くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「サンネンイチゴ」笹生陽子

2009-03-12 05:46:44 | YA・児童書
なかなか素敵な物語を読ませていただきました。笹生陽子「サンネンイチゴ」(理論社)です。
三年かけてようやく一つぶ実ったショートケーキ用のイチゴ。その三年はヅカちんにとっては暴力的な父親と別れて過ごした時期であり、アサミにとっては森下の勇気に感心した日々であり、「あたし」こと森下ナオミにとっては、自分のしでかした行動を忘れてしまいたいと考えるときだった、と思うのです。
三年たって、彼らの通う学校に流れた噂は、アサミが嫌いな教師の授業をボイコットしたため、ノイローゼになって退職したというもの。でも、ナオミは知っているのです。その噂についたオヒレをとれば、自分がしでかした失敗があらわになるのを。
古本屋に立ち入ったあとでサブバッグを盗まれたことに気づいたナオミは、助けてくれたヅカちんと親しくなります。彼が自分の斜め後ろの席にいるアサミの「彼」であることに気づくのですが……。
今どきこんな女の子がヤングアダルトの脇役にいるってありなのか? と思うようなヤンキー少女アサミ。金髪、ケンカ上等、大人にタメ口、意外に成績優秀で家は金持ちという設定です。結構情にもろくて感激屋ですし。
今まで自分とは違うグループにいると思っていた人と仲よくなり、その人のいろんな側面を知っていくうちに深い友情が生まれる。
立場が異なる人との共感とでもいうべきものが、笹生作品のテーマのような気がします。
「ぼくらのサイテーの夏」もそうだったし、文庫買ってまだ読んでないけど「楽園のつくりかた」も多分そういう話なのでは。
アサミたちと付き合ううちに、ナオミは自分が変わっていくのを悟ります。今まで見ていた町の危険な別の貌。同じように何も知らず何も考えずに甘えて自分勝手に生きてきた「あたし」。
端から見ると、ナオミは不良になったと思われるかも知れませんね。でも、ゆるぎない友情で彼らは結ばれているし、昔のナオミに比べて今は自分のことが好きみたいですよ。弟との関わりもよくなったでしょう?
中二の彼らは来年どうなっているのでしょうね。でも、一度壊されかけたイチゴの畑を直したように、関係ももとに戻ったのだから、きっと、イチゴもたくさん採れるように、実りあるものになっていくのではないかと思うのです。

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1 コメント

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Unknown (ミリオン)
2024-06-26 21:55:43
こんばんは。
ショートケーキは美味しいですね。食べるのが大好きです。頑張って下さい。今日の朝は、「虎に翼」の第63回を見ました。
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