ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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初歩の投資教室 その13 ポートフォリオの組み方、その2

2012年09月22日 | 初歩の投資教室
前回の記事では、証券会社の言うモデルポートフォリオがどのようなものか、例を挙げて説明しました。

「リスクをあまり取らない」方針としたのに、お薦めは

預金;10% 国内債券;35% 国内株式;35% 外貨建資産;20%

 元本リスクのない預金と国内債券が45%、価格変動や為替変動のリスクを取る資産が55%という結果でした。しかも実際の投資対象は投資信託のみのため、債券も価格変動リスクにさらされっぱなし、ということになります。


 では証券会社を離れて、その他の例を見てみましょう。

私の本に書評を書いてくれた経済評論家の山崎元氏のお薦めをみてみます。

  週刊ダイヤモンド誌にコラムを持つ経済評論家で、私は日本の資産運用アドバイスの第一人者と思っています。山崎氏が12年6月のコラムに退職金3千万円の推奨アロケーションを書いていました。内容をそのまま引用しますと以下のようになります。

  3千万円のうちからまず元本がマイナスにならない超安全な資産に6割の1,800万円を置きます。すると退職後30年間、毎月5万円ずつ取り崩すことが確保されます。投資対象は8百万円の預金と1千万円の個人向け日本国債、10年物です。

  残りの1,200万円は、リスクを取った運用を行います。半分の600万円を国内株式、あとは300万円の先進国株式、300万円の新興国株式です。いずれもインデックス投信ですので個別銘柄の検討は不要ですし、手数料を低く抑える工夫がなされています。

  山崎氏の「お薦め」をまとめますと、3.000万円の配分は
   
預金800万円、個人向け国債1,200万円、国内株式400万円、先進国株式300万円、新興国株式300万円

安全資産に67%リスク資産に33%で、外貨建は全体の20%という比率になります。

  先ほどの証券会社のお薦めと比較してみます。

証券会社;預金;10% 国内債券;35% 国内株式;35% 外貨建資産;20%

山崎氏;預金;27% 国内債券;40% 国内株式;13% 外貨建資産(株式);20%


 山崎氏のお薦めは、超安全で元本が確保された資産に3分の2を置くので、「退職金の運用はリスクをなるべくとらない」という原則に即しているようです。

 そして30年間、毎月5万円ずつ取り崩していける、という実用的アドバイスを含んでいます。公的年金の将来に不安を感じる方には、もってこいのアドバイスです。

  しかし私は少し不安を感じる部分もあります。それは、超安全資産の次に国内海外を含めいきなり株式となり、相当なリスクを取るポートフォリオになっていることです。3分の1ならまあいいか、という気がしないでもないのですが、中間的リスクである外貨建ての債券は投資対象に入っていません。

  昨年、私の本が出版された時の山崎氏の書評のタイトルは、「米国債で投資の基礎を固める」というもので、安全な外債に投資の基礎を置くということに一理も二理もあるというニュアンスでした。どうもそのコラム記事は忘れてしまったようです。

次回はさらに別のモデルをご紹介します。
コメント (2)
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