くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「卒業ホームラン」徹夫について

2017-06-26 20:37:15 | 文芸・エンターテイメント
 息子が大会で、わたしの勤務校と試合をすることになりました。
 うちの生徒たちは優勝候補。息子はどちらかといえば運動が苦手です。わたしは一般生徒の引率で行ったのですが、実際にいくまでは表立っては勤務校の応援をしなければならないのだろうと思っていました。
 でも、実際卓球だと団体声援はほとんどなかったため、ギャラリーから見ていることができたし、うちの生徒たちも結構気にしてくれたので心穏やかに過ごせましたよ。
 ベスト4に残った生徒相手に、息子としては思った以上に粘って頑張りました。いい試合だったと思います。スコアはストレート負けですが、リードする場面もあった。三年生引退に悔いはないでしょう。

 長々と息子のことを書きましたが、こうやってみると、わたしはやっぱり徹夫が好きじゃないなと感じるのです。
 徹夫って、重松清「卒業ホームラン」の主人公です。中学二年生の教科書に載っていて(一部省略あり)、ちょうどこのころ授業で取り上げていました。
 少年野球チーム・富士見台クリッパーズの監督で、現在子どものことで悩んでいます。娘の典子はやる気を失って勉強しないし、息子の智は野球の技術がなくて試合に出せない。
 悩んでいる割には、チームの連続勝利のために智をベンチからも外すし、ぼろ負け確定すれば今日の試合なら出せたのにと後悔し、しかも、「この試合なら、智を出しても誰からも文句は言われなかった」とか(「文句」!)、「俺は智の父親として、この監督のことを一生許さないだろう」とか言って。
 ついでに指摘しておけば、典子が試合に来なかったときは「今日の試合だけは、見られたくなかった」なんていってる。見られたら、当然「頑張ったっていいことない」を証明してしまったと典子に思われちゃうからですよね。
 ラストでは「野球は、家を飛び出すことで始まり、家に帰ってくる回数を競うスポーツ」だとして、なんだか悩みも解消されていますが(智が「野球好きだもん」というから)、実際典子に何というつもりなのか……。
 生徒たちは、徹夫について、智をベンチから外したのは、やはり「負けず嫌い」だから勝利を逃したくなかったのだろうと読み解きます。
 野球部の生徒は、出してやるべきだと書いてきました。チームのためにこれだけ頑張った子を、出場させないまま卒業させるのはどうかと思う、と。
 クリッパーズのチームメイトたちはどう思っていたのでしょうね。教科書ではカットされているけど、彼らはもともと智の友達が多いんですよ。
 徹夫は、中学生で野球部に入っても、レギュラーは無理だと言います。途中で「もっとうまければ」と口に出して、嫌な言い方をしたと悔やむ場面がありますが、こっちの方がひどくない?
 わたしの「卒業ホームラン」の読み方は、偏っているでしょうか……。

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