昨28日、自民党の新憲法案の全文が発表された。前文については、私が今月24日の日記に掲載した原案から、日本の伝統・文化・歴史に触れた部分は削除された。現在の自民党が「経済優先的な保守」が多数を占め、「伝統尊重的な保守」が大きく後退していることの表れだろう。
さて、天皇についての条項の検討に入りたい。わが国の憲法は、明治憲法・昭和憲法とも、天皇に関する条項で始まった。これは、わが国の伝統・文化・国柄を踏まえたことであって、新しい憲法においても第一章は、天皇に関する章とすべきである。
自民党の新憲法案(2005年10月28日発表)は、第一章を天皇としている。その内容は、昭和憲法と、ほとんど変わりない。
昭和憲法を内容的に修正しているのは、第六条2項の3号「衆議院を解散すること。」に、第何条何項の決定に基づいてと補ったこと、第七条4項の「国会議員の総選挙の施行」を「衆議院の総選挙及び参議院の通常選挙の施行」に改めたこと、第八条の皇室財産の譲渡等に関し、「法律で定める場合を除き」と補っただけである。あとは、条文の順序や位置を一部整理したのみで、内容的な改正ではない。天皇に関する規定は、これまでどおりとしたいということだろう。仮名遣いは現代かなに直してある。
では、昭和憲法の天皇に関する規定が完璧なまでに熟慮されたものなのか。そうは言えない。昭和憲法は占領下で制定された。昭和27年4月28日に独立を回復すると、さまざまな憲法改正案が提示された。その中の一つに、昭和29年11月に、自由党憲法調査会が出した「日本国憲法改正要綱」がある。自由党とは、日本民主党と合併して、現在の自由民主党となった政党である。同党は、天皇の条項に関して、次のような案を出していた。
第一は、「天皇は日本国の元首であって、国民の総意により国を代表するものとする。」う規定する。第二は、「天皇の行う行為に左の諸件を加える。」として数項目追加する。第三は、「皇室財産の規定は法律に譲る。」、第四は「憲法改正の発議に天皇の認証を要するものとする。」と規定するというものである。
これらの修正案は、昭和憲法の規定は、改正すべき点があるという判断に立っている。これに比べ、約50年後の今の自民党は消極的であり、過去の議論を十分踏まえているとは言えない。
私の意見としては、天皇の条項については、検討すべき点が5点ある。
一点目は、天皇の根本的な地位についてである。現行憲法は、現代かな遣いに直すと、以下のように定めている。
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●現行憲法
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
第二条 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
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天皇が日本国の象徴及び日本国民統合の象徴であることは、このとおりでよいと思う。課題は、天皇を元首とするかどうかである。元首は、対外的に国家を代表する存在である。欧州の多くの君主国の憲法では、国王は単なる象徴ではなく、元首であることが明記されている。昭和憲法では、これがはっきりしていない。この点を新憲法では、明確にする必要がある。
天皇は日本国の象徴であり、日本国を対外的に代表して、外交上の国事行為を多く行っている。元首にふさわしい存在は、天皇をおいてない。また天皇を元首と規定しても、それは天皇が政治にかかわることにはならない。天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、その行為の責任は、内閣が負うからである。それゆえ、新憲法には、天皇を元首と規定するのがふさわしい。
以下の三つの案では、そのように規定している。愛知案とは、愛知和男氏(元環境庁長官)の案(改訂第4版)である。
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●愛知案
①天皇は、日本国の元首である。
②天皇は、対外的に日本国及び日本国民を代表するとともに、日本国の伝統、文化、及び国民統合の象徴である。
●日本会議案
天皇は日本国の元首であり、日本国の永続性及び日本国民統合の象徴である。
●JC案
天皇は、日本国の元首であり、日本国民統合の象徴である。
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私もこのように、元首であり象徴であるという規定とする必要があると思う。他の検討点については、次回書く。
さて、天皇についての条項の検討に入りたい。わが国の憲法は、明治憲法・昭和憲法とも、天皇に関する条項で始まった。これは、わが国の伝統・文化・国柄を踏まえたことであって、新しい憲法においても第一章は、天皇に関する章とすべきである。
自民党の新憲法案(2005年10月28日発表)は、第一章を天皇としている。その内容は、昭和憲法と、ほとんど変わりない。
昭和憲法を内容的に修正しているのは、第六条2項の3号「衆議院を解散すること。」に、第何条何項の決定に基づいてと補ったこと、第七条4項の「国会議員の総選挙の施行」を「衆議院の総選挙及び参議院の通常選挙の施行」に改めたこと、第八条の皇室財産の譲渡等に関し、「法律で定める場合を除き」と補っただけである。あとは、条文の順序や位置を一部整理したのみで、内容的な改正ではない。天皇に関する規定は、これまでどおりとしたいということだろう。仮名遣いは現代かなに直してある。
では、昭和憲法の天皇に関する規定が完璧なまでに熟慮されたものなのか。そうは言えない。昭和憲法は占領下で制定された。昭和27年4月28日に独立を回復すると、さまざまな憲法改正案が提示された。その中の一つに、昭和29年11月に、自由党憲法調査会が出した「日本国憲法改正要綱」がある。自由党とは、日本民主党と合併して、現在の自由民主党となった政党である。同党は、天皇の条項に関して、次のような案を出していた。
第一は、「天皇は日本国の元首であって、国民の総意により国を代表するものとする。」う規定する。第二は、「天皇の行う行為に左の諸件を加える。」として数項目追加する。第三は、「皇室財産の規定は法律に譲る。」、第四は「憲法改正の発議に天皇の認証を要するものとする。」と規定するというものである。
これらの修正案は、昭和憲法の規定は、改正すべき点があるという判断に立っている。これに比べ、約50年後の今の自民党は消極的であり、過去の議論を十分踏まえているとは言えない。
私の意見としては、天皇の条項については、検討すべき点が5点ある。
一点目は、天皇の根本的な地位についてである。現行憲法は、現代かな遣いに直すと、以下のように定めている。
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●現行憲法
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。
第二条 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。
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天皇が日本国の象徴及び日本国民統合の象徴であることは、このとおりでよいと思う。課題は、天皇を元首とするかどうかである。元首は、対外的に国家を代表する存在である。欧州の多くの君主国の憲法では、国王は単なる象徴ではなく、元首であることが明記されている。昭和憲法では、これがはっきりしていない。この点を新憲法では、明確にする必要がある。
天皇は日本国の象徴であり、日本国を対外的に代表して、外交上の国事行為を多く行っている。元首にふさわしい存在は、天皇をおいてない。また天皇を元首と規定しても、それは天皇が政治にかかわることにはならない。天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、その行為の責任は、内閣が負うからである。それゆえ、新憲法には、天皇を元首と規定するのがふさわしい。
以下の三つの案では、そのように規定している。愛知案とは、愛知和男氏(元環境庁長官)の案(改訂第4版)である。
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●愛知案
①天皇は、日本国の元首である。
②天皇は、対外的に日本国及び日本国民を代表するとともに、日本国の伝統、文化、及び国民統合の象徴である。
●日本会議案
天皇は日本国の元首であり、日本国の永続性及び日本国民統合の象徴である。
●JC案
天皇は、日本国の元首であり、日本国民統合の象徴である。
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私もこのように、元首であり象徴であるという規定とする必要があると思う。他の検討点については、次回書く。