ベーシス・スワップの説明、かなりわかりづらいと思いますが、およそでもご理解いただけましたでしょうか。
さらに追加説明をしようと思っていたところ、ちょうどある方から以下の2つの質問がきましたので、それに沿って解説します。それぞれの答えは実は同じ理由からですので、2つ一度に回答することにしました。以下をご覧ください。スワップの本質的意味がかなりわかると思います。
Q1. 外銀との円・ドル スワップによるドルの調達において、常時プレミアムの支払いが必要だとしたら、単純な外為市場での調達よりコストが高くなりますよね。それでも敢えてスワップという手法を選択するメリットは何でしょうか?
Q2. スワップ契約期間の5年が経過した時点で邦銀はドルを全額返済しますが、その際のドルの調達コストのリスクはどうやってカバーするのでしょうか?
上記の2点は、実にもっともな質問です。理由が同じですので、一度に解説します。
そもそも銀行は為替のリスクを100%回避するためにスワップをしているのです。外為市場で買ったドルを企業に貸し付け、最後に企業から返済を受けたドルを売るのでは為替リスクの丸取りで、為替投機と同じです。銀行はそのような野蛮なことはせず、もっとスマートなビジネスをしています。
スワップは当初も最終決済時も元本額が決められますので、為替変動リスクはないと説明しました。いまいちど確認します。最初は100億円と1億ドルを交換し、最後も同額の1億ドルと100億円を交換することを約束します。説明書きにあるように、為替レートのいかんにかかわらず決めた額の交換をするのです。5年後に返済するドルはどう調達するのかですが、それと同じ問題は5年間続くドル金利の支払いにも言えます。
これはとても簡単です。1億ドルを貸し付けた企業からドル金利を毎年もらい、最後も元本を1億ドル返済してもらうだけです。つまり邦銀にリスクはありません。邦銀は金利差の0.5%を儲けるだけなのです。
ということは、実は邦銀は外銀と企業の間で金利差だけをいただいてスルーする仲介者に近い存在なのです。
「じゃ、外銀が企業に直接貸せばいいじゃないか」
という話になります。外銀はスワップを組めるほど信用ある大手邦銀のリスクは取れても、わけのわからない日本企業のリスクは取れないので貸しません。
邦銀ならそれができます。邦銀の0.5%の儲けの源泉は、勝手知ったる貸し付け相手企業のリスクを取ることにあるのです。そしてスワップを使い、企業のクレジット以外の為替や金利変動のリスクはすべてスルーしてしまう。それこそがスワップの本質であり、銀行ビジネスの本質です。
ここまでご理解いただけましたでしょうか。
では前回までのおさらいを簡単にしておきましょう。
まず著書を引用しながら、金利とは何か、という説明をしました。私の考える金利とは「投資に対するリターン」で、それが「低下しているのは成長力が弱くなった証拠」であると説明しました。
そうした弱さは為替レートなどには見えにくいのですが、「ベーシス・スワップという極めて専門的な市場のスプレッドに現れた」。
その「スプレッドが1%というような大きさに至ったため、海外勢はその分資金調達コストの低下を享受することができる」。それが当初の疑問「マイナス金利でも運用益、何故?」に対する答えだということでした。
さらに今回は銀行ビジネスの本質とは、リスクを極力回避して儲けることだと申し上げました。スワップを利用してスプレッドを抜くことだけに徹すれば、儲けは少ないが、損失も少ないのです。
次回は「マイナス金利に投資する意味があるのか」について書いて、このシリーズを終えます。