ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ECBの決定について

2012年09月10日 | ニュース・コメント

  新シリーズの開始とともに、みなさんには「今後、時々の経済・金融関係のニュースにコメントします」と申し上げていました。ここまで何もせずに1か月以上が過ぎてしまいましたが、はじめてのニュース・コメントを記事にします。

  9月6日、ECBは無制限の国債買入れを決めました。このことをどうとらえるべきか、私の考え方をお知らせします。

  私は6月くらいにギリシャの選挙に際して、「ギリシャ国民はユーロ離脱の選択などしないし、ユーロ危機が大恐慌を誘発したりしない」と申し上げていました。今回のECBの決定は、それに最後のダメを押すものだと思っています。もちろんドイツの裁判などの不確定要素はあっても、ダメ押しに決定打になるほどのインパクトはないでしょう。

何故そうした予想を立てているのか、理由を説明します。

  みなさんもご存知のように、私は日本国債については超悲観的にみています。しかし、著書でも「日本国債は破綻はしないし、させられない」と書いています。その一番の理由は、「日銀が無制限に国債を買入れるから」としています。ユーロ各国の国債も同じで、ECBになるのかその他の機関になるのかはわかりませんが、大きな国の国債は破綻など絶対にさせられないのです。

  国債の破綻は資産に国債を組み入れすぎている銀行がすべて破綻に見舞われので、絶対にできません。すべての銀行の破綻を処理するより、国債の破綻を防ぐ方がたやすいのです。日本の場合も同じです。

  これは米国債も同じで、著書では「もしアメリカが先に破綻したら」ということを書かされたのですが、米国債も同じ理由で破綻は絶対にありません。破綻を選択するのは、これまでもそうしたことを繰り返すような国々だけです。

  ハイパーインフレか金融恐慌か、恐怖の選択ということにはなりますが、先進諸国では、経済活動全体を止めてしまう金融恐慌は避けざるをえないのです。

  さて今回の決定だけでユーロ問題は決着はしないし、これからもぶり返すことはあるでしょう。しかし決定的大破綻はなんとしても避ける政策しか選択できないことをみなさんも是非頭に入れておいてください。

  それが今後のみなさんの投資の選択に際しても、よいヒントになると思われます。

  今後みなさんから、「これについてコメントしろ」ということがあれば遠慮なくリクエストください。できるかぎりお答えしたいと思います。

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初歩の投資教室 その11

2012年09月05日 | 初歩の投資教室

  前回の記事に山ちゃんから、証券会社に対して手厳しいコメントが付きました。今回はそれに対する私のコメントを書くことにします。

山ちゃんのコメントの要旨は、

「会社 全体が、利益至上主義に染まっていたかもしれない。」なんて、白々しくも言い、「すべてを顧客のために」と言っています。これって、あの会社が、危機に陥るたびに言ってきたことで、ああまたか、としか思えない。」


 この主張についてはそのとおりだと思います。今後それが繰り返されない保証はありませんね。

山ちゃんは次のような意見もお持ちです。

「顧客の投資方針と違う商品を勧め、損をさせたら、損害を賠償すればいい」

 これは顧客が「投資は自己リスク」という誓約書を出しているので、難しいと思います。また投資方針と商品のリスク解釈の問題もあるし、損失補てんをすることにもつながるので、簡単に規制できるとは思えません。

 ではどうしたらよいのか。ちょっと簡単に歴史を振り返ると、これまで個人の株取引に軸足をおいてきた証券会社は、ネット取引に客を奪われ利益の源泉を失いました。その上現在の株式市場の出来高の6-7割は外人なので(保有高ではなく売買高です)、株取引は外人を中心としたファンドに軸足を移しています。それが今回の不祥事、ファンドへのインサイダー情報提供となって噴き出してしまった。ファンドは悪質なものはごくわずかなので、軸足に大きな変化は及ぼさないでしょう。

 では個人客をどうしたかといいますと、株式から離れたりネットへ移った客は放っておいて、金融資産のほとんどを保有している高齢層をメインのターゲットとして投資信託を薦めています。それもAさんに代表されるような、リスクが何かもわからない個人をカモにしています。

 投信は本格運用をする前の設定時から高配当を約束し、運用開始とともにタコ足配当を続け1万円の価格を大きく割り込む。しかしリスクの把握すらおぼつかない高齢な個人客は、配当を楽しんで元本の毀損は意識すらしていないので、投信会社と高額な販売手数料をもらう証券会社の思うつぼにはまっています。

 この現状を見過ごせない私の主張は、「配当は1万円を超えた部分だけにしろ」というものです。配当とは当然運用益の配当なのですから、特別配当だのなんだのと御託をならべて詐欺まがいの配当をするのは許せません。

 実はこの主張を、「毎月配当投信」の大ヒットを飛ばした本人の友人にしたところ、彼も大賛成してくれました。

 どうやらまたいつもの怒りの爆発になってしまいました。山ちゃんのお怒りも、まことにごもっともです。

 最近の証券会社の不祥事への対処は、オレオレ詐欺への対処とそっくりで、詐欺師側は取り締まっても取り締まっても、いくらでも次の手を繰り出してくるので無駄です。従って対処策は教育を通じた自己防衛以外に道はない、というのが私の結論です。

 本来であれば金融リテラシーを持つ証券や銀行、生保などの金融機関が教育指導者たるべきですが、かれらはオレたち側(笑)なのでまかせられません。金融機関とは一線を画す専門家に任せる以外にないのでしょう。・・・テマエミソ(笑)

つづく
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初歩の投資教室 その10

2012年09月01日 | 初歩の投資教室

  前回高齢者でセミナーに参加する方の理由をAさんが『同病相哀れむ』と言ったことについて、「セミナーでお隣さんの方と話をすることあるのなか?」という疑問の声がありましたので、Aさんに確認しました。すると、高齢者になればなるほど開始時間よりかなり早く到着する人が多く、しょっちゅう顔を合わせている人同誌は話をしています、との回答がありました。Aさんは新参なので挨拶はかわすが、話の輪には入っていない、とのことでした。

  さて投資初心者Aさんのお話ですが、セミナーのところまでをちょっとまとめてみましょう。それはこんな具合でした。

・証券会社を訪問すると初めに担当者がアサインされ口座の書類を整えると、リスクをどの程度とるつもりがあるのか投資方針の確認をしてきた。「リスクはあまり取りたくない」と回答した

・リスクを少なくするにはポートフォリオをどう組むべきかなどの話はなく、その後いきなり売れ筋商品の話に入った

・その後はしょっちゅう電話勧誘があり、リスクの大きな商品を躊躇なく薦めてきた

・セミナーの案内も定期的にあり、その場でも結局リスクの大きな商品を薦められた

・挙句の果てに全部で3千万円の投資額なのに、東電の債券を1千万円勧誘してきた

  私はこうした日本の証券会社の営業姿勢について、株屋といわれた時代のDNAがそのまま残っていてぬぐいようがない、と思わざるを得ません。

  Aさんはシロウトで実は商品のリスクの大小も私がコメントとして後付けしているだけで、ご本人ははっきりとは理解していませんでした。一番問題なのは、それすらわからないAさんに向けてリスクの高い商品を見境なく薦めることです。

薦めてきた商品も振り返りますと、特に強く薦めてきたのは

① 毎月配当型、高格付け外貨建債券ファンド

② 新興国株式ファンド

③ 通貨選択型ハイイール債券ファンド


  その中からAさんは①の高格付け外貨建債券ファンドだけに投資をしてあとは様子を見ています。君子危うきに近寄らず、を実行しているAさんは、「きっと新興国は海千山千だろう」、「通貨選択型ハイイールド債は理解不能なのでやめておいた」とのこと。実に賢明な選択だと私は思います。実際のそうした商品のパフォーマンスも、たった1年で大きく下落しています。

  ではどうして①の高格付け外債ファンドには投資したのか理由を尋ねますと、「高格付けならリスクはなさそうだし、配当が魅力的だった」とのこと。このファンドがどのファンドか、おそらくみなさんなら見当がつくと思いますが、そのとおりです。敢えて名前は申しません。この約1年間のパフォーマンスは配当を含めても、若干のマイナスで留まっているそうです。

  そうですよね、もう下がりようがないほど価格は下がっていますからね。これだけの金利低下局面でも価格が上がらない、しかも円ドルレートもこの1年はほとんど動いていません。純資産がどんどん少なくなっているのはこのあたりに理由があるのでしょう。

  ここで大事なことを申し上げます。

  私がこれまでみなさんにお薦めしている債券投資と、債券ファンドへの投資はリスクが全く違います。そのことについては後ほど詳しく説明しますが、一言で言えば、「生の債券投資は買った時に償還までの利回りが確定しますが、ファンドは価格の変動に翻弄される」という違いがあるのです。
  償還のあるファンド(運用年限が決まっている)を買っても、リスクは普通のファンドとほぼ同じです。現在のような世界的低金利時代は、債券ファンドへの投資は注意を要します。ここまで下がった金利は、そのままか上昇するだけだからです(金利の上昇は価格の低下)。買ってもいいファンドは『高格付け、かつ短期債』のみに投資するファンドだけです。


  ではいったい、今後Aさんはポートフォリオをどう組み立てたらよいのでしょうか。そのヒントになりそうなポートフォリオの代表例をいくつか見ながらポートフォリオの組み方について勉強していくことにしましょう。

つづく
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