ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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初歩の投資教室 その10

2012年09月01日 | 初歩の投資教室

  前回高齢者でセミナーに参加する方の理由をAさんが『同病相哀れむ』と言ったことについて、「セミナーでお隣さんの方と話をすることあるのなか?」という疑問の声がありましたので、Aさんに確認しました。すると、高齢者になればなるほど開始時間よりかなり早く到着する人が多く、しょっちゅう顔を合わせている人同誌は話をしています、との回答がありました。Aさんは新参なので挨拶はかわすが、話の輪には入っていない、とのことでした。

  さて投資初心者Aさんのお話ですが、セミナーのところまでをちょっとまとめてみましょう。それはこんな具合でした。

・証券会社を訪問すると初めに担当者がアサインされ口座の書類を整えると、リスクをどの程度とるつもりがあるのか投資方針の確認をしてきた。「リスクはあまり取りたくない」と回答した

・リスクを少なくするにはポートフォリオをどう組むべきかなどの話はなく、その後いきなり売れ筋商品の話に入った

・その後はしょっちゅう電話勧誘があり、リスクの大きな商品を躊躇なく薦めてきた

・セミナーの案内も定期的にあり、その場でも結局リスクの大きな商品を薦められた

・挙句の果てに全部で3千万円の投資額なのに、東電の債券を1千万円勧誘してきた

  私はこうした日本の証券会社の営業姿勢について、株屋といわれた時代のDNAがそのまま残っていてぬぐいようがない、と思わざるを得ません。

  Aさんはシロウトで実は商品のリスクの大小も私がコメントとして後付けしているだけで、ご本人ははっきりとは理解していませんでした。一番問題なのは、それすらわからないAさんに向けてリスクの高い商品を見境なく薦めることです。

薦めてきた商品も振り返りますと、特に強く薦めてきたのは

① 毎月配当型、高格付け外貨建債券ファンド

② 新興国株式ファンド

③ 通貨選択型ハイイール債券ファンド


  その中からAさんは①の高格付け外貨建債券ファンドだけに投資をしてあとは様子を見ています。君子危うきに近寄らず、を実行しているAさんは、「きっと新興国は海千山千だろう」、「通貨選択型ハイイールド債は理解不能なのでやめておいた」とのこと。実に賢明な選択だと私は思います。実際のそうした商品のパフォーマンスも、たった1年で大きく下落しています。

  ではどうして①の高格付け外債ファンドには投資したのか理由を尋ねますと、「高格付けならリスクはなさそうだし、配当が魅力的だった」とのこと。このファンドがどのファンドか、おそらくみなさんなら見当がつくと思いますが、そのとおりです。敢えて名前は申しません。この約1年間のパフォーマンスは配当を含めても、若干のマイナスで留まっているそうです。

  そうですよね、もう下がりようがないほど価格は下がっていますからね。これだけの金利低下局面でも価格が上がらない、しかも円ドルレートもこの1年はほとんど動いていません。純資産がどんどん少なくなっているのはこのあたりに理由があるのでしょう。

  ここで大事なことを申し上げます。

  私がこれまでみなさんにお薦めしている債券投資と、債券ファンドへの投資はリスクが全く違います。そのことについては後ほど詳しく説明しますが、一言で言えば、「生の債券投資は買った時に償還までの利回りが確定しますが、ファンドは価格の変動に翻弄される」という違いがあるのです。
  償還のあるファンド(運用年限が決まっている)を買っても、リスクは普通のファンドとほぼ同じです。現在のような世界的低金利時代は、債券ファンドへの投資は注意を要します。ここまで下がった金利は、そのままか上昇するだけだからです(金利の上昇は価格の低下)。買ってもいいファンドは『高格付け、かつ短期債』のみに投資するファンドだけです。


  ではいったい、今後Aさんはポートフォリオをどう組み立てたらよいのでしょうか。そのヒントになりそうなポートフォリオの代表例をいくつか見ながらポートフォリオの組み方について勉強していくことにしましょう。

つづく
コメント (1)
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