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2013年からの資産運用 その6、 銀行預金はどうなるか

2013年02月14日 | 2013年からの資産運用
 「銀行預金は銀行がつぶれなければ大丈夫なのか」それが今回のテーマです。

 それを考えるために、日本が財政破綻したらどのような状況が想定されるかを見ておく必要があります。特に金融市場の様子を中心に見ましょう。

 国債の暴落により銀行が破綻の危機に瀕し取り付け騒ぎになると、日銀がどこまでも銀行に資金を出し続けて救済する、と申し上げました。

 日銀はそれと同時に、国債の暴落を少しでもくい止めるため既発債を市場から買いまくります。また政府が必要資金を調達するために新規に発行する国債を引き受けることになります。暴落する国債に投資する投資家がいなくなるためです。

 国債発行額を確認しますと、今年度も来年度も国債発行は170兆円にもなります。繰り返しますが、予算上の発行額44兆円だとか40兆円以内だとかは、新規の積み増し分だけで、発行額全体の規模を覆い隠す目くらましの数字です。

そして、当然海外のヘッジファンドがここぞとばかりに国債の先物を売るので、それに対しても日銀は買い向かう必要があります。

日銀の大活躍をまとめますと、

1.預金引出(取り付け)に対応するため、銀行に無限の資金供給をする
2.国債市場の暴落をくい止めるため、市場で既発国債を無限に買い続ける
3.ヘッジファンドに対抗し、国債の先物市場で買いまくる
4.政府の資金ニーズに応えるため、年に170兆円もの国債発行をすべて引き受ける


 こんなこと、ほんとにできんの?

私もできるとは思えないのですが、やる以外に手立てはありません。

 IMFやアメリカは助けてくれないの?

ではIMFや国際社会がどう日本を支援するのか見てみましょう。

 まずIMFですが、彼らは国内資金のニーズに応える機能は持っていません。日本は幸い今のところ対外債務はないので、IMFの救済対象とならないのです。こういうのを「幸い中の不幸」って言うのかな?IMFが韓国などを救済したのは、対外債務のデフォルトを避けることと、ウォンの暴落を食い止めるため外貨資金の供給を行ったのです。

 ヨーロッパは人のことなどかまっていられません。この先数年で欧州問題が解決し、人助けができるようになる目途は全くありません。まあできて通貨のスワップ協定を結んで、見せかけの支援をすることくらいでしょう。

 アメリカは?
日本を見捨てるわけにいかないので、IMFやもしかすると世銀まで巻き込んで、支援の音頭を取ってくれるかもしれません。しかしアメリカ政府も単年度の赤字が続いているようだと、議会が簡単に巨額の支援など許可しないでしょう。

 じゃ、IMFを含む国際社会は日本の財政破綻を手をこまねいて見ているかというと、日本発の世界恐慌の危険性を取り除くため、できる範囲の措置は取るものと思われます。

 しかしギリシャやスペイン、イタリアなどとは債務規模が1ケタ違うことと円の資金供給はほとんどできないので、救済措置は限られたものとならざるをえないでしょう。

 となると頼りは日銀だけです。しかし日銀が3つ大活躍をすると、円安とインフレがもれなく付いてきます。

 ここまでが、ざっくりと財政破綻で金融市場に何が起こるかの想定です。

 日銀による円の膨大な供給により対内的にはインフレを起こり、同時に円安となるので対外価値を失います。つまり結論としては、

「銀行が破綻しなくても、預金や現金で持っている円自体が対内的にも対外的にも価値を失う」

というのが私の見立てです。
コメント (5)
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