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日本財政の問題点ーー2

2015年04月03日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

昨日のサプライズ。

   政府、経団連、連合などが政労使会議を開催し物価を上げるために談合をしました。名目は「経済の好循環をつくるため」とありますが、実際には国を上げての談合です。日経新聞のまとめによれば政府の対応とは、

・価格転嫁の好事例を盛り込んだ取引指針策定

・指針から外れた企業に行政指導

・15年度上期に大企業500社に立ち入り検査

 

  これって中国共産党よりひどいやり口だと思います。政府が主導すれば談合もOKとなれば、そのうち労働者全員の賃金を2%上昇させ、価格もすべて2%上昇させ、挙句の果てにそれを消費税2%の増税でふんだくる。そして年金生活者だけが泣きをみるってことになりそうです。これを首相自らが会議に出て行って音頭を取る異常さに対してさしたる反論も出ない。おめでたい日本の行く末がますます心配です。

   さて、私のシリーズ記事は財政問題に入りました。ところが政府は財政問題はそっちのけで「政治の季節」入りしています。防衛問題や憲法改正問題を正面に据えて議論を沸騰させ、あまり芳しくない経済問題や本当は正面から取り組む必要のある財政問題を忘れさせる作戦に出ているように思えてなりません。


   前回は借金は全部返す必要はないというお話しの最初で、「優良企業は貸し手の銀行にとっても優良なことに変わりはなく、かなりの低金利であっても安全性が高いため銀行は借り続けて欲しいと思っている」というお話を差し上げました。そしてそれは日本やアメリカの政府にも言えることだ、と申しました。

   日本国債は危ういと思っている方が多いので、この議論には違和感を感じるかもしれません。しかしアメリカ国債について世界の投資家は「何度でも借り換に応じてあげるから、発行を続けてほしい。金利だけしっかり払ってくれれば返済などしなくていい」と思っています。

   そしてさらに私は「この考え方の延長線上にあるのが、償還期限のない永久債で、長期の投資家は超安全な債券であれば再投資の心配のない永久債への投資も十分に魅力的なのです」とも書いています。

   償還期限のない永久債、もしくは最近海外で発行されている50年債や100年債などはこうしたことが理解できると決しておかしなものではないことが理解できると思います。日本国債もすでに40年債まで発行されています。現在の金利はわずか1.4%ですが。

   ここまでは投資家サイドから債券をどう見るかという視点が中心で書いています。その裏には当然、先進国共通のカネ余りがあります。投資家側がカネ余り状態であれば、発行体はそれに乗じて借り換えリスクのことを考慮しなくなるのです。プライマリーバランスさえ達成できればそれでいいというのは、この考え方の延長線上にあります。今回はそれを説明します。

   プライマリーバランスとは何かおさらいしましょう。この6月には安倍政権が財政再建計画を策定する予定ですが、この言葉を理解しておかないと何のことかわからない恐れがあります。

   まず本当の収支均衡とは   歳入総額―歳出総額=ゼロ

 

   プライマリーバランスとは   歳入総額―歳出総額のうち国債費を除外=ゼロ

 

国債費とは国債の金利費用と強制償還額です。上の式は国債費を除いて歳入と歳出がバランスしていれば、それで収支均衡とみなすということです。

   これを数字で見てみましょう。日本の15年度予算は歳出総額が96兆円です。そのうち国債費は23.5兆円です。ということはプライマリーバランスとは、「歳出のうち4分の1も占めている国債費23.5兆円はなかったことにすれば、バランスしてるでしょう」ということです。

   そんなバカなですよね。でもこれがプライマリーバランスの意味です。もし政府が6月に策定される財政再建計画で「プライマリーバランスが達成できる」と言ったら、笑ってあげましょう。(それも笑でなく爆です)

    15年度予算をおさらいしますと、歳出総額96兆円に対して、税収など歳入総額はわずか59兆円です。そのうちまず黙って23.5兆円も持っていかれ、残りは25.5兆円しかない、それが日本国の財政の実態です。

   しかも困ったことにこの国債費は他の経費をどんどん削減できたとしても、ビタ一文削減できない費用です。

 つづく

コメント (5)
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