ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

外資から日本の水と森を守れ

2011-02-24 09:03:29 | 時事
 私は、平成21年5月14日に「日本の水を中国が狙っている」という一文を書いた。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20090514
 題名の通り、水が「21世紀の石油」といわれるほど貴重になっている今日、水不足と水汚染に悩む中国が、わが国の水を狙って、水源地の買収を行っていることを知って書いたものだ。そこに転載した同年5月12日の産経新聞の記事が、国民に問題を知らせるきっかけとなった。
 その後、事態は悪化している。中国系を始めとする外国資本が、わが国各地で水源地や安全保障にかかわる重要な土地を次々に買い占めていることが明らかになり、今では多くの国民の関心事となっている。
 自民党では、安倍晋三元首相ら有志議員が「日本の水源林を守る議員勉強会」を立ち上げ、議員立法を目指す取り組みをしてきた。自民党は、森林の公有地化のための予算確保を図り、一定面積以上の森林取得には届け出義務や罰則強化を盛り込んだ森林法の改正案と、地下水を公共の資源ととらえて揚水可能な地域をあらかじめ指定し、水源を守る緊急措置法として地下水利用法案を、昨年の臨時国会に提出したが、成立しなかった。
 わが国には、大正15年施行で現行法でもある外国人土地法という法律がある。同法は、外国人による土地取得に関する制限を政令で定めるとしている。戦前は国防上重要な保護区域を定め、外国人が土地を取得する場合、陸相や海相の許可を必要としていた。大東亜戦争の敗戦後、すべての政令が廃止されたため、同法の実効性が失われたままになっている。それゆえ、有名無実化している外国人土地法の改正も、検討がされている。
 マスメディアでは、産経新聞がこの問題を積極的に取材・報道してきた。昨年12月、TBSテレビが、北海道における外国人による水資源・森林資源の買い占めを詳しく取り上げ、大きな反響を呼んだ。平成23年1月号の「WiLL」が、北海道の買収への規制や日本の森と水を守る法案を特集し、注目を集めた。
 こうしたなか、動きの鈍かった民主党も、今年に入って外国人や外国法人による土地取得を規制するための法整備を進める方針を固めた。1月20日に「外国人による土地取得に関するプロジェクトチーム(PT)」の初会合を開き、具体的な規制内容の検討に入ったという。また政府はPTからの提言を踏まえ関連法の整備を進め、今通常国会での成立を図る方針だと報じられる。実効性が失われていると指摘されてきた外国人土地法と森林法を整備し、安全保障上の懸念を払拭するのが目的である。
 戦後日本人の領土意識・国防意識は極端に低下している。外国勢力に侵されているのは、北方領土、竹島等の国土周縁部の島嶼だけでない。水源や森林を失ったら、日本人は生存・繁栄していくことが出来なくなる。日本の水と森を、外資の食いものにされてはならない。
 超党派で、早急に法的整備を進めてもらいたい。

 以下は、関連する報道のクリップ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●産経新聞 平成23年1月20日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110120/plc11012009140054-n1.htm
外国人の土地取得規制 政府・民主、今国会で関連法整備
2011.1.20 09:13

 北海道や長崎県・対馬(つしま)などで中国、韓国関係者らによる土地取得が進んでいる問題で、政府・民主党は19日、外国人や外国法人による土地取得を規制するための法整備を進める方針を固めた。民主党政策調査会が20日にプロジェクトチーム(PT)の初会合を開き、具体的な規制内容の検討に入る。政府はPTからの提言を踏まえ関連法の整備を進め、24日召集の通常国会での成立を図る方針。実効性が失われていると指摘されてきた法律の穴を埋め、安全保障上の懸念を払拭するのが狙いだ。
 法整備の対象となるのは、外国人土地法と森林法。
 大正15年施行で現行法でもある外国人土地法は、外国人による土地取得に関する制限を政令で定めるとしている。戦前は国防上重要な保護区域を定め、外国人が土地を取得する場合、陸相や海相の許可を必要としていた。こうした保護区域は22都道府県に上っていた。しかし、終戦に伴いすべての政令が廃止されたため、法律の実効性が失われている。
 PTでは政令で保護区域を設定することも含め検討する。同時に、法改正または新法で実態を把握できるようにする方針だ。また、森林法も改正し、森林を買収する場合は届け出制または許可制にする方向で調整する。
 ただ、保護区域の設定に関しては「経済活動を阻害することになりかねない」との慎重論もあり、調整が難航する可能性もある。
 外国人による土地取得をめぐっては、対馬で自衛隊施設に隣接する土地が韓国資本に購入されたことが判明した。全国各地で中国資本などが森林の買収を進めるケースも相次いでいる。
 特に北海道では近年、外国資本による森林取得が急増。道の調査によると、外資の森林取得はこれまでに33件、計約820ヘクタールに上る。このうち最も多いのが中国の12件だった。自衛隊施設周辺や水源地にあたる森林が買収されるケースもあり、安全保障や公共秩序維持の観点から問題視する声が強まっている。
 菅直人首相は昨年10月15日の参院予算委員会で、日本国内での外国人や外国法人による土地取引の規制について「ぜひ勉強して一つの考え方をまとめてみたい」との見解を表明。法務省に対し、防衛施設周辺などの土地取得の規制を検討するよう指示していた。
 自民党も土地取得の規制に向けた検討を有志議員が進めている。

●産経新聞 平成22年11月26日

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101126/plc1011262356029-n1.htm
北海道の森林 外資が33カ所取得 自衛隊施設望む高台も
2010.11.26 23:55

 民間による水源地などの森林や土地の取得が相次いでいる北海道で、外国資本企業や外国人が取得した私有林が33カ所820ヘクタールに上ることが26日、道の調査で分かった。中には陸上自衛隊施設を一望できる高台の森林も含まれていた。
 調査結果によると、取得しているのは、中国やシンガポール、オーストラリアなど10カ国の企業や個人。倶知安町や留寿都村、幌加内町などでの取得が目立つという。
 平成20年に英領バージン諸島の企業が倶知安町に取得した森林は、陸上自衛隊駐屯地から半径2キロ圏内の高台にあるほか、自衛隊や警察署など治安維持施設周辺で外資が取得した森林は27市町村で54件、579ヘクタールに上ることも分かった。
 取得目的については、「資産」が約35%と最多で、「二酸化炭素排出量取引に期待」(約13%)、「売買のための保有」(約11%)などの回答が続いたが、水資源の確保や国土、国防上の観点からの懸念も出ている。
 一方、水源を抱えるなど公益性が高い森林の所有者として記録があった企業2232社に文書で回答を求めた調査では、913社に調査文書が届かず、1万4千ヘクタールの森林の所有者が特定できずに終わった。
 北海道には森林を細分化して売却する分譲森林が2万5千ヘクタールあり、これらの森林は国土法の届け出が不要なことから、所有者が特定できない森林の合計は3万9千ヘクタールに達している。
 このほかに、長年、整備などを実施していない企業がもつ森林が3万3千ヘクタールあり、北海道では「倒産や廃業で所有者不明となった森林も相当ある」と判断。今後も調査を継続する方針で、所有者不明の森林面積はさらに増える見通しとなっている。 

●産経新聞 平成21年11月20日

http://sankei.jp.msn.com/region/kyushu/nagasaki/091121/ngs0911211049000-n1.htm
国境の島“眠れる法律”で守れ 大正14年制定 外国人土地法に脚光
2009.11.20 22:21

(略)外国人土地法は大正14年の制定。第4条で「国防上必要ナル地区ニ於テハ勅令ヲ以テ外国人又ハ外国法人ノ土地ニ関スル権利ノ取得ニ付禁止ヲ為シ又ハ条件若ハ制限ヲ附スルコトヲ得」とある。同条の2項では具体的な地区を「勅令ヲ以テ之ヲ指定ス」と定めている。
 超党派の議連「日本の領土を守るため行動する議員連盟」(会長、山谷えり子参院議員)のメンバーらから「対馬問題の解決の糸口となりうる」と注目され、法的効力が残っていることが国会質疑で確認されている。
 条文にある「勅令」は、現在は「政令」に読み替えるという規定があるため法改正の必要はなく、新たな政令をつくれば法の適用ができる。
 ただ、政令策定時に、具体的な制限区域の判断基準や要件などを定める作業は必要となる。さらに、既に買収された土地には財産権が発生するため、同法での解決は困難などの問題も残っている。議連ではこうしたさまざまな課題解決に向け外務省や防衛省の担当者からのヒアリングなど調査研究活動を始めた。
 対馬をめぐっては平成17年3月には韓国の馬山市議会が対馬を韓国領と宣言する「対馬島の日条例」を制定するなどの動きがある。20年7月には韓国の国会議員50人らが「対馬返還要求決議」を国会に提出する動きもあった。
 韓国資本などの土地買収も活発で、島内の自衛隊施設の隣接地域に韓国資本によるリゾート施設ができている。
 また、対馬に限らず、自衛隊の基地周辺の土地買収に外国人が触手を伸ばしたり、全国の水源地周辺の土地を外国資本が買いあさる-などの「安全保障上の脅威」が新たな形で次々と指摘されている。

●産経新聞 平成22年11月11日

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/101111/trd1011110341000-n1.htm
【主張】外国人の土地取得 危うくするな安保と国土
2010.11.11 03:41

 国内の水源地や安全保障にかかわる重要な土地が、外国人や外資に取得されている実態が明らかになってきた。
 北海道倶知安(くっちゃん)町で中国資本に57ヘクタールが買収され、うち32ヘクタールが水源機能を持つ保安林だった。近くのニセコ町でも外資が水源地を買収した。ニセコ町は「水の安定供給」を図るため、町の予算で水源地をすべて公有地にすることにした。長崎・対馬では自衛隊施設に隣接した土地が韓国資本により購入されたことが判明している。
 外国人・外資による土地所有については、「合法的ならば何ら問題ない」との主張もあるが、国土の保全に加え、安全保障や公共秩序維持の観点から放置してはならない。
 政府は実態の把握を急ぎ、いかなる手だてによってこうした事態を食い止めることができるのか、早急に結論を出すべきだ。
 現行法では外国人による土地所有に事実上、何の制約もない。大正14(1925)年制定の外国人土地法は、国防上重要な土地の取得制限を定めているが、戦後、規制対象を指定した政令が廃止され、実効性を失っている。外資による取引を規制する外為法も、不動産業の合併・買収について事後届を義務づけているだけだ。
 菅直人首相は先月15日の参院予算委で法規制について「研究してみたい。法相に勉強させ、一つの考えをまとめたい」と述べたが、いまだに省庁横断的な検討の動きは出ていない。政府の対応が鈍すぎる。
 法整備は、憲法で保障する財産権や世界貿易機関(WTO)における内外無差別の原則との整合性を取る必要があるが、安全保障上の土地取得制限は国際ルールとして認められている。まず外国人土地法と外為法を実効的にするように見直さなくてはならない。
 その上で個別法では対応が難しい事態も想定し、法の空白部分を埋めなくてはならない。米国では包括通商法によって、国の安全保障を脅かすと判断される場合には事後的にも取引を阻止できる権限を大統領に与えている。
 首相が研究して法制化すべきはこうした日本版の包括通商法だろう。自民党内でも、「日本の水源林を守る議員勉強会」などが議員立法の作業を進めている。日本の国益を守るために、国家の総力を挙げて不備を正すべきだ。

●産経新聞 平成22年11月5日

http://news.biglobe.ne.jp/domestic/1105/san_101105_3382100050.html
水源地を買収、公有地化へ 北海道ニセコ町、自治体として全国初
産経新聞11月5日(金)1時48分

 北海道ニセコ町が町内にある水源地を公有地にする買収交渉を進めていることが4日、分かった。町の水源地には外国資本所有の土地もあり、町は「水の安定供給を図るため」としている。町の予算で外資所有を含め水源地をすべて公有地にするのは全国で初めて。各地で外資が水源地を取得する動きが相次ぎ、日本の水や国土保全、安全保障上の観点から懸念される中、町レベルでのこうした取り組みは注目を集めそうだ。
 同町関係者によると、町内には15の水源があり、うち5つの水源が民間所有となっていた。これまで町は民間所有者から取水施設分の土地を借りて水を確保し、簡易水道で町内に供給していた。
 5つのうち個人所有の1つを除く4つの水源は企業が所有。道内屈指のスキー場とホテルの敷地内にある2つの水源地は外資などを経て、現在はマレーシア資本企業の手に渡っている。
 同町ではまず、2つの外資所有の水源地のうち取水施設や水道管がある部分約4千平方メートルを買収して町の公有地にする方針。今後、5つの民間所有地すべてで買収交渉を進める方向だ。外資所有の水源地を町所有にする交渉は全国的に例がない。町側は「狙いはあくまで水の安定供給。外資を敵視しているわけではない」と強調している。
 さらに、町では民間が地下水をくみ上げる際、許可が必要になる条例の制定も検討。町側は「水源を守るためには有効な策だ」としており、今年度中の成立を目指す。
 ニセコ町周辺は質のよいスキー場が外国人の人気を集め、香港資本やオーストラリア資本が相次いで進出。平成18年から20年にかけて、住宅地の地価上昇率が3年連続で全国一になった。
 外資による土地や水源地の取得に警戒感が広がる中、北海道も調査に乗り出し、20年に倶知安(くっちゃん)町で中国資本に57ヘクタールが買収されていたことが判明。うち32ヘクタールが水源機能を持つ保安林だった。
 21年にはニセコ町と蘭越、倶知安の3町と砂川市で中国、英国領バージン諸島の企業が4カ所353ヘクタールを買収。個人でもニュージーランドと豪州、シンガポール国籍の各3人が倶知安、ニセコ、日高の3町の計53ヘクタールを取得している。
 道内では林業や木材関係以外の企業2217社が水源機能の高い水源林を所有し、うち倶知安町で中国資本のリゾート開発会社1社が森林(0・2ヘクタール)を所有。ほかに外国資本の可能性がある企業が10社、112ヘクタール分あったほか、東京のJR山手線内のほぼ半分にあたる約2800ヘクタールもの広大な森林が民間所有で、売買対象になり得る状態だった。

●産経新聞 平成22年7月26日~31日

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100726/trd1007261605006-n1.htm
【水 異変】狙われる水源地(1) 「聖地」に伸びる中国の触手
2010.7.26 16:00

 (略)1千メートル級の峰が連なる三重県大台町の山地。伊勢湾に注ぐ宮川の源流を有する“水の聖地”だ。その水は「森の番人」と名付けられ、名古屋や大阪で市販されている。日本最多雨地域にも近く、森に点在する池は、モリアオガエルの繁殖地にもなっている山紫水明の地だ。
 「中国人が山を買収する」という情報が流れたのは2年半前。対象地の面積は、登記簿上は250ヘクタールだが、地積が不明確で、実際の面積は甲子園球場260個分の1千ヘクタールともいわれる。そもそもこの山を見ることすら、地元の人の案内なくしてはたどり着けないような山深い場所にある。
 「垣外俣谷(かいとまただに)の山を買いたいのだが」。50~60代とおぼしき中国人の男性が大台町役場にやってきたのは平成20年1月。中国人特有のなまりのある日本語だったが、「垣外俣谷」という難しい地名を知っていることについて、職員に驚きはなかった。ここ数年、中国名の会社や個人から10件以上の問い合わせが続いていたからだ。
 男性は立木調査の書類も持参しており、「いい木があると聞いてきた」と話したが、職員は「あそこは道もないし、木を切っても搬出するのが難しい」と返答した。男性は実際に現場を訪れた後、「次は和歌山の方へ行ってみます」と言って立ち去ったという。
 大阪の不動産業者のもとにも2年前、中国人がやってきた。買収対象は奈良・吉野の山林。業者が調べてみると、所有者は100人近くに上り、所有者がすでに死亡して相続時の名義変更が漏れているケースも多かった。業者が「書類が4千枚以上は必要になり、売買終了までに2、3年はかかるでしょう」と答えると、先方は「そんなにかかるのか」と驚いた様子だったという。
 「中国の北部は渇水で困っており、南部は水が汚くて使えない。中国は、水の確保に奔走しています」
 高知工科大の村上雅博教授(環境理工学)は、自作した「世界の水紛争マップ」を広げながら、中国の水不足の現状を説明した。水道整備が十分でないまま経済だけがどんどん発展したツケが、近年になって顕在化しているという。
 今年春に中国を訪れた水ジャーナリスト、橋本淳司氏は「長江は臭くてたまらなかった。北京の地下水は汚染物質に侵されており、自然界にありえない物質が入っている」と話す。
 昨年は、中国の小麦地帯で干魃(かんばつ)が深刻化し、数百万人分の飲料水不足が伝えられた。黄河や長江の流域に約4千あった湖も半減している。
 世界各地で深刻化する水不足は紛争を引き起こす。必ずしも銃火を交えたものではなく、水利権を巡る激しい経済紛争も含む争いだ。村上教授の水紛争マップには「紛争継続中」を示す赤い点が、いくつも打たれていた。
 水不足とは縁遠いと思われてきた日本の水源地に、中国系のブローカーらが触手を伸ばしている。日本も水紛争の“戦場”となるのか。国内の水源地をめぐる異変を報告する。

【水 異変】狙われる水源地(2) 外資進出、見えぬ実態
2010.7.27 21:56

 (略)政策研究機関の「東京財団」は今年1月、森や水などの国土資源と土地制度に関する提言を発表。中国など外国資本が日本の土地を買う場合に、制度上さまざまな問題があることを指摘した。
 財団によると、外資の触手は、神戸・灘の酒蔵を含む日本酒メーカーにまで伸びているという。酒造りに「良い水」は欠かせず、メーカーが持つ地下水の取水口(井戸)が魅力だという。
 日本酒離れが進む中、酒造会社の凋(ちょう)落(らく)は著しい。国内の酒類製造場の数は、平成18年で1887カ所。50年前の半分以下になった。
 財団によれば、投資ファンドが酒造会社を買い進めている例があり、ファンドのメンバーに中国人が加わっていることも確認された。通訳を伴い、1週間以上かけて紀伊半島など日本列島を縦断した中国人ミッション(視察団)の事例もあるという。
 中国による日本の水源地への進出は、政府にとっては「うわさの域」にとどめておきたい事柄なのかもしれない。昨年5月、中国の水源地の買収事例について本紙が報じると、農林水産省は火消しに走り、問い合わせた林業関係者に「記事にある事実は確認できていません」と答えたという。
 今年4月、民主党の「水政策推進議員連盟」の総会では、当時の農水省政務官が「日本の水源林が外国資本に買収されているといわれているが、調査した結果、そうした実態はない」と発言した。しかし、そもそも農水省の調査は、都道府県の担当部局に外国人の売買があったかどうかを問い合わせただけで、交渉の当事者に直接聞いたわけではない。
 もっとも、農水省だけを責められない。不十分な調査となった背景には、法制度の不備が大きな理由として横たわる。
 地権者の権利移転が地元の農業委員会などでチェックされる農地と違い、民有林地は、自由に売買することが可能だ。
 国土利用計画法では、1ヘクタール以上の土地の売買であれば、都道府県知事への届け出が義務づけられているが、1ヘクタール未満の土地は届け出義務がなく、都道府県レベルでは誰が買ったのかを把握しようがないのだ。
 水源地の山林に外資が触手を伸ばす背景には、制度上の盲点とともに、深刻な林業の荒廃がある。そして現状の放置は、将来的に取り返しのつかない事態を招くことにもつながりかねない。

http://sankei.jp.msn.com/life/environment/100731/env1007310107000-n1.htm
【水 異変】狙われる水源地(5) 目前に迫る「国家渇水」の危機
2010.7.31 01:04

 数年前、日本経済団体連合会のある会合に出席したドイツ銀行の日本支店長は、日本の脆弱(ぜいじゃく)な地籍管理の実情について「信じられない」と繰り返した。
 「国土の半数以上に測量図がなく、地籍調査が終わっていないなんて…。大きな問題だ。ドイツの本社に報告しておく」
 ドイツでは、軍の情報管理部門が、林地の一筆ごとの境界情報を一元的に管理している。地籍調査は、オランダでは19世紀前半に、韓国では20世紀初頭にすでに終了している。
 これに対し、日本の地籍調査は昭和26年から始まったが、いまだ国土全体の48%しか終わっていない。これほど整備が遅れている国は珍しく、政策研究機関「東京財団」の平野秀樹研究員は「そもそも国内の森林資源について、誰がどこを、何の目的でどれだけ所有しているか、国家として現状をきっちり把握する仕組みがない」と問題の根本を指摘する。
 豊臣秀吉が400年以上前に行った「太閤検地」以後、実面積すら把握できていない土地が数多く残っている現状は異常だ。森林地の中には、毛筆で示された漫画のような図面しか備わっていないところもある。
 特に私有林は、6割の地籍が未確定だという。水源地は奥地にあることが多く、さらに目の届かない状態になっている。
 こうした日本のウイークポイントを外国企業が知って進出を目指しているのだとすれば、外資のしたたかさにうならざるを得ない。
 かつてジャパン・マネーも、バブル期に米・ニューヨークの象徴的存在だったロックフェラービルを買い取り、「米国人の魂」ともいわれた映画会社、コロンビア・ピクチャーズを買収した。いま問題が表面化している外資などによる水源地買収を、かつての日本企業の姿に重ね合わせるような意見もある。
 韓国資本による長崎・対馬の不動産買収問題が顕在化した際にも、当時の麻生太郎首相は「土地は合法的に買っている。日本がかつて米国の土地を買ったのと同じで、自分が買ったときはよくて人が買ったら悪いとはいえない」と発言した。
 しかし、日本人の生命にかかわりかねない水源地買収は、安全保障の問題にも関係してくるはずだ。
 アジアでは、ほとんどの国が外国人の土地所有を強く規制している。インドでは原則外国人の土地所有は不可能。韓国でも国内法に基づき、申告または許可申請が必要になる。
 日本ほど、外国人が制限なく土地を所有できる国は、世界的にみればむしろ異例の存在といえる。
 土地購入とともに、用途についても日本は規制が緩い。所有者は、森林伐採も温泉や井戸の採掘も基本的には自由だ。東京財団の平野研究員は「森林地の扱いについて、これほど自由な先進国はないのではないか」と危惧(きぐ)する。
 日本は資源がない国だといわれる。確かに、石油などのエネルギーには恵まれていないが、水に関していえば、蛇口をひねれば飲料水が出てくること一つをとっても、他国に比べてはるかに豊かだ。
 ただ、水源地を外資や購入目的不明の業者などに次々と押えられていく事態に至れば、たちまち国家的危機に陥る。日本の水資源の豊かさは、いつ崩れてもおかしくないもろさをはらんでいる。
 地籍調査や、外国人の土地購入に関する規制の不十分さは、国にとって待ったなしの取り組むべき課題のはずだ。日本の水の危機は、目の前に迫っている。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

関連掲示
・世界の水問題と日本の貢献については、拙稿「日本は水技術で世界を潤せ」をご参照下さい。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20090515