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短期金利 マイナス金利定着

2014年10月27日 | ニュース・コメント
 昨日10月26日の日経新聞朝刊のコラム「けいざい解読」に「短期国債、マイナス金利定着」という内容の記事がありました。副題は「異次元緩和の限界露呈」と日経にしては珍しくかなり批判的内容です。要旨を紹介します。※は私のコメントです。

・政府がお金をもらって借金をする」という珍事が起きた
※普通なら金利を払って借金するのに、もらって借金をするという珍事です

・最大の要因は日銀による短期国債の買い集め
※長期国債の購入には限度額があって、それに到達してしまっています

・17日には日銀の予定した国債買い入れ額を達成できない札割れも発生した
※すでに何度も発生しています

・年末の資金供給目途である270兆円は必達目標。9月末で252兆円までこぎつけたが長期国債の購入額は限度到達なので、短期国債しかない

・長期金利もこれ以上低下の余地はなく、「今の金融緩和の枠組みの限界がはっきりしてきた

 おっしゃるとおりです。しかしマイナス金利で政府が資金調達できると、歯止めがなくなるのは火を見るよりあきらかです。国債を発行すればマイナス金利分政府は得するので、歯止めはなくなってしまいます。そのマイナス分のツケを最後に払うのは我々国民です。

 金融市場には秩序が必要で、秩序の要は日銀です。国債が発行される時に入札するのは証券銀行で、彼らがマイナス金利で、つまり価格が割高になっても買うのは、いずれ日銀の買いオペでさらに高い価格で転売できることがわかっているからです。

 私は市場を乱すクロちゃんがほとんど錯乱しているようにも思えます。銀行から国債を買ってあげても、銀行が得た資金は銀行から出るのではなく、ひたすら銀行の日銀当座預金残高が増えるだけのブタ積みに終わっています。当初の「市中にオカネが出回りインフレを起こす」というシナリオが完全に崩れているのに、資金供給目標を達成しないと失敗のレッテルを貼られるため、なにがなんでも額を達成しようとする。錯乱以外のなにものでもありません。こうした市場秩序の乱れは、結局それを見透かした投機筋によって利用されるだけです。

 一方、日経新聞のこのコラム記事の最後は、先に述べた「今の金融緩和の枠組みの限界がはっきりしてきた」で終わっているのではありません。最後は次のような言葉で結ばれています。

・「株式指数連動型投信(ETF)の購入増などを打ち出しつつ「量より質」に軸足を移すのが現実的ではないか

要は「国債を買えなくなったら、日経新聞がよく売れるように株を買って値段を釣り上げろ」

 編集委員の署名記事ですが、折角9割がた核心を突く内容だったのが、最後は「日銀は株を買え」とは・・・

羊頭狗肉、単なるお笑いの一席でした(爆)

コメント (12)
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