岩手の頑固親父

恵まれた自然、環境に暮す 老農のつぶやき、ぼやき

「庭じまい」

2023-06-22 15:32:19 | いなか暮し

凡そ花巻地方の田植えは5月中~下旬には終わる。植えられた苗は順調に生育を続け、日増しに逞しくなり、分けつが進みそろそろ稲の体内では穂が作り始めるころになって、昼の間は木陰で昼寝をしていた鹿が夜になって田んぼに侵入して稲を食害する。 野にも山にも草がいっぱい生えているのに、なぜか稲を食べたがる。
 田植え直後から現れる鹿は学習能力も持ち合わせているんだろう、テープや糸を張ったり動物の嫌がる音を流したり鹿対策はあの手この手を尽くしているがすぐに慣れてしまう。可愛い顔をした憎い鹿である。

 「墓じまい」ならぬ「庭じまい」という言葉を新聞で知った。先祖から引き継いだ庭や、趣味で作って楽しんだ庭の手入れが重荷になった庭をかたずけてくれる庭屋さんもあるらしい。
 後継なり次の世代が興味を持って引き継いでくれればいいが、昨今、その風流を楽しむ人が少なくなったように感じる。興味がなければ親がせっせと手入れをしたとはいえ負担だけが残る。ましてや手入れをしない庭はすぐに荒れる。
 庭木の管理は梯子を使っての高所の枝切や剪定作業がほとんど、年寄りには危険でもある、切った枝の処理も問題、片づけに業者を依頼するほどの庭でもない、思い切って倅に相談したら異議もないらしい、手に余る木々からじっくり処理しようということになった。
 高木になり形も崩れてきて大木になってしまった”糸ヒバ”が「庭じまい」第一号。倒して年輪を数えたら60本ほど、根もびっしり張っていた、まだまだ成長する木だったに違いない。
 亡き父が植えて手入れをしていたことを思うと、少々のうしろめたさが残る。この夏はこの一本だけ。
 この先、植えてから100年も過ぎたもみじ、伽羅、つつじ・・・等々。心を鬼にして「庭じまい」ができるだろうか。

 この夏、たまたま福井の永平寺お参り旅行がある。
 ご先祖様が、せっかく庭木を植えて手入れをして作ってくれた庭を「庭じまい」をする、言い訳とお詫びをしてこよう。・・と思う。

コメント
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