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2013年からの資産運用 その4、 個人資産の見直しをしよう

2013年02月06日 | 2013年からの資産運用

前回のお話はRさんの資産の想定でした。おさらいしますと、

金融資産;現預金1千万円、株式1千万円、投信1千万円の合計3千万円
不動産、持家あり; 時価3千万円
借金; なし。ローンは払い済みです
収入; 厚生年金年間240万円・・・25年とみて合計6千万円
払い済み年金保険収入予定、65歳から;毎年100万円・・・20年とみて合計2千万円

合計 いわゆる金融資産3千万円+不動産3千万円+予定年金8千万円
   総合計 1億4千万円

  年金を資産とカウントすると、大変な額になりますよね。みなさんも是非ご自分の年金額を計算してみてください。
このうち厚生年金は、国のリスクを取っているのと同じなので「擬似国債」と呼び、アベチャン・リスクを大いに抱えることになります。

  ではその他の資産のリスクがいったアベチャン・リスクをどの程度抱えているのか見てみましょう。

  まずはタンスにある現金は除いて、銀行預金です。

  銀行預金は1千万円までペイオフリスクから守られているハズです。しかしこの「ハズ」に「ハズレ」はないのか、チェックを要します。

  銀行やゆうちょは日本国債をしこたま抱えているので、実はアベチャン・リスクがかなりあるのです。

  このところアベチャンの国債増発をリスクととらえた動きが出ています。どういうことかと申しますと、銀行と限らず金融機関が長期国債の保有リスクに目覚め、保有債券の平均残存年数の短期化を図っている、という動きです。専門用語では、「デュレーションの短期化」と言います。

  債券は償還までの残存年数が長いと、ちょっとした金利の上昇にも敏感に反応し、価格が下がります。簡単な例で見てみます。同じ金利クーポンのついた2つの国債を想定しましょう。かたや7年、かたや2年です。

7年物国債 クーポン金利1.3%
2年物国債 クーポン金利1.3%


  市場の7年物金利が1.3%であれば、この7年物国債の価格は100です。価格が100というのは、実は100%ということで、発行時に払ったり、償還時にもらえる「額面」と同じだということを意味します。

  ところが7年の市場金利がインフレ政策の奏功により3%に上昇したとしますとこの国債の価格は約90%に、つまり10%下落するのです。計算方法は債券計算でかなり複雑のため省略しますが、おおよその考え方は前著に示してあります。

<重要な注!>
みなさんの参考のために、実は日本の普通国債の24年3月末の平均残存年数は7年、クーポンの平均利率は1.24%です。上記の例に近い数値です。アベチャン・インフレによる市場金利の上昇がたった3%への上昇でも、日本国債全体の平均価格は10%も下落し、ほとんどの金融機関の資本を吹き飛ばす威力を発揮します。

 では2年物はどうか。2年物金利が3%に上昇しても価格の下落はわずか3.3%ほどに留まります。

  このシミュレーションはどの銀行もしています。もちろん生保もゆうちょもしています。

  国債の増発に最も懸念を抱いて保有国債などの短期化を早々と進めたのは三菱東京UFJです。アベチャンよりずっと前、一昨年くらいから保有国債の短期化を進め平均年数は2年を切っています。

  他の都銀なども徐々に短期化を進めているのですが、遅れている銀行もあります。そして問題なのは、彼らが売っているということは一方で長期債を買っている投資家もいる、という事実です。

  最近保有を増やした外人は、そんな危ない長期債は買っていません。

つづく
コメント
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