ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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「超低金利、使わぬ手はない」の記事に対するご質問への回答です

2015年02月04日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

  不動産投資について、トサカさんのコメントにありました質問への回答です。

まず質問を繰り返しますと、

>シナリオを2つ提示いただきましたが、「日銀の政策が不動産市場もしくは全体の物価に本質的な影響をあたえないままに介入を縮小(撤退)せざるを得ない」というシナリオも、日銀介入の失敗例の1つとなるように思います。

その場合には、これまでとおなじくデフレが続き、人口が縮小していくなかで不動産への投資は魅力に欠けるように思います。

 

  まず「人口が縮小していくなかで不動産への投資は魅力に欠ける」これはそのとおりだと思います。

  これまで日銀の政策を私はとても手厳しく批判してきました。その理由はなんといってもクロちゃんのやっていることが「一か八かの博打」だからです。債券市場はかなりきわどいところまで買い上げられています。Owlsさんが昨日コメントされていたように、10年債の入札が不調に終わるきわどさまで行っています。

   ではクロちゃんが今後来る2年目をもって「2%のインフレは達成できませんでしたので、辞めさせていただきます」となるとどうなるのでしょう。

   現在年間170兆円も発行している国債を、日銀が80兆円買入れています。それをストップするといったい誰が買うかという問題が早速生じます。

   無理やり80兆円も買っていなければ、毎年の消化はある程度できていましたが、サイコロを投げてしまったため実際には後には戻れないのです。つまり私が指摘しているホテル・カリフォルニア状態で、買うのをやめるという出口はあるように見えても、実際に出たらそこは地獄が待っています。

  異次元緩和は、やめるとそれも別の異次元の世界に突入することを忘れてはいけません。格付け会社は追加の異次元緩和を受けて日銀資産が劣化したとの認識から、日本の格付けを下げました。その劣化した資産を買うのをやめ逆に売却したらどうなるか。大暴落は必至です。

  別の側面から考えてみます。

  まずクロちゃんがゴメンナサイをしたとたん、これまでのアベノミクス全体の中で、唯一効いているかに見えていた金融政策が崩れるので、アベノミクス全体もシナリオが崩れます。そうなったときに「週間現代」の記事の識者が言うように、円高に戻るでしょうか。きっと株式は暴落し円安が急激に進むでしょう。本当に怖いインフレがその時に始まります。金利上昇による不景気とインフレの最悪シナリオです。そして価格が下落する国債など市場では誰も買わないので、政府の資金調達は結局日銀が引き受ける以外なくなります。それが負のスパイラルに拍車をかけます。

 >その場合には、これまでとおなじくデフレが続き、人口が縮小していくなかで不動産への投資は魅力に欠けるように思います。

   日銀の異次元緩和はこうした穏やかな撤退が実現しないので異次元だということを忘れてはいけないと思います。

   もう一つ回答を加えます。

>デフレが続き、人口が縮小していくなかで不動産への投資は魅力に欠けるように思います。

   これはそのとおりだと思います。ですので、私はこのブログでも不動産投資はおやめなさいと繰り返しています。Puffinさんのような余裕のある方の軽井沢別荘は別として(笑)。

   私が目白のおっちょこちょいさんへの回答で示しましたように、若者への不動産購入の提案は「家賃分で買えるほどコストが安い」という前提の購入です。決してもう一軒の「不動産投資」ではありません。

 そしてもう一つ、

>これまでとおなじくデフレが続き、人口が縮小・・・

 こうした言わば「穏やかに消え失せる」ことが日本にできるのでしょうか。膨大な借金と、のしかかる社会保障費の膨張をどうするのか。デフレで歳入が減少を始めると、また国債発行を増やさざるを得ません。

  ということで、こうした「穏やかに消え失せる」ことができないのが日本の置かれた状況なのです。議論が戻りますが、それを一発逆転を目指して一か八かの博打に打って出たのがアベノミクスであり日銀の異次元緩和なのです。

  従ってやはりトサカさんのご指摘は「その2.日銀政策が失敗するケース」に戻ってしまうと思います。

   追加のご質問などあれば、どうぞ遠慮なく。

   ただし私は明日からまたスキーで、今度は八方尾根に4日間出かけますので、回答は来週になります。

  バックカントリーはしませんよ、そんな自信はありません(笑)。

コメント (3)
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戦後70年、第2の敗戦に向かう日本 その5 超低金利、使わぬ手はない

2015年02月03日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

  今年は寒さが厳しいですね。でもそのおかげでスキーヤーにはチャンス到来。週末に今年3度目のスキーに富士見パノラマ・リゾートという中央高速沿いのスキー場でかけました。2日間快晴の中でスキーを楽しむことができました。驚いたのはスノー・シューをはいた大勢のハイカーです。それもただのハイカーではなく、なんと多くの方が飼い犬にダウンを着せて、一緒にトレッキングをするのです。みなさんロープウェーでスキーヤーとともに頂上まで行き、そこから今遭難ばやりのバックカントリーへと果敢に踏み込んでいくのです。犬たちがセントバーナードなら救ってくれるかもしれませんが、ほとんどが家の中で飼っている小型犬なので、とても救ってもらえそうもありません。それでもガイドをつけた本格ドッグトレッキング部隊もいて、とても楽しそうでした。

  さて、昨日のアメリカ債券市場で国債の10年物金利が1.66%まで低下しています。このブログの昨年末のアメリカ金利見通しのシリーズで、今年の金利見通しについて上昇するか否かは「物価」が大きなリスクだと申し上げました。このところ日本や欧州、そしてアメリカも物価の低下リスクがかなり大きな問題として浮上しています。金利上昇を待っている方にはあまりかんばしいニュースではありませんね。

  ではシリーズ記事、「戦後70年第2の敗戦に向かう日本」に戻ります。

  1月23日の記事で金利の低下がもたらす様々なリスクをみてみました。その要旨は、日銀の国債爆食により様々な困った事が起こっているというもので、項目としては以下をあげました。

・財政規律の崩壊
・金融機関の収益機会の喪失
・年金の崩壊
・国民から金利所得獲得の機会を奪う

  今回はリスクではなく、このような日銀の政策を逆手に取る提案をしてみます。超低金利を最大限に利用して、ヘッジファンドの円キャリー・トレードまがいの投資を行うのです。これはどなたもが簡単にできるというものではありません。著書にも書いていますが、若い方向けの長期戦略です。

  現在住宅購入をする際に住宅金融支援機構と民間の金融機関が共同で提供するフラット35を利用して借入を起こすと、頭金にもよりますが最低1.37%ー1.7%程度の超低金利、しかも固定での借り入れが可能です。それを目いっぱい利用して戸建もしくはマンションを購入するというものです。この低金利でも住宅投資が盛り上がらないのは、やはり若い世代の購買力が相当落ちているのだと思われます。その問題はひとまず置いておきます。

  若い方は頭金がかなりあったとしても、それはなるべく使わず借金をします。すると将来どうなるか、2つのシナリオで考えてみましょう。

その1.日銀政策が奏功するケース
日本が2%のインフレで収まり、成長軌道に乗ったケースです。この場合、クロちゃんの目論見どおりであれば資産価格は上昇し、当然賃金も上昇するので返済が楽になり、よい投資だったとなります。まあ、不動産価格が上昇しなくとも、家賃分で買うことができればよしとしましょう。とにかく金利コストが1%台なのですから。我々団塊の世代が高度成長とともにちょっと無理して家を買い、賃金の上昇でしだいに楽になったという時代の再現です。

その2.日銀政策が失敗するケース

国債爆食が奏功せず、私が恐れている制御不能のインフレになるケースです。当然インフレ時は借金したもの勝ちです。借金の額は増えず、金利も固定。しかし賃金は徐々にでもむりやり上昇させざるをえない。そして家の価格も一端は暴落しても、長期的にはある程度回復する。その結果、借金は実質的に何割か踏み倒したも同然になります。
  
  上の2つのシナリオのどちらかへ転ぶとすれば、どちらに転んでも超低い固定金利での借金戦略は大成功です。

  家もあるしオカネもあるという方は米ドルへの投資あるいはその先で米国債を買えば日本と円のリスクには備えられるのですが、この借金戦略はカラ手でもリスクヘッジはできるし、そうでなくとも超低金利をエンジョイできる戦略です。

  こうしたどちらに転んでも大丈夫などという戦略はなかなかチャンスがないのですが、たまたまクロちゃんが国債を爆食しているため市場に巨大なゆがみが生じ、チャンスが到来しているのです。

ありがたく、頂戴することにしましょう。

コメント (11)
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