ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
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拝啓 金融庁長官殿・・・許し難い証券会社

2014年10月10日 | 2014年の資産運用
 昨日(10月9日)の日経朝刊5面に「運用会社も意識改革を」というタイトルで細溝金融庁長官のインタビュー記事が載っていました。誠に結構な内容なので一部を引用しますと、

「販売会社には相手のニーズに合った商品を薦める『適合性原則』を求める」
「当局としては販売会社主導の商品の売りk多々になっていないか関心を持ってみるし、必要があれば口をはさむ」


 では是非その「口をはさんでいただきたい事例」を紹介させていただきます。

 私が時折アドバイスをさし上げているあるシニアの方Aさんから本日只今聞いた話を、その方のお許しを得て以下に記します。

 大手証券会社、・・・・日○証券の都内のターミナル駅にある大きな支店での数日前の出来事です。

Aさん「アメリカ国債を買いたいのですが」

窓口担当者「アメリカ国債は70歳以上のシニアの方にはお売りできません」

Aさん「何故ですか」


担当「リスクがありますので、まず承諾書をいただくとともに、支店の上司2名と面談をお願いすることになります。それとご家族の方に連絡をさしあげて、承諾を得る必要があります。もしくは特別の書類にサインをいただきます。」

Aさん「それでもかまいませんので、売ってください」

すると上司の課長さんが出てきて、

上司課長「アメリカ国債はリスクがありますので、安全な投資対象としては日本国債をお薦めします。それが安全な投資の『常識』です」

Aさん「株式は価格が上下するので危険だと思いますが、シニアだからといっておたくでも株にリスクがあると言われたことはありませんが」

上司課長「株式は価格が上下するのは『常識』です」
Aさん「それでも米国債を買いたいのですが」


次には副支店長が出てきて、

副支店長「アメリカ国債はシニアの方にはリスクがあるのでお薦めしません」

Aさん「・・・・」


 Aさんは大きなショックを受け、証券会社をあとにしました。ところが家に帰ってからもショック状態が続き、私におっしゃるには、

Aさん「あまりのショックで2・3日うつになってしまいました。まるでオレオレ詐欺に遭ってしまったように感じています」とのこと。
 
 Aさん「それで今度は別の大手三○・・・証券に行きました。そしたら初めてなのに、すぐに米国債のリストを出してきて、何の抵抗もなく手続きを開始してくれました」
たとのこと。

 この数日でAさんの年令が若返ったわけはありません。日○証券はひたすら米国債から目を逸らさせようと上司を2名も出したり書類にサインを要求したり、家族への連絡をちらつかせたりしたのです。

 私は「証券会社の売りたがらない米国債」を象徴するお話しだと感じたばかりでなく、金融庁長官のお話を思い出し、リスクをはき違えたアドバイスをする大手証券会社を糾弾したくて、電話を切ってからすぐにこの記事を書きました。

 金融庁長官殿、是非アクションをお願いします。

 と言ったところで、この方も「ジョーシキ的には安全なのは日本国債で、米国債は危ない」派かもしれません・・・



 ではもしAさんが「米国ハイイールド債投信をください」と言ったらどうでしょう。きっと日○証券は支店長が出てきて揉み手をしながら「たくさん配当も出ますのでシニアの方にはピッタリの商品でございます」・・・なんでしょうね、きっと。

 これもおとり捜査でAさんに試してもらいましょうか(笑)




 
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アメリカ国債と日本国債、どちらが安全か、4.財政収支の推移

2014年10月09日 | 2014年の資産運用
 ここまでアメリカと日本の債務残高のGDP比率や潜在成長力について見てきました。数字をおさらいしますと、

政府の債務残高のGDP対比
アメリカ= 106%
日本  = 232%


潜在成長力比較
 アメリカ= IMF見通し2.5%+シェール革命0.3%+イノベーション?=3%程度
 日本  = IMF見通し0.7%+アベノミクス?+イノベーション??=0.7%±?


 両者の差は、今後も拡大の一途をたどることが見てとれます。

 もう一つ押えておく必要のある数字が昨日アメリカの議会予算局から発表されましたので、見ておきましょう。それは債務残高ではなく、その原因を作っている毎年の予算収支が最近どうなっているかです。

 アメリカも日本もリーマンショック後に莫大な財政支出をして経済をテコ入れしました。ピークでの財政赤字は両者とも09年で、たった1年でGDP対比9%台の赤字を作りました。問題はそのあとで、それが果たして収束に向かっているか否かです。年ごとに並べてみます。アメリカはCBO(議会予算局)、日本は財務省の公表数値です。アメリカの予算は9月末で終わるため、14年は実績の推定値です。日本の14年は来年3月末までのため、予算値です。

      08年 09  10   11   12   13  14
アメリカ  3.1% 9.8  8.8  8.4  6.8  4.1  2.8
日本 4.5  9.3  8.3  8.7  9.0 9.2  7.6


 08年には両者ともマイルドな赤字でしたが、それが09年に大ジャンプして11年まではともにゆっくりと減少。しかし12年からは大きな乖離が生まれました。特に注目されるのは安倍政権成立後の日本の12年13年で対GDP赤字が増加していることです。14年度は予算上は減少しているように見えますが、いつもその後の補正予算で赤字は増えてきたので、この数字は増加する可能性大です。

 アメリカの予算作成は単年度主義ではなく、毎年数年後までのローリング予算を作りコントロールしますが、現状までの数字は数年前に作成された予想値の範囲内で、順調に赤字を減らしています。終わったばかりの14年度については08年の3.1%すら下回りGDP比で2.8%に低下。この面からみてもアメリカが財政に頼らずに回復している様子が見てとれます。

 一方の日本は12年度13年度を見ると、ショックからの回復など全くできていないばかりか、気にもしていない様子が見てとれます。ご存知のように日本の財政は単年度主義で、年度末には余りそうな予算はすべて使い尽くし、テコ入れだと称して毎年大きな補正予算を組み無駄使いに励みます。そうしたバカげた使いこみは、これだけ累積赤字が積もり積もっても一向に変わらないのは何故でしょうか。

 財務省は大本営の中にありながらも役目上そしてアリバイ作りのために財布の紐をしめようとしますが、政治家は政府内にいても外野にいてもみんなオネダリ君ばかりです。そして民間のエコノミスト達も日経新聞などと共にほとんどがオネダリ君で、みんなでオカネをバラ撒いてちょうだいと大合唱します。この図式は今後株式相場がスランプに陥れば、年度内に間違いなく再現されるでしょう。

 さて、世界経済の後退懸念が出ています。IMFの世界経済見通しが一昨日発表され、今年の世界経済全体は若干の下方修正となりました。日本は0.7%も下方修正され今年の成長は0.9%の見込。他方アメリカは0.5%上方修正され2.2%とされました。IMFの見通しはしょっちゅう改定されますので、信頼性は高いとは言えませんが、方やマイナス、方やプラスの改定は両国経済の現在の位置を端的に表していることに間違いありません。その中でもNYに出張中のクロちゃんは「見込み通りの回復」と、むなしく強気発言を繰り返しています。

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私のゴルフ、40年の軌跡  国内300コース達成!

2014年10月06日 | ゴルフ
 またゴルフ自慢です(笑)

 ゴルフライフ40年間にプレーしたコース数が積もり積もって300コースになりました。300コース目はメンバーの友人にお願いして千葉県にあるキングフィールズGCを先週ラウンドしました。友人はニュースキャスターをしている大学の先輩で、彼ご自慢のコースをホールごとにしっかりとガイドしてくれました。先輩に感謝いたします。

 私はプレーそのものも大好きですが、是非プレーしてみたいというコースを訪ね歩くのも趣味の一つです。7月に英国のリンクス巡りをしたレポートを書かせていただきましたが、海外で経験したコース数も81カ所になりました。内外合計381カ所。我ながらよくもまあプレーしたものです。

 ちなみに国内で最も多いのは千葉県の45コース、そして茨城県36、静岡県32、神奈川県26、栃木県25、埼玉県25カ所・・・です。その中で、もしプレーできるのならいつでも喜んで馳せ参じるコースはといいますと、北から、

北海道クラシック、グランディ那須白川、ホーライ・西那須野、大洗、石岡、川奈、廣野といったコースです。

 そして印象が強く残っているコースは、青森の夏泊GL、福島のボナリ高原、白洲次郎の軽井沢GC、長崎のパサージュ琴海といったところです。

 えっ、名門と言われるコースが入ってない?

 そうですね。埼玉・千葉・東京あたりの古くからあるいわゆる名門コースは入っていません。私の独断と偏見で申し上げますと、一応ほとんどのコースはプレーしていますが、どこも似たり寄ったりで、残念ながら私の心には響かないのです。メンバーの方がいらしたら、申し訳ありません。みなさんのお気に入りコースはどこでしょう。

 ちなみにゴルフダイジェスト社の発行するチョイスという雑誌は、毎年日本のベストコースを選んでいます。この雑誌のベストコース選びは、プレーしてみたい憧れのコースなどではなく、シロウトの人気投票でもない。私も敬服するくらい真面目なプロセスを経て選定されています。全国のゴルフコースを知り尽くしている30人ほどのパネリストが議論を尽くしてベスト100コースを選び、さらにベスト10を選ぶのですが、84年に開始されて以来30年の歴史を持つ権威あるベストコース選びです。

 今年選ばれたベストテン・コースは以下のとおりですが、10コースの中で順位はつけられていません。

2014年ベスト10コース  設計家
大洗GC           井上誠一
日光CC           井上誠一
我孫子GC         赤星四朗
竜ヶ崎CC          井上誠一
霞が関CC東        井上誠一
川奈ホテル富士      アリソン
廣野GC           アリソン
茨木CC西         井上誠一
鳴尾GC           クレーン兄弟、アリソン改造
古賀GC           上田治

 驚くのは私の大好きなコース設計家である井上誠一氏(故人)のコースが半分の5コースを占めていることです。そして昭和の初めにアリソンが設計した2コースが輝きを保っていることでしょう。

 私はこの中では茨木CC西と鳴尾GCはプレーの経験がありません。どなたか是非連れて行ってください(笑)。

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アメリカ国債と日本国債、どちらが安全か、3.金利上昇インパクトの検証

2014年10月04日 | 2014年の資産運用

 ここまでアメリカ国債と日本国債のどちらが安全かを見てきました。いままでにお示しした数字をまとめておさらいしますと、

まず政府の債務残高の対GDP比率は、
 アメリカ= 106%
 日本  = 232%


日本の債務比率はアメリカの2倍を超えています。

 そして債務を返済する原動力が経済の成長力です。どちらが成長力をもっているか、まずこの7年の実績値を見てみますと、
    
        07年末    14年第2四半期
日本     515兆円     487兆円          ▲5.4%
アメリカ  14,480十億ドル 17,326十億ドル      +20%

 日本は7年前に515兆円だった名目GDPが、直近(4‐6月期の年率換算)で487兆円。意外にも5.4%も減少しています。一方アメリカの名目GDPはリーマンショックをはさみながら07年の14,480十億ドルから17,326十億ドルへなんと20%も成長しているのです。現状の数値をだけ円で比較しますと1ドル100円換算で日本の487兆円対アメリカの1,732兆円、3.6倍のひらきがあります。

 そして一番問題なのは、今後両国の経済がどうなっていくかですが、それには潜在成長力を見る必要があります。推定を含めた両国の見通しは以下のとおりかなり決定的なのです。

潜在成長力比較
 アメリカ
  IMF見通し2.5%+シェール革命0.3%+イノベーション?=3%程度
 日本
  IMF見通し0.7%+アベノミクス?+イノベーション??=0.7%±?


 もっともこの数値は実質成長率のため、インフレ率が今までのようにアメリカが高いと差はさらに大きくなることに注意しましょう。

 先日の記事で、原稿を出版社に持っていったところ一発で出版が決まり、編集局の全員が「米国債を買いたい」と言っていた、というエピソードを紹介しました。もう一つエピソードを紹介します。それがこの日米の国債安全度比較です。編集者から「もしアメリカが先に破綻したらどうするのか、書いておいてほしい」と言われました。そこで私は債務比率や潜在成長力の比較などの数値を示し、「絶対にそれはありえない」と主張したのですが、「どうしても書け」とのこと。

 著書にはいやいや書いた「アメリカの破綻が早いケースへの対処」という項目が「R氏・B君の運用方法」のところにちらっと載せてあります。その時に私の心に浮かんだ言葉はある有名な経済学者が言っていた「人は理論や数字では決して動かない」という言葉です。数字を重んじるはずの経済誌の編集者でもそうなんですから、ましてや最近このブログで活発に議論されていたような方に数字は通用しないのでしょう。

 それでも私は「経済・金融は数字がすべてだ」と思っていますし、みなさんにはそれが通用すると信じています。
 
 さて今回の本題です。日銀のクロちゃんはやみくもに国債を買いまくり、今や日本国債1千兆円のうちの2割、200兆円を買っています。そのお蔭で日本はアベクロコンビの政策が大成功に終わると、実は破綻します。それを「す・う・じ」で示しておきます(笑)。国債の残高の内容は、14年3月末の財務省発表数値を使用します。日銀の保有も平均値に沿っていて、現状でもさほど変化なしと仮定します。

国債平均残存年数;7.7年
残存国債平均利率;1.15%・・・クーポンのことです


 アベノミクスの目標通りインフレ率2%、実質成長率1%で、3%の名目成長率が達成できたとすると長期金利は3%程度に上昇するとされていますので、それを適用して価格変動を計算します。

 上記が1銘柄の国債だと仮定します。すると年限7.7年、ク-ポン1.15%、市場金利が0.27%なので、上記国債の現在の価格は106.67と計算できます。

 市場金利が10年物長期金利で3%まで上昇したとすると、残存7.7年の金利は2.8%程度へ上昇するでしょう。すると価格は88.69に下落します。約17%の下落です。

 日本国債の全投資家が平均年限並みにポートフォリオを作っていたと仮定すると、1,000兆円程度の国債の価値は170兆円減り、その損失をみんなで被ることになります。そのうち日銀は2割を保有していますので、34兆円の損失です。

 日銀の14年3月末の貸借対照表上の自己資本は3.4兆円とありますから、自己資本の10倍が計算上吹き飛ぶことになります。その時、クロちゃんはどういう顔をして記者会見に臨むのか、見ものです。同様な事態は日本中の金融機関や年金運用のGPIFなどを襲います。

 数字ばかり羅列して申し訳ないのですが、アベノミクスの成功により長期金利がたった3%に上昇しただけで、これほど壊滅的になるという帰結は、すくなくとも債券イールド計算ができないとシミュレーションすらできません。ましてや計算結果を受け入れることなど、絶対にしたくないでしょう。

 何度か申し上げましたが、全世界の債券の残存額は株の時価総額の3倍もある巨大な世界ですが、自国の国債価格が激震を起こすまで、誰もが決して見ようとはしない世界なのです。


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