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「カッコ2分の1」ー新田たつおー

 月並高校のあるクラスに森野カッコという美少女が転入して来た。稀に見る美少女ルックスでスタイル抜群、性格も素直でしとやか。クラスの中は大騒ぎ。特に男子生徒は興奮しまくりで転校生の席取り合戦になる。二人の、女の子に目がないスケベイ男子生徒が隣の席に誘い合って、キャバクラのキャバ嬢指名合戦のような騒ぎになる。

 男子生徒ばかりでなく女子生徒たちも、おしとやかな転校生·カッコを守ろうとカッコの周りに集まる。挙げ句は男性教師がカッコに首ったけになる。

 下校時も通学路をクラスの男子生徒·女子生徒が周りを囲んで帰路に着いてる。そこへ高三の巨漢·凶暴番長が登場し、カッコに一目惚れする。凶暴番長が怖い生徒たちは男子も女子も全員、カッコから離れて逃げてしまう。

 

 番長の取り巻き不良たちがカッコに、番長に抱かれるよう勧める。下半身丸出しで寝転んだ番長に、子分たちがカッコを乗せようとするが、純粋無垢·天真爛漫な美少女、カッコは番長の一物を「何これ?」と握る。

 怒った巨漢番長がカッコを弾き飛ばす。空き地の土管置き場の中に落ち込むカッコ。土管群にぶち当たった衝撃で、カッコの頭部が吹っ飛んだ。カッコの首のない長身·スタイル抜群の、セーラー服姿の身体が転ぶ。

 カッコの頭部は土管群の中から這い出て来た。可愛い顔のカッコの頭には、小さな身体が着いていた。カッコは2頭身半の体躯で、エラい丈の短い身体は男子の学生服を着ていた。ずんぐりむっくりでもない、大きな頭に丈のない小さな身体カッコの本体は、長身·スタイル抜群の身体の中に納められていたのだ。

 1人だけ逃げなかった男子学生が見ていると、土管群の中から出て来たチビ男が、いとも簡単に巨漢番長をのしてしまった。チビ男こそカッコの本体だが、この時点ではまだバレていない。長くスマートなロボット足に入った小柄な老人が、カッコを抱えて連れ去る。

 押し潰されたように扁平な森野研究所がカッコの自宅で、連れ帰ったチビな爺さんこそ父親の森野博士だった。

 やがてカッコが入っていたセーラー服姿のノビールスーツが自動で帰って来る。ノビールスーツを追い掛けて来たスケベイな男子生徒二人は、森野研究所に入って押し潰されそうになる。森野博士の家の中は常に8Gの重力が掛かっていた。だから森野親子はずんぐりむっくりに近いようなチビになってるが、ひとたび家から外に出ればもの凄く力が強い。

 乱暴者の女の子、カッコを女の子らしくするために、森野博士が開発したノビールスーツは、カッコを納めると、カッコの性格を優しく女らしい、しとやかな女の子に変えてしまう。

 森野博士のライバル科学者がカッコを息子の嫁にとやって来た。科学者オジサンは脳移植のロボットになっていたので、超重力下でも平気。息子も科学力でバリヤーを張ってて平気。アンポンタンなブサメン息子を嫌うカッコ。ここに、8G重力に耐えるため、ブロックや鉄板で重装備したスケベイ·クラスメート二人がやって来る。

 ライバル科学者の変態息子が我々は婚約してると迫って来て、拒むカッコとバトルになり、研究所の重力をどんどん上げる中で建物も中に居る人間も全部ペシャンコになり、研究所の建物は崩壊し変態息子はノビてしまう。二人の男子生徒は逃げて去る。

 朝礼でナンパな学校内を硬派にシメようと先生たちを吹っ飛ばして壇上に立つカッコ。そこにタカラヅカ·ビューティーグループなる一団が現れてカッコを拉致連行する。これは宝塚歌劇団のパロディーですね。

 みんな宝塚歌劇団のような格好をした、番長連合の変態版みたいな、このグループは学園内をシメる不良集団だった。不良グループの番長は変態スケ番で、ベッドにくくりつけたカッコを襲う。レズろうとする訳で、そもそもこの漫画はシモネタ全開のギャグ漫画ですからね。エッチな場面はいっぱい出て来る。みんなシモネタ·ギャグとして。

 そしてカッコの宿敵としてノストラダムス撲滅会なる組織が現れる。ノストラダムス撲滅会は先ず、初弾攻撃でモスラの幼虫みたいな巨大な怪獣を出現させて暴れさせ、カッコは失神する。

 学校の保健室で寝ているカッコの前に父親の森野博士が現れ、カッコの出生の秘密を語ろうとするが、苦悶の表情を浮かべてやはり喋れないと走り去る。

 その頃、孤島に立つビルにノストラダムス撲滅会の本部があり、幹部老科学者たちが打倒カッコの策を練っていた。ノストラダムス撲滅会は死に掛けた超高齢の老科学者の集まりだった。

 カッコ打倒の次なる手段として、十数匹の怪獣にいっぺんにカッコを攻撃させる。しかし怪獣たちはみんなチビたちで全部、子供等身大くらいの大きさ。

 朝、登校したカッコが教室に入ると、教室の机に着いて並ぶのはガクラン着たミニ怪獣の数々。たちまちカッコを囲んで襲い、ミニ怪獣たちはカッコを制圧する。しかし、カッコの服を脱がせに掛かった怪獣たちは、カッコの尻のアザを目撃し、カッコの前にひれ伏す。

 そこへ父親の森野博士が現れ、カッコの出生の秘密を語り出す。カッコのお尻のアザは、怪物ランドの女王さまの印しだった。

 こうやってストーリーを語るのも馬鹿馬鹿しいギャグ漫画なんですが、ギャグ漫画とはいえムチャクチャなストーリー展開で、パロディー·ギャグとシモネタ·ギャグに溢れた馬鹿馬鹿しい漫画ですね。

 カッコの父親が語るには、その昔、世界の優秀な科学者ばかりの調査隊が絶海の孤島に探検に行くと、そこは怪獣だらけの島で、そこに超美女な怪獣ランドのお姫さまがいたが、その美女はもの凄くデカかった。怪獣なみにデカい。

 若き森野博士は巨大美女のアソコに飛び込み、やがてカッコが生まれたというムチャクチャな話。巨人美女は調査隊の科学者たちに機銃掃射で撃たれ殺される。科学者たちは女王の子供も始末しようとしたので、森野博士は赤ん坊を抱いて孤島を脱出し命からがら逃げ延びた。

 というのが、実は怪物ランドの女王さま、森野カッコの出生の秘密だった。

 ムチャクチャなお話の設定、ムチャクチャなストーリー展開の、エロエロ·シモネタ·ギャグ満載のパロディー味付けたっぷりギャグ漫画「カッコ2分ノ1」の、これが前半ストーリーのあらすじです。あらすじというか、けっこう詳しくお話内容を書き込みましたが。

 

 新田たつお氏のギャグ漫画作品「カッコ2分の1」は、80年代前半時代の、双葉社発刊の青年コミック誌「月刊スーパーアクション」に連載されてました。「月刊スーパーアクション」は1983年6月に創刊され、多分「カッコ2分の1」は創刊号から連載されていたと思います。「月刊スーパーアクション」自体の休刊(事実上の廃刊)は1987年9月ですが、「カッコ2分の1」の連載は1984年中には終了してますね。

 「月刊スーパーアクション」の編集方針はSF漫画主体の内容で、ギャグ漫画でさえSF趣向の漫画が多かったです。板橋しゅうほう氏の「アイシティ」や「Hey ギャモン」のような異世界や未来舞台のモロSFや、藤子F不二雄氏の「裏町裏通り映画館」のような不思議味付けのファンタジーぽい作品、諸星大二郎氏のダークファンタジーぎみな伝奇漫画「西遊妖猿伝」など、SFやファンタジー趣向の漫画作品で揃えてた。

 「カッコ2分の1」もギャグ漫画ながらも、主人公の父親が科学者で、人為的に重力を発生させた家で暮らしていたり、ロボットが登場したりとSFアイテムで満ちている内容だった。それでも舞台は学校内で学園漫画の様相を帯びていたが、お話の随所にパロディ·ギャグがふんだんに使われ、学園ドラマのパロディになっていた。

 「スーパーアクション」が青年漫画誌なだけに、「カッコ2分ノ1」はエロエロ·シモネタ·ギャグで溢れてましたね。エロエロったってエロはあんまり感じなくて、シモネタがただ馬鹿馬鹿しくて可笑しいだけですけど。

 新田たつお先生のシモネタ·ギャグ漫画というと、何といっても「怪人アッカーマン」ですね。「怪人アッカーマン」は宇宙舞台でロケットや円盤が出て来て、宇宙人も怪獣も出て来るSF漫画ですが、シモネタ超満載のギャグ漫画です。宇宙舞台といっても、何処かの惑星や地球上や巨大宇宙船の中が舞台だったりしますけど、SF映画や特撮ドラマやSF漫画のオールスターがパロディーで登場します。

 「怪人アッカーマン」は双葉社の別冊漫画アクションの1978~80年頃に連載されてたのかな?当時、双葉社アクションコミックスで全6巻で刊行されて、この漫画が大好きだった僕は勿論、全巻持ってました。SFマインドに溢れた、超お下劣·低俗·シモネタ·ギャグ漫画でした。

 「怪人アッカーマン」の中のSFマインド溢れるパロディーは、ウルトラマン、ウルトラセブン、鉄人28号、鉄腕アトム、宇宙戦艦ヤマト、エイトマン、月光仮面、ジェーン·フォンダ主演のバーバレラなど50年代60年代のアメリカSF映画、ゴジラなどの日本の特撮映画などがギャグ要員として漫画にふんだんに登場します。

   

 漫画家·新田たつお先生というと、何といっても代表作は「静かなるドン」ですよね。実にコミックス単行本で全108巻、青年雑誌というか成人雑誌というか大人の漫画週刊誌「週刊漫画サンデー」にて、1988年11月から2013年1月初頭まで24年間近くも連載されました。一応、ヤクザ社会舞台の、ギャグ調コメディ味のバイオレンス有りのストーリー漫画です。マンサン·コミックスで全108巻という大長編ボリュームはとにかく凄いですね。

 「静かなるドン」は大人気コミックとして雑誌連載でもコミックス単行本でも愛読され、オリジナルアニメビデオ化もされたし、劇場版実写映画にもなったし、実写テレビドラマに複数回なってます。また販売用ビデオ実写ドラマ化もされてます。

 昔、雑誌のインタビューや記事で読んだのですが、新田たつおさんというと、元は中学校の美術科の講師で、漫画を描いていることが学校にバレてクビになったというエピソードがありました。中学校で美術を教えているとき、既に漫画作品投稿で収入を得たんでしょうね。また、新田たつおさんが漫画家を目指した動機は、少女漫画家の女性と結婚したかったから、というエピソードもありました。実際に少女漫画を描いている女性と結婚して、目的を果たしたそうですが。

 僕は10代末頃に新田たつおさんのプロ·デビュー作の「台所の鬼」を当時の月刊少年マガジン掲載リアルタイムで読んだのを覚えてます。その直ぐ後の週刊少年マガジン連載の「学園遊び人」も連載リアルタイムで読んでました。劇場版実写映画化もされた「ビッグマグナム黒岩先生」も、当時は毎号購読していた別冊漫画アクションで読んでて、後にコミックスでも再読してますね。別冊漫画アクションに連載された「怪人アッカーマン」は当時大好きな漫画でしたしね。

 新田たつお先生は、デビューから先、大ヒット作というと「静かなるドン」くらいですが、とにかく雑誌掲載の作品の切れ目がなく、常に複数の雑誌に連載を抱える、やはり売れっ子漫画家ですよね。とにかくこれまでの作品数が多い。一応、ギャグ漫画やギャグ調のコメディ味ストーリー漫画が主体ですが、ギャグ味を抑えたストーリー漫画の作品もいっぱいあります。コテコテのギャグ漫画とリアル味のストーリー漫画を描き分けてますね。ストーリー漫画もハラハラ·ドキドキなシリアス調、アクション·バイオレンスものなど多いですね。シリアスなストーリー漫画だけど、随所にギャグを散りばめた作風が多いかな。

 随分前に雑誌のインタビュー記事か何かで読んだのですが、漫画家·新田たつお先生をして業界や世間では「B級漫画の王様」と呼ばれているという話で、本人はこの称号を「“B級漫画の王様”なんて失礼ですよねえ」と嫌がってました。新田たつおさんの作品は、娯楽漫画として飽きずに読ませ続けさせる面白さを持ってますよね。僕もこれまでいっぱい新田たつお漫画を読んで来てますが、面白く読んだ作品はいっぱいありますねぇ。「サラ忍マン」とか好きだったなぁ。

     

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静かなるドン―Yakuza side story (第1巻) (マンサンコミックス) コミック – 新田 たつお  (著)

静かなるドン(108)(完) (マンサンコミックス) コミック – 新田たつお  (著)

怪人アッカーマン~新田たつお傑作選~ (マンサンQコミックス) コミック – 新田 たつお  (著)

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 新田たつおさんのSF調ギャグ漫画、「カッコ2分の1」が創刊号から連載された双葉社の青年コミック誌「月刊スーパーアクション」は、当時大好きな雑誌でした。当時僕は20代後半の年齢で月刊誌だったし、この雑誌を毎号購読してました。僕は20代10年間が人生で一番多く青年コミックを愛読した時代で、スーパーアクション以外にもたくさんの青年コミック雑誌を買って来て読んでた訳ですけど。中でも“SF”を基本的な編集方針とした青年コミック誌「月刊スーパーアクション」は、取り分けリスペクトぎみに貴重な漫画雑誌として読んでたと思います。

 ネットで拾った数々の青年コミック雑誌の表紙を眺めてると、自分の青年時代、十代末頃から30歳までの10年間余りをイロイロ思い出して懐かしいです。とにかくいつもコミック雑誌を買っていて、会社帰りの電車の中、ほとんど外食だった昼飯や夕食のレストランや日本そば屋やとんかつ屋、ラーメン屋に軽食喫茶で読んでたコミック雑誌。若い頃は喫茶店が大好きで、いつもいつも喫茶店に入ってコーヒー啜りながらコミック雑誌を読んでた。

 二十歳くらいから30代の僕は、一応SFフリークで、SFを大リスペクトしてたから、“SF”を基本的な編集方針とした「月刊スーパーアクション」は思い入れの深い雑誌だった。SFフリークといっても、勿論、当時はハヤカワや創元の翻訳SF小説も読んでますが、主体は日本のSF作家の小説でしかも短編集が多かったし、本当のこというとSF小説よりも、ミステリー·探偵小説の方が多く、ミステリ小説の方がSFよりも3倍くらい多く読んでる。しかし劇場版のSF洋画もよく映画館に見に行ったりしてましたね。だからスーパーアクションは漫画誌でも何かリスペクトぎみな雑誌だった。

 ネットに誰かが上げてくれてる「月刊スーパーアクション全収録作品リスト」というサイトがありまして「カッコ2分ノ1」の連載期間は1983年6月創刊号から84年5月号までの調度1年間となってます。

 ちなみに、新田たつお先生の代表作の「静かなるドン」ですが、僕は90年代にコミックスで15、6巻くらいまで読んでます。派生作品の映画やドラマやアニメなどは一度も見たことはありません。最近「静かなるドン」を電子書籍で8巻あたりまで読み返しましたが、面白いですね。続きが読みたくなるストーリー展開です。ギャグ風味の利いた娯楽ストーリー漫画です。さすがに25年ぶりくらいで読み返すと内容、ほとんど忘れてましたね。だから初めて読む感じで面白かったです。

 「静かなるドン」はコミックス単行本が108巻も刊行された超大長編コミックですが、2021年10月時点で日本の漫画作品でコミックス単行本が100巻越えしてる作品は全部で18作品もあり、「静かなるドン」はこの時点で「釣りバカ日誌」と共に12位タイですね。「釣りバカ」は連載が続いてるからまだ巻数は増えそうですが。第1位は「ゴルゴ13」の202巻で、第2位が「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のコミックス全201巻ですね。他に続編とか外伝とかシリーズもので全部合わせて100巻越えしてる漫画は12作品くらいあるようです。

   

 

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