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FRBのサプライズ

2013年09月23日 | ニュース・コメント
  旅行に行く前のブログでは、次回は「オリンピックの影響について書きます」と申し上げていました。忘れてはいませんよ。しかしこのところ次期FRB議長の人選問題と先週のFOMCの結果がサプライズとなっていますので、今日はそのことについて私のコメントを書くことにします。

  まず彷徨さんからこの2つの点に質問というか、私の趣味の一環として(笑)予想のリクエストをいただき、私は以下のように回答しました。

>私はこうしたことにあまり確たる予想はしないのですが、FRBの出口へのステップは始まると思っています。今回なくても次回には。

>次期議長候補はサマーズだと新聞辞令が出ていますが、まあそんなところかと思う程度です。イエレンかサマーズか、エコノミストや報道は騒ぎ立てますが、経済・金融市場の客観情勢からすると、いずれが議長になってもそれ程違う政策などないと思うからです。


いい加減な回答ですみません。

  先週から今週初めの相場はそれらを材料に多少忙しく動きました。しかしNYダウでいえば先週の初めと終わりではレベルはほとんど一緒です。「FOMCで緩和が先送りされた」のニュースに一応歓迎の反応は示したものの、週末にはその分くらい下げて、元の黙阿弥に戻っています。
  米国債10年物金利は先週初めが2.8%台だったものが若干買われて2.7%になり一応敬意を表していますが、1週間での変化として0.1%は大きな変化とは言えません。
  円ドルの為替も多少上下はありましたが結局99円台であまり変化していません。日本株だけは400円程度上昇していますが、NYの週末の下げを見て本日月曜日が休みですので、火曜日はどうなるか。

  とまあ、こうしたニュースは瞬間的には「サプライズ」となり各相場は反応するものの、長い目で見るとファンダメンタルズに本格的に影響があるわけではないため「行ってこい」になるケースが多いのです。

今回の場合長い目で見るということは、

・議長が誰であれ、政策の裁量余地は大きくない

・FOMCもいずれは緩和を縮小する


というような長期的視野に立つことを指します。

  株屋さん達はエコノミストを含めて株価が動く材料探しに余念がないため、こうしたイベントを大きな材料として騒ぎ立てるのです。そして予想がはずれると批判を始めます。「バーナンキは市場との対話がなってない。5月に出口を考えると言ったじゃないか」といった具合です。彼は5月に出口について触れていますが、9月と言ったのは株屋さんと報道です。私にはこうした批判も、むなしい言い訳にしか聞こえません。

  私がいたソロモンブラザーズという投資銀行には、80年代に金利の神様と言われたアナリストがいました。ヘンリー・カウフマンという人です。その人の金利予想はかなり当たって、当時は「神のご託宣」とまで言われました。その時代、ソロモンの米国債トレーダーは莫大な利益を上げ続けたのです。

  当局はそれに目を付けて、「きっとトレーダーはあらかじめカウフマンからご託宣を聞きこんで先回りしているに違いない」と見込み、捜査に入りました。しかし結果はシロ。何故だかわかりますか?

  トレーダーは相場の正反対を行ったのです。つまりカウフマンが上がると言って相場が上がったらそこで逆張りをして売り、下がると言って下がったらそこで買う。決して相場の先を行ったのではなく、相場の行き過ぎだけを読んで逆張りをして儲けていたのです。

  もちろんこうした戦法はいつでも通用する戦法ではなく、本格的に大きな転換点となる場合には通用しないかもしれません。大きな転換点とはやはりファンダメンタルズに大きな変化がある場合でしょう。

  みなさんも是非株屋さんたちの出す雑音に振り回されず、じっくりと長い目で相場を見るようにしてみてください。
コメント (18)
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