ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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あれから10年ですね

2021年03月10日 | ニュース・コメント

  テレビをつけると東日本大震災の10年の回顧番組が多く、あの時のことが甦りますね。みなさんもあの当日のこと、そしてその後被害状況が明らかになり、毎日死亡者数が増えて行ったことなどよく覚えていらっしゃると思います。その後に続く原発事故はさらに衝撃的でした。

  私は地震のとき、家から3㎞ほど離れた大型小売店の2階にいました。最初の揺れの瞬間にこれは大きな地震だぞと思い、すぐに階段の方に向かって走り、手すりをつたいながら一階に下り、建物は新しいので倒壊はなくともガラスの破損が心配だったので建物から離れて安全を確保しました。ビルは低いビルだったためガラスの破損などもありませんでした。

   駐車場の車に戻りラジオで地震が東京とは数百キロも離れた東北地方の沖合が震源地であることを知りました。それにしては東京もいままでの一生で経験した地震でも最大級だったので、さぞ大きな地震だろう。そして沖合となれば津波も心配だと思いました。そしてすぐに丸の内の高層ビルで働いている家内が心配になり電話をしました。早かったせいか電話は通じ、「高層階でゆったりと大きな揺れが続いていて、気分が悪い。そして電車も止まっているだろうから車で迎えに来て欲しい」とのこと。車でいくのは避けるべきだとわかっていましたが、渋滞覚悟で水とスナックを用意して車で都心に向かいました。ついでに日比谷で働いている娘もピックアップしようと思い、連絡を試みましたが、無理でした。

  世田谷区の家から脇道だけを使って山手線の内側までは比較的容易にたどり着いたのですが、そこからは動きが止まり、相当な脇道でも渋滞していて、日比谷に到着したのは3時間後の夜7時くらい。電話が通じないため直接18階のオフィスまで階段で登りたどりついたのですが、娘は外出しましたとのこと。その頃にはショートメールだと通じるということがわかったので連絡すると、彼女は仲間と一緒に食べたり飲んだりして電車が動くのを待つとのこと。後で知ったのですが、それが結構正解だったそうです。

   日比谷から丸の内は歩いても10分くらいなのに、到着は8時くらいになりました。無事ビルの下で家内と会うことができたのですが、気分の悪さが続いていてすぐに車に乗るのは厳しいとのこと。もともとバスでも酔うたちなので、高層階にいて長周期振動で20分も揺られたため、かなり憔悴していました。しかも都心から郊外へ向かう道路の渋滞はとてもひどく、ほとんど動いていない状態でした。そこで覚悟を決め、飲食店を探し休むことにしました。東京駅の反対側、八重洲で深夜まで営業している焼鳥屋を見つけて、やっと休むことができました。10時ころまで食べて休み、意を決し渋滞にはまりに行きました。それでもなんとかその日のうちに家にはたどり着きました。往復7時間のドライブでした。

  その間情報はラジオだけでしたが、刻一刻と地震もさることながら津波の被害のひどさが伝わってきました。どこの街が全部流されたとか、津波は一度だけでなく何回も往復して襲い、範囲は千葉県沖から青森県あたりまでだという規模の大きさに驚かされました。

  家にたどり着いても気が高まっていて寝ようとも思えず、被害の様子を伝えるテレビを見続けました。テレビにはどんどん新たな動画が映し出されました。多くの人々が携帯やカメラで動画を撮っていて、それらが取り上げられるためでした。ニュースの取材陣だけでなく、現場にいたすべての人がレポーターになった最初の大災害だったかもしれません。そしてその日以降はすべての報道が大震災と大津波の被害に加えて原発の動向一色になりました。

 

  10年目となった今週もその時に撮られた動画がたくさんテレビで流されています。命を落とすかもしれないギリギリの場面にいながらもそれを記録しようとする普通の人々によって多くの貴重な記録が残されました。

  今後もそうした記録を大切に教訓として次世代に残し、大災害が起きても被害を最小限に食い止めることができることを祈ります。

 

  私はその時期が最初の出版と重なっていました。そしてある出版社とバトルを繰り広げていたのです。私のドラフトを読んだ大手の出版社の編集長が是非出版したいと言ってくれたので、喜び勇んでドラフトの文章を校正するミーティングを重ねていました。ところがあと1か月で最終稿に仕上がるという段階で、「林さん、アメリカっていう国は、あなたの書いているほど強い国でも安全な国でもないし、米国債だってデフォルトする可能性はある。それを加味して安全であるという部分を削除してくれ」と言い出したのです。

  私は「米国債を安全だから薦めています。米国が安全であるという説明部分を省くことなど絶対にできません」と反論しました。それでも相手の編集長は譲りません。すると、「あんたはね、初めて出版するシロウトなんだから、編集者の言う事はすべて聞き入れろ」と迫って来ました。さらに、「世間に名の知れた作家や評論家だって編集者の言う事はすべて飲むのが当たり前の世界だ」とまで言うのです。

  そうしたバトルを続けている真最中に大震災が起こりました。その後も私は編集長に負けずに突っ張ったため、その出版社での出版は取りやめになりました。それを拾ってくれたのがダイヤモンド社です。名もない元バンカーが書いた原稿を、全くのコールドコール、つまり誰も知り合いなどいないにも関わらず、メールで送りつけた原稿に目を通し、「これは面白い」と出版の意向を示してくれました。

 

  そして初顔合わせで先方が言ったのは、「編集部の部員みんなで読み合わせしたところ、だれもが米国債を買うぞ、と言い出した」ということでした。やはり経済金融に強い出版社だけあって、打てば響くという反応でした。

  それから出版までは実にトントン拍子でした。わずか4か月で本に仕上げてくれました。私を担当してくれた編集者の方が言ってくれたのは、「林さんの文章はプロの物書きよりも読みやすい。初めての方の文章は、ほとんどすべてのパラグラフで直しが入るものですが、それがほとんどありませんでした。」と言われ、とてもシロウト著者としてとても安心したのを思い出します。

 

  それから10年近くたち、つぎの本の出版をやはり別の大手の出版社が取り上げてくれることになったのですが、それがなんとコロナ禍と重なり、延期になってしまいました。

  私が出版しようとすると、世の中でろくなことが起こらないようですので、しばらく自粛します(笑)。

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4 コメント

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デフォルト? (たまち)
2021-03-11 13:33:37
米国債がデフォルト!経済オンチのメディア関係者の傍若無人ぶりにはあきれるばかりです。
アメリカのすごさ、林さんにいろいろ教わり、私自身の視野が広がるにつれて、今ますますそれを実感する日々です。
コロナで最も手痛くやられた大国でありながら、ワクチン開発も接種も世界トップのスピードと技術で進み、1.9兆ドルの追加支出は、さながら試合を決めるサヨナラホームランのよう。今年の成長率予想は6〜7%と、80年代以来の経済繁栄を再び手にする勢いと言われています。しかも、ここで目をみはるのは、アメリカでは市場に流れ込んだ緩和マネーが、がっちりと新技術をビジネスとして形にする力になっているということです。SPAC上場なんかには賛否はありますが、私自身はそれでもアメリカの市場ダイナミズムはすごいと思います。いずれGAFAに続く成長企業も現れてくると感じ、ワクワクしています。
長期金利、上がってきましたね。1ヶ月で0.5%上げるのは債券市場では歴史的な出来事だそうですね。もしよろしければそんなことに関するご見解もいただければうれしく思います。日経新聞等には、期待インフレ率が急騰したのでなく、実質金利が急騰したのであってあまり歓迎すべきことではないという記載もありましたが、FRBの長期見通しはやがて2%を超えていくコンセンサスのようです。じっと待っていれば、再び米国債の仕込み時期がくるものと期待しています。
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たまちさんへ (林 敬一)
2021-03-11 15:50:48
アメリカのすごさは数字で見れば見るほど実感できるようになりますね。

>SPAC上場なんかには賛否はありますが、私自身はそれでもアメリカの市場ダイナミズムはすごいと思います。いずれGAFAに続く成長企業も現れてくると感じ、ワクワクしています。

SPACはちょっとひどすぎます。
今後株式市場が大崩れするようなことがあると、真っ先に資金が流失しそうなのがSPACでしょう。まるっきり丁半バクチで、2年以内に合併上場できないとお金は返しますと言っていますが、いざとなると「ない袖は振れない」となるに違いないと思っています。
そんなものが数百もあること自体、まさにバブル症状でしょう。

GAFAに次ぐものとしてはすでにテスラがありますね。このところ株価が下落に転じていますが、それでも時価総額ですでに肩を並べました。しかも事業内容は時流より3歩くらい先を行っています。

>長期金利、上がってきましたね。1ヶ月で0.5%上げるのは債券市場では歴史的な出来事だそうですね。もしよろしければそんなことに関するご見解もいただければうれしく思います。

長期金利のことは「米国債は買い時か?」の記事で書きましたが、スピードが速いといっても、絶対的レベルはたかが1%台ですので、とりたてて騒ぐほどのことではないと思っています。

>FRBの長期見通しはやがて2%を超えていくコンセンサスのようです。

これはインフレのことですか、それとも長期金利のことですか。
FRBはインフレが「一時的に2%を超えても、すぐに抑え込むような反応はしない」と言っていますね。
相手は相場ですから、2%台が定着しかつさらに上昇を始めるくらいまでは「見てるだけ」を決め込むのではないでしょうか。

答えになっていますでしょうか。
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返信ありがとうございます。 (たまち)
2021-03-12 12:57:26
米国債市場のことについては、前回のブログで言及されていましたね。あとになって気づいたのですが大変失礼しました。
急変にはオプションなどが関係していること、それでも市場の流動性はとても高いこと、なかなかそのへんの感覚が報道等を読んでいるだけではわからないもので、大変参考になります。
SPAC、おっしゃるとおり危うい面も多々あると思います。ほとんどの企業はいずれ消えていく運命にあると思うのですが、でも一握りが残っていくであろうところに、日本と比較してのうらやましさを感じます。
テスラも実業でしっかり伸びているとみる見方と、資金調達の巧みさで時価総額が膨れているにすぎないとみる見方が分かれているようですね。日本のトヨタはテスラに時価総額であっという間に遠く追い抜かれました。莫大な資金があるということは、結局は強さにほかならないのではないかと思うのです。もちろんテスラはとてもいい車を作っています。日本でもよく見かけるようになりました。
2%というのは、いわゆるドットチャートのことでした。わかりにくい文章ですみません。
時折の書き込み、楽しみにしています。今後ともよろしくお願いいたします。
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たまちさん (林 敬一)
2021-03-13 14:11:37
どういたしまして。

2%はドットチャートでしたか。

ドットチャートはある一時点のFRBの見方として参考にはなりますが、実体経済の様子によって刻一刻と変化しますね。

私は本文にも書きましたが、もう少し早めの長期金利の変化を見ています。
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