くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「結婚失格」枡野浩一

2010-10-13 05:28:50 | 文芸・エンターテイメント
枡野浩一「結婚失格」(講談社文庫)でございますの。
かつて「かんたん短歌のつくりかた」がものすごくおもしろくて、それで「ドラえもん短歌」とか「GO city,go city city!」とか読んだんです。
で、この本の表紙を担当した南Q太にめろめろになってしまい、結婚。はーーこりゃすごいなと思っていたら、離婚してその顛末が赤裸々に書かれた私小説があるというではないですか。
当時は図書館にはなくて、ネットで買うほどでもないよなーと思ったのでそのままだったのですが、文庫化したので買ってみました。
読み始めてすぐに思ったのは、「人間失格」を意識して書かれているということですね。この作品の感想文など読むと、「人間に合格も失格もあるものか」というような主人公葉蔵を擁護するようなフレーズが出てくるものですが、わたしは「これはたしかに人間として失格だ」と感じたようなタイプなので、「結婚失格」も同じように感じたのでした。
しかしこれを、枡野浩一が意図して書いているんだったら、ものすごい天才です。妻側に離婚の要因がある。自分は何も悪いことはしていない。この表面上の言葉が、無意識の悪意とでもいいましょうか。流行りの言葉でいえば、モラハラなんでしょうね。
町山智浩氏による解説が秀逸です。作者にとっては不本意のようですけどね。でも、彼のいうように、酒も煙草も浮気もしないまじめな男がなんでAV監督なのか。主人公の速水は筆者を仮託した存在なんだけど、だったらもう少し設定を考え直した方がよかったんじゃないかと思いますね。彼のナルシシズムも痛い。
速水はシナリオライターの妻・香から、子育てと仕事で忙しいので週末以外は家に帰らないでほしいと言われ、仕事場に寝泊まりするようになります。しばらくするとそれが「もう二度と自宅には来ないで」になり、DVを理由に離婚訴訟を起こされる。
さらにすごいのは、なんとこれ、書評小説なのですよ。そのときに速水が読んだ本の感想が綴られます。例えば、グループ魂を聞きながら松尾スズキの「同姓同名小説」を読んだり、別れた妻を思いながら内田春菊の「もっと悪女な奥さん」を読んだり銀色夏生の「つれづれノート」を読んだりするのです。いやー、久々に思い出しました「Run魂Run」。
書評ですから、読みたくなった本もあります。大堀昭二「慰謝料法廷」(文春新書)、坂崎千春「片思いさん」(WAVE出版)、佐藤和歌子「間取りの手帳」(ちくま文庫)。
基本的に枡野浩一は、あまりけなさない人のように思うのですが、香の作品についての感想だけはかなりひどい。自己同一視の部分もあるとは思いますが、創作にあなたのそのねちっこい主観はいらんのではないの、と思ってしまうのです。
同時収録の「真夜中のロデオボーイ」、よくわかりません。
南Q太、三番めの旦那さんとの生活をエッセイにしていますよね。読んでみようかなー。

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