ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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初歩の投資教室 その2

2012年08月06日 | 初歩の投資教室

  個人の投資の実態は、なかなか中身を見ることができません。証券会社は決してそうした実態を公表したりしませんし、ネットで調査結果を検索しても見当たらず、投資をテーマにしているブログでも、損した話を積極的に公開する人はあまりいないでしょう。

  ですので前回みなさんにお示しした調査結果はとても貴重な情報だと思います。みなさんがもしなんらかのデータをご存知なら、是非私にもお知らせください。

  そうした調査結果がなかなかないということは、どう解釈したらよいのでしょう?

『大多数の人が負けているので、あまり公表したくない』
と解釈するのだ妥当なのかもしれません。官民をあげて、『貯蓄から投資へ』とか、様々なプロモーションが行われました。成果があがっていたらもっともっと宣伝するはずですし、勝った人は他人に言いたくなるのもです。

  では次に、私が直接聞いている範囲での情報についてです。いままでアドバイスを差し上げた方の損益について、もちろん名前も属性も何も伏せてですが、ちょっと例を挙げてみます。なるべく投資タイプの違う方を選んでみました。

Aさん、数年前に退職金を得て投資を開始
大手証券会社のアドバイスに従い3千万円程度を4種類の投信と少数の個別株式を中心に投資し、ことごとくマイナスで、全体でおよそ3割程度の損失になっている

Bさん、リタイア生活20年、貯金のほか総額一億円程度の運用をしていた
株20数銘柄、オフショア海外ファンドに投資。株は多少利益を出したものもあるが、8割方の銘柄・投資先が損失。平均で3割程度のマイナス。オフショア海外ファンドは破綻して97%もの損失。外貨建債券投信が配当考慮後で2割の損失。過去の損益は不明部分が多いのですが、株のポートフォリオの現状とファンドの結果をまとめると5割近い損失になっている

Cさん、リタイアして1年半、退職金の半分程度1,500万円で投資を開始
  株式ファンド、新興国ファンド、毎月分配型債券ファンドに投資。ほとんどが1割から2割のマイナス。毎月分配型ファンドについては、最近計算してみて初めてマイナスに気が付いた

Dさん、現役で働いているが余裕資金8千万円ほどを投資、経験10年
2割を外貨リンク建て仕組み円預金1年物(利回り2%程度)、3割を外債投資(長期固定で3%程度、為替は若干のマイナス)、3割を海外株に投資(為替含めマイナス2割)、仕組み預金から米国REITに移行(プラス数%)

Eさん、現役で働いていて、1年前から300万円ほどを投資
  外貨建て投信2種類に投資し、配当は再投資に回して年に5-10%の利益が出ている

  代表例はこんなところです。上記以外の方でサンプル数が多いのは私の同世代、つまり団塊の世代でAさんと同じような例です。そうした例をまとめると私の実感として

『投資をしている方はほ8割方が負けていて、平均的に3割くらい損失が出ている』
となります。

  講演会で勝ち負けだけ単純に手を挙げていただいた結果も、およそ2割の方がプラス、8割の方がマイナスという感じです。しかしこれは、儲かったことを直接わかる形で人には言いたくない、というバイアスがかかっているかもしれませんので、割引いておく必要があるかもしれません。みなさんの周囲の方の結果はいかがでしょうか。

  
  ではいったい何故そんなことになったのか、またそうならないためにどうしたらよいのか、ということについてじっくりと考察してみることにしましょう。これが将来のヒントにもつながると思いますので。

  ここでの考察の対象は私の直接聞いている狭い範囲でなく、初めに挙げた1千人のアンケートを対象にします。300万円以上を投資し、投資額の平均が1,775万円でしたが、結果は

1 投資家の7割は通算損益でマイナス。通算損益平均額はマイナス525万円。
2 投資信託の平均損益率はマイナス30.7%。
3 株式投資家の7割は失敗し、半値以下に。
  
というものでした。

アンケート結果による投下資金の平均は、1,800万円程度です。この数字、結構おおきいですよね。大半がリタイア世代の資産運用なのでしょう、なにしろ日本では金融資産の大半をリタイア世代が保有しているのですから。

つづく
コメント (1)
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