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大統領候補TV討論会第1ラウンド、クリントン圧勝

2016年09月27日 | アメリカアップデート

  全米、そして世界が注目するクリントン対トランプの一回目のTV討論が行われました。討論の出来栄えによっては今後のアメリカ、ひいては世界動向を左右するほどの影響があるので、私も注目しています。

   市場関係者は「トランプの勝利など、市場は全く織り込んでいない」。

   ということはつまり、もし逆に彼が勝利をするとBREXITどころではなく、世界の金融市場が一瞬にして大混乱に陥るだろうということです。世界の株式は暴落し、ドルも暴落。これが一般的見方で、私も同感です。付け加えるなら、「しかしなぜか米国債だけは暴騰してしまう」、でしょう。

   今回の会場はNY州ヘムステッドのホフストラ大学という聞きなれない大学です。実は私の妻と大学で同期の仲の良い日本人女性が、この大学で教授をしています。彼女によりますと、「本日のキャンパスはいつもとは全くちがう異様な雰囲気で、千人もの報道陣と両氏の関係者が訪れ、セキュリティーも厳しく、全学が休講になってしまったと」のこと。学生はTV討論を会場で直接聞くことができるので、期待して待っていたそうです。

   共和党と民主党の大会のあと両者の支持率は10ポイント以上の開きになり、私はヒラリーの楽勝を予想して選挙戦のことをアップデートしなくなりました。両者の支持率がかなり拮抗してきた現在も同じスタンスで、心配していません。なぜ心配しないのか。

   理由は単純で、ブログでアップデートしていた時にみなさんに紹介した世論調査の集計サイトであるリアル・クリアー・ポリティックスを、より詳しく見ているからです。アメリカの報道も日本の報道も同じサイトを見ていて、数ある個別の世論調査結果を集計し平均値を出しているこのサイトを利用しています。

   私はサイトの紹介で、「重要なのは平均支持率ではなく、選挙人の獲得予想数だ」と申し上げていました。大統領選挙はあくまで選挙人の数で決まるからです。そして、同サイトにある選挙人獲得数のアップデート欄も紹介しました。

  選挙人の総数は538人、過半数は270人です。現在の予想数は、クリントンの188人に対してトランプは165人、未定185です。マスコミ報道で言われる「差はわずか2ポイントだ」というのは、かなりミスリーディングなのです。といっても選挙人予想も一時は250対120くらいだったので、差が大幅に縮んでいることは確かです。こちらもだいぶ接近してきているので、今後はまたアップデートしましょう。

   今回私はTV討論を見ていましたので、まずその第一印象からお伝えしますと、クリントンの圧勝でした。

   今回は3回ある討論の初回で、テーマは「繁栄の達成、アメリカの進路、安全の確保」です。各論点の両候補評価などは今後大いに報道されると思いますし、私は選挙のプロではありませんので、報道におまかせします。私は討論中の二人の言動、所作、心理状況をどう見たかについて、お伝えします。

   クリントン圧勝の評価は、そうした観点からは特に圧倒的だったと言えます。司会者はABCの優秀なコメンテーターで、二人は彼の指示に従い発言することになっています。まずテーマごとに2分ずつのスピーチをして、その後討論します。スピーチは耳で聞くことができるので、私の眼はしゃべっていない方の候補の所作に注目していました。

   まず、単純な統計から。

 その1.お邪魔虫

クリントンのスピーチ中にトランプが邪魔して割り込み、司会者が「今はクリントン氏の時間だ」ととがめたのは実に8回。そのうち1回は、クリントンが始めた途端にギャーギャー言いはじめたため司会者が止めに入り、クリントンが思わず笑いながら「時計を最初に戻してくださいね」というほどのひどいものでした。とがめられない程度の邪魔は最初はカウントしていたのですが、あまりの多さにやめました(笑)。

   一方、トランプ氏のスピーチ中クリントン氏が割って入り制止されたのは1回。制止されないほどの邪魔の数はたぶん30対1くらいでした。

 その2.回答はぐらかし

司会者は重要なポイントを両候補に質問し、両候補は答える義務を負っているのですが、それに対して全く答えずはぐらかしに入って、司会者が思わず「質問はこれこれですよ。こたえてください」と言われたケースは、トランプが3回。クリントンはゼロ。トランプの3回では、いずれもその後も回答はせず逃げまくっていました。つまり重要事項ではほぼクリントンがトランプをやり込めたのです。

その3.そわそわ

 相手のスピーチ中の所作もなかなかの見ものでした。トランプは都合が悪いことを言われると体が揺れ始め、みけんにしわを寄せ、肩をすぼめてマイクに向かい口をすぼめます。「Wrong」、のウをサイレントで言い誤りだと示唆するのです。

もし私と彼がポーカーをしたら、彼のハッタリなど簡単に見分けられるので、絶対に勝てます。名前はトランプなのにね(笑)。

 そして不利になったことがもっとわかるのは、反論する時に声がどんどん大きくなって、子供がウソの指摘をかわそうとするのと同じように体まで大きく揺れることです。

それに対してクリントンは正々堂々と構え、全くスキを見せませんでした。あえて厳しく見ますと、相手が必死の反撃をしているときにも笑みを浮かべ、ちょっと顎が上がってアロガントに見えたことでしょう。

   これらの分析と討論内容の勝敗点数をつけるなら9:1でクリントンの圧勝と私は見ました。

  CNNにはすでに1回目の世論調査結果が出ていて、見出しは「第1ラウンドはクリントンの勝利」。テレビを見ていた人の判定カウントは、62:27でクリントンの勝ちでした。

 今回のコメントはここまでです。

コメント (1)
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