やっぱりトランプは世界の不安定要因であった。不動産王が大統領に就任すれば、どこかピントがずれてくるのである。誰が猫の首に鈴を付けるかだが、古希を過ぎた人間が生まれ変われるわけはなく、安倍首相に期待してもなかなか難しいのではないだろうか▼夏目漱石の『草枕』の一文を思い出してしまった。「緑はうつくしかろ、孝もうつくしかろう、忠君愛国も結構だらう。然し自身が其局に當れば利害の旋風に捲き込まれて、うつくしき事にも、結構な事にも、目は眩んで仕舞ふ。従つてどこに詩があるか自身には解しかねる」と書いていたからだ。当事者であることから抜け出し「三者の地位」に立つことの必要性を説いたのである。「自分の利害は棚に上げて居る」のでなければ、詩人にはなれないというのだ▼トランプは商売人であることを断念して、公の立場に自らを置くべきだろう。「三者の地位」の意味を理解できないようでは、超大国アメリカの指導者として失格である。政治が個人的な「利害の旋風」に巻き込まれるようでは最悪である。商売人であれば情報の大切さを知っているはずだ。それを利用して金儲けはいくらでもできる。トランプのことを全面的に否定するつもりはないが、アメリカファーストというよりも、自己中心主義のように思えてならない。そこからトランプ自身が脱却しなければ、世界の危機はより深刻なものになるだろう。
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