ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

三橋貴明氏の経済成長理論25

2010-08-19 10:16:15 | 経済
●生産人口を維持し増加させる

 方策の第二は、生産人口の維持・増加である。
 財やサービスの生産は、人間の労働による。人間の活動は、生命を維持・繁栄させるという目的が根底にある。単に自分が生きて生活するだけでなく、子供を生み育てるという生命活動が、世代から世代へと継承されなければならない。わが国では、少子高齢化とそれによる人口減少が進んでいる。若年層の減少と老年層の増加は、労働人口の減少をもたらす。新技術の活用や労働生産性の向上には、GDPを増加させる大きな可能性があるが、生産労働に従事する人口が顕著に減れば、一国の生産力は低下する。
 それでは現在の日本で、どうやって働く人間の数を維持・増加するか。三橋氏は、「女性と高齢者こそが日本の供給不足を解消する鍵」だとして、『日本のグランドデザイン』で次のように述べる。
 「人口別に女性の労働力比率を見た場合、日本では20代後半から30代にかけ、一時的に低下する(いわゆるM字カーブを描く)。もちろん結婚や出産が理由で、一時的に労働市場を離れる女性が少なくないためだ」「このM字の中心部分の凹みを押し上げることで、今後の日本の供給能力を大いに高めることができる」。そのためには、女性が働きやすい環境をつくる必要がある。「保育所の増設や、安価な『託児サービス』の供給能力を高める投資を実施する」「高齢者の方々に託児サービスなどについてご支援いただくことで、M字カーブの凹みを解消し、全体的な供給能力を高める」。これらの政策を行うべきだと三橋氏は説く。
 高齢者の活用については、「高齢者の一部が労働市場に再参入しただけで、日本の供給能力は一気に回復する」と言う。「年金を含め、労働に対するフィー(註 報酬)を拡大することで、高齢者のインセンティブ(註 刺激・動機)を高めると同時に、巨大な消費市場を構築する必要があるのだ」「これこそが、日本の高齢化社会へのソリューション(解決策)であり、供給不足への最終的な解なのだ」と三橋氏は述べる。そして「女性と高齢者こそが日本の供給不足を解消する鍵」だとする。
 私は上記の趣旨は了解するものの、生産人口の維持・増加は、まず男性や青年・中年を主たる対象とするものでなければならないと考える。労働こそ経済全体の基礎とする観点から言うと、経済政策の中心は雇用の創出と安定に置かれねばならない。デフレ下のわが国は失業率が上がり、新卒者の就職難、非正規社員の増加、中年失業者の再就職難等が深刻化している。ニートが70万人に上り、自殺者が12年連続3万人以上も出ている。小泉構造改革によって誤った政策が行われた結果、地方の疲弊がひどい。公共投資の削減、地方交付税交付金・国庫支出金の削減等が行われた結果である。
 それゆえ、労働者の大半を占める男性や青年・中年を対象とした雇用の創出が、まず目指されなければならない。それができてこそ、女性や高齢者の力も生かされる。デフレ脱却のための公共投資の拡大、新技術の活用は、こうした雇用創出を伴うものでなければならない。
 三橋氏は著書で移民問題について触れていないが、生産人口の減少に対し、外国人移民労働者の大量受け入れで対応すべきという意見がある。日本人が多数失業し、若者が貧困化している状態で、労働力を補うために外国人を入れるのは、おかしな考えである。私企業の利益追求のために、安価な労働力として無制限に外国人労働者を入れると、日本人社会の共同性が崩壊するとともに、増加する外国人移民がもたらす社会的・文化的な問題がその崩壊を助長することになる。
 民主党は、永住外国人への地方参政権の付与、重国籍の許容、中央集権国家から地域主権国家へ等、国家と国民のあり方を根底から変える危険な政策を実現しようとしている。これに対抗するためにも、まず日本人のための雇用を生み出し、家庭の生計を安定させ、社会の共同性を回復することが重要である。
 いま日本人は、日本人とは何か、国家とは、国民とはどうあるべきかを真剣に考えねばならない。そして、まず憲法を改正して国家の主権を確立し、国民の責任と義務を強化する必要がある。そして、日本国民とはどういう国民であり、日本国民になれるのはどういう条件を備えた人間であるかを明確にしなければならない。三橋氏にはこの点についての検討が見られないが、日本人が日本という国をどのような国としたいのか、将来、どのような国でありたいのか、そのために今どのような政策を行うべきかを考える際、最重要の課題であると私は考える。
  
 次回が最終回。