会の重要インフラの防御と防災・減災インフラの整備など】
・ 行政インフラや通信インフラをはじめとする重要インフラの防御・総合的な管理の実現
・ 災害に強い情報インフラの整備と災害時即応能力の促進
・ 道路・鉄道のミッシングリンク解消など交通網整備の推進
・ 航空ネットワークの整備推進
・ 学校、公共施設等の耐震化加速と社会資本の前倒し整備

3. 将来への投資・強い日本の再生
<円高・デフレ対策への最優先の取組み>
・ 政府・日銀の(物価目標2%)協定など大胆な金融緩和、有効
需要創出策の総動員によるデフレ・円高脱却
・ 円高メリットを生かした国際化・資源戦略の展開
<新しい成長モデル>
・ 「貿易立国」プラス新たな「投資立国」の双発型の成長エンジン
・ GNI(国民総所得)の最大化による「資本の好循環」
<将来への投資>
【「短期のバラマキ」から「将来への投資」へ】
・ 予算配分を「短期のバラマキ」から技術開発・人材育成など「将来への投資」に転換
【経済成長戦略】
・ 法人税の大胆な引き下げ(20%台)と、業界再編促進、インセンティブ税制(研究開発、設備投資、人材育成)の導入
・ 戦略的国際標準の獲得とエキスパート育成
・ 国益を増進させるFTA・EPAなどの促進
・ 戦略的・体系的な研究開発の推進、グローバル人材の育成
・ 高度情報セキュリティ産業の創出
<教育・人材育成>
【教育基本法に基づく「人間力」重視の教育など】
・ 教育基本法に基づく「人間力」に優れた国民の育成(道徳教育の充実、高校で新科目「公共」設置、「土曜授業」や「全国一斉学力テスト」の復活)
【教育支援制度の充実】
・ 幼児教育の無償化、義務教育での就学援助制度の拡充、高校・大学における給付型奨学金の創設
・ ニーズに応じた適切な特別支援教育の推進
・ 孤立しがちな若い親に対する家庭教育の支援体制の強化
【大学9月入学など】
・ 大学9月入学と社会体験ボランティアの推進
<科学技術・文化芸術・スポーツ立国>
【文化芸術立国など】
・ 世界に誇るべき「文化芸術立国」の創出
・ 地域の伝統・文化を守りコミュニティを支える取組みを支援
【「科学技術・イノベーション」重視】
・ 「科学技術・イノベーション推進」の国づくりの推進
【2020東京オリンピック招致・被災地での競技開催】
・ 復興の象徴として2020東京オリンピック・パラリンピックの招致・被災地での競技開催の実現

4. 自助を基本とし、共助・公助が補う安心な社会づくり
<持続可能な財政の確立>
・ 消費税(当面10%)を含む税制抜本改革と行財政改革の一層の推進による持続可能で安定した財政と社会保障制度の確立
<年金>
・ 持続可能な現行年金制度の基本の堅持と無年金、低年金対策など必要な見直し
<医療>
・ 国民皆保険制度の堅持と医療費の配分の重点化・効率化等
<介護>
・ 真に必要な介護サービスの充実ための介護サービスの効率化と保険料負担の増大の抑制
<少子化対策・若者対策>
・ 家族を支える少子化対策(家族政策)
・ 無責任なバラマキや若年層へのしわ寄せを排した自助・共助・公助の考え方に基づく「少子化対策」
・ 社会保障制度を支える若年層を応援する政策
<生活保護の見直し>
・ 「手当より仕事」を基本にした就労促進、現物給付の拡大、医療扶助の適正化など生活保護の抜本的見直し (別紙1参照) など

5. 地方の重視・地域の再生
<地方>
・ 経済活性化と雇用増のための合計2兆円の交付金の創設
・ 国から地方への権限・財源等の移譲
・ 「コミュニティ活動基本法」の制定
<地域産業・雇用>
【中小・小規模事業者支援】
・ 地域経済を支える中小・小規模事業者、地場産業をオールジャパンで支援
【経済機能の地方移転等の支援】
・ 本社機能、研究開発機能、データセンター等の地方移転及び地方への企業新規立地への税財政支援策の導入
【雇用の創出など】
・ 雇用の創出と就労支援サービスの拡充・強化
・ ICTによる防災と経済成長の両立
<農林水産業>(別紙2参照)
【農林水産予算の復活】
・ 農家所得の向上・担い手育成、農地の維持・農業基盤の整備のため、政権交代後大幅に削減された農林水産予算の復活 ((例)規模拡大のための取組み、農業農村基盤整備事業、農業用施設機械整備予算など)
【「所得補償」の振替拡充】
・ 「所得補償」から「農地を農地として維持する支援策」への振替拡充(多面的機能直接支払い新法)
【担い手の総合支援】
・ 新規就農・経営継承を応援するなど担い手の育成確保対策(担い手総合支援新法)
【畜産・酪農、林業、漁業対策】
・ 飼料高騰対策・経営安定対策など畜産・酪農対策の強化
・ 木材利用促進法・再生エネルギー対策による森林・林業・木材産業の活性化
・ 燃油等高騰対策・新規就農支援制度による漁業・水産業の活性化
【TPP(「聖域なき関税撤廃」)交渉参加反対】
・ 「聖域なき関税撤廃」を前提にするTPP交渉参加反対(別紙3参照)

6. 自立した日本・総合的安全保障
<外交・安全保障>
【日米同盟及び自衛隊の増強】
・ 日米同盟の再構築及びアジア近隣諸国との信頼醸成
・ 防衛大綱・中期防の早期見直し及び自衛隊の人員・装備・予算の拡充
【憲法改正と関連法令の整備など】
・ 憲法改正による自衛隊の自衛軍としての位置づけ
・ 集団的自衛権の行使を可能とする安全保障基本法の制定
・ 国際平和協力活動の一般法としての国際平和協力法の制定及び海外での武器使用基準の緩和
【わが国の主権と領土の保全、拉致問題】
・ わが国の主権と領土を守る国内法や組織・機関の整備
・ 特定国境離島保全・振興法の制定など
・ 拉致問題の完全解決に全力
【TPP(「聖域なき関税撤廃」)交渉参加反対】
・ 「聖域なき関税撤廃」を前提にするTPP交渉参加反対 (別紙3参照(再掲))
【サイバーセキュリティ】
・ サイバーセキュリティの対策強化
<資源・環境・エネルギー安全保障>
【「資源小国から資源大国へ」】
・ エネルギーの供給体制強化及び「資源小国から資源大国へ」
【「原子力の未来を決める10年」】
・ 原子力の未来を決める10年に国民的議論で結論
・ 真に国際基準に則った原子力規制の実現
【「地球あっての未来」】
・ 「地球あっての未来」をしっかりと自覚した環境対策の推進
<食料安全保障>
・ 食料自給率の維持向上
・ 食料自給力(農地・水などの農業生産基盤、農業者、農業技術)の維持向上

7. 政治・行政改革
<国民のための「真の行政改革」の推進>
・ 行政機能や政策効果を向上させる本来の目的に沿った行政改革を断行
<中央省庁改革>
・ 政府に「行政改革推進会議」を設置し、省庁再々編も視野に入れた中央省庁改革を真の政治主導で実行
<公務員制度改革>
・ 給与体系の抜本的見直し、省庁縦割りを排除した一括採用、幹部候補を育成するシステム等を検討
・ 幹部人事や定員管理を一元的に行う「内閣人事局」の設置
・ 真に頑張る者が報われる人事制度の確立
・ 地方公務員についても国家公務員同様の改革
<天下り根絶>
・ 専門スタッフ職の拡充や再任用制度の義務化の推進
・ 「各府省による再就職あっせん」、「元公務員による現役公務員への働きかけ」等に係る罰則を含む規制強化
<総人件費の抑制>
・ 地方公務員を含む総人件費2割削減
・ 将来の国家像を見据えた計画性を持った地方公務員を含む総人件費抑制
・ 再任用制度の拡充や早期希望退職優遇制度等の導入
・ 無定見な新規採用の大幅抑制には反対
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