語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】国家戦略特区で起きた肝移植問題 ~神戸~

2015年10月24日 | 社会
 (1)国家戦略特別区域諮問会議(議長:安倍晋三・首相)が東京圏、関西圏など6区域を国家戦略特区に指定したのは昨年3月だ。を
 「関西圏」に属する神戸市は、さっそく資料「神戸市の国家戦略特区事業について」を発表し、まだ開院していない民間病院「神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)」を紹介している。
 <世界的な生体肝移植の権威である田中紘一郎先生が理事長を務める「神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)」病院(26年10月開院予定)において外国人医師を受け入れ、神戸周辺で働く外国人研究者・ビジネスマンなどに対して医療を提供する>。
 理事長兼院長に就任する田中医師が「元京都大学病院長」として写真入りで紹介されていた。

 (2)2014年11月に開院すると、KIFMECは積極的に生体肝移植手術を実施した。健康な人を臓器提供者(ドナー)とし、肝臓が悪い患者に肝臓の一部を移植する手術だ。
 ところが、わずか半年足らずの2015年4月、専門医らをメンバーとする日本肝移植研究会から手術中止を求められる事態に立ち至った。
 この時点でKIFMECは、8人に移植手術をしたが、このうち4人(2人は子ども)が術後わずか1ヶ月程度で死亡した。
 日本肝移植研究会は、医療体制が十分でない、と調査報告書で警告し、3人の死亡患者は究明できた可能性がある、とも指摘した。
 KIFMEC側は、「最善の努力を尽くして診察を行ってきた」と反発。逆に調査の手法を批判した。
 専門医同士の対立が解けないまま、KIFMECは一時中断した生体肝移植手術を6月3日に再開し、翌々日に患者が死亡する、という経緯もあった。

 (3)一方、この過程でKIFMECの別の顔が浮かびあがった。
 KIFMECがインドネシアの病院で関わった生体肝移植でも3人が術後1ヶ月程度で死亡したことが判明。この手術は、「医療の海外展開」を掲げる経済産業省が支援する事業の一環だった。
 事業費5,900万円のうち3,300万円がすでに支払われていた。じつは、KIFMECの日本での手術後に死亡した患者4人(のちに5人)のうち2人がインドネシア人で、この経産省支援事業で来日した患者だった。【5月9日付け「読売新聞」夕刊】。

 (4)そもそもKIFMECが病院を開設する際、費用の4割を出資したのは三井物産だ。同社は、当初はシンガポールの三井物産関連の生体肝移植専門病院から患者を紹介する計画があった(実際には行われなかった)【「週刊朝日」6月12日号】。
 要するに、KIFMECの移植手術は「ビジネスとしての医療」を推進する国家と企業丸抱えの“事業”なのだ。

 (5)長らく手術中断を余儀なくされたKIFMECは、9月24日、田中理事長が会見し、今後も生体肝手術を継続する方針を明らかにした。
 もはや問題は田中医師個人の力量などではない。医療をビジネスとみなし、国際展開する医療政策そのものの正当性が問われている。

□佐々木実「国家戦略特区で起きた肝移植問題 正当性問われる“国策手術事業”」(「週刊金曜日」2015年10月9日号)
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【心理】子どもの認識と感情

2015年10月23日 | 心理
 (1)本書は、『子どものものの考え方』(岩波新書、1963)の姉妹編。知的発達に重点をおいた前著と異なるねらいをもつ。
  (a)知育とバランスのとれた情育の発展を促進する。
  (b)感情は知的能力と並んで人間生活の不可分の成素をなす点の理解を深める。

 (2)ジャン・ピアジェの感情論をパリ大学の講義録等から援用する。
 ピアジェは、認識の発達段階それぞれにほぼ対応する6段階の感情の発達を設定する。これは2つに大別される。
  (a)感覚運動的知能の時期で、反射、本能に支配される生後まもない頃から6~8月の言語出現期まで。①から③までの3つの下位段階がある。
  (b)言語出現以後の前操作的段階から、具体的操作の段階をへて形式的操作の段階(11歳頃にはじまり15歳頃に頂点に達する)まで。④から⑥までの3つの下位段階がある。

 (3)ピアジェによれば、認識はある行為の「構造」をあらわすのに対し、感情はその「エネルギー」面を示す。たとえば興味という感情のエネルギーが認識を伸ばす。
 逆に、「頑張って努力しなさい」と叱咤激励しても混乱を招くばかりだ、と著者は説く。努力という感情は認識の発達にそのままでは反映しないのである。

 (4)感情は知性と平行して、別々の発達をする。したがって、科学的認識とは別に、感情は絵画や文学のように別の高みへ達することができる。
 だから、著者はジャネーやクレパレードを援用しても、ワロンにはふれない。ワロンは、感情は知性の下位構造をなすという一元論的立場なのだ。

 (5)④段階の人間関係の発達が興味深い。
 この段階には「表象」「映像」が活発になり、「保存」が成立する。綿1kgと鉄1kgとどちらが重いか、の問いに正解を出せる時期である。「感謝」(日本で言えば「恩」「義理」)が成立すると同時に、劣等感(クルト・レヴィンのいわゆる「要求水準」が背後にある)や義務感も生まれる。ただし、この段階の義務感は「道徳的実在論」とでも呼ぶべきもので、「現場の状況」から独立していない。
 著者は付言して、感情とそれにもとづく反対給付(報恩)は互いに平等な人間同士の関係を前提とし、日本人の「甘え」は平等の関係を育てない、と言う。「子どもを民主的に育てようとおもったらならば、まず、世の中が子どもへの『甘やかし』の習慣をすて、彼らを一人前としてとりあつかう習慣を成立せねばならぬ」
 ところで、本書でいう「感謝」は、社会学者きだ・みのるによる義理の定義「おれもやるから、おまえも寄越せ」(ポトラッチ交換)とまったく同じだと思う。

□波多野完治『子どもの認識と感情』(岩波新書、1975)
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【アベノミクス】破綻の修復戦略 ~「一億総活躍社会」~

2015年10月23日 | 社会
 (1)第三次安倍内閣の発足とともに、「一億総活躍社会」が叫ばれ始めている。
 アベノミクスの柱だった株高が中国経済の不調で下がり、量的緩和も手詰まり。「第三の矢」として打ち出した成長戦略はことごとく討ち死に寸前だ。
 経済を鼻先への人参として馬を走らせたあげくの改憲だけが、違憲として批判される拡大解釈による安保法制の「成立」で一歩を踏み出した。
 アベノミクスの破綻がささやかれ始めた今、飛び出したのがこの「一億総活躍社会」だ。

 (2)「一億総活躍社会」に先立って公表されたアベノミクス「新三本の矢」では、
   ①出生率1.8
   ②介護離職ゼロ
   ③GDP600兆円
が謳われた。
 しかし、この三つのいずれも実現が難しいという声が多数だ。
 ①:出生率1.8の達成には、非正規や長時間労働が多い子育て世代の若者の労働条件の改善が必要だ。ところが、労働者派遣法の改定や「高度プロフェッショナル制度」といった賃下げと長時間労働を促す労働政策が目白押しだ。
 ②:介護離職ゼロのためには、介護労働者の待遇改善が不可欠だ。その介護報酬が今年度から引き下げられ、現場から「どんどん辞められて、まともな介護担当者が育たない」と嘆く声が噴出する。
 ③:GDPの増加には、付加価値の高い新しい産業創出のための研究、よって教育費への公的資金の投入が不可欠だ。しかし、現政権では、返済不要の給付型奨学金は依然として導入しないままだし、ほかも何も始まっていない。加えて、GDP上昇には賃金の上昇による消費の回復が必要だが、①で述べた労働者派遣法の改定はこれに逆行する。
 要するに、①~③のどの課題の解決にも、一般の働き手にカネをまわす政策が必要なのだが、防衛費増うや法人税減税のため、それが難しい。
 そこで、気分だけで済ませる「一億総活躍社会」作戦が登場したわけだ。

 (3)それはどんな作戦か。
 ①:福山雅治・歌手/俳優の結婚報道に際して菅義偉・官房長官が、この結婚で出産が増える、と述べた。「一億総活躍社会」作戦下の出生率向上は、
   社会的条件の整備
よりも、
   ムード作りとやる気の奨励
という気分が優勢だ。
 ②:介護離職ゼロのためには、介護実習生を海外から導入し、辞めようとしたら、実習期間が残っていることをたてにとって離職を防止することで達成する。
 ③:GDPの増加には、竹中平蔵・パソナグループ会長の活躍による労働者派遣法の改定や外国人家事支援人材の導入を活かした。低賃金労働力の売買ビジネスや、カジノなど依存症ビジネスを通じた低所得者の消費をあおる枠組みによって実現させる。

 (4)女性も外国人も低所得者も、なけなしのカネと体力をはたいて総活躍し、アベノミクスの理論的破綻をカバーする。
 主導する一億総活躍社会相は加藤勝信で、女性活躍担当相も兼ねる。加藤は、「マスコミを懲らしめる」発言が問題になった自民党文化芸術懇話会に参加していたことで知られる。女性や働き手の気力を保持するため、マスコミが批判したら懲らしめる役割として適役というわけだ。
 安倍首相が好きな戦前、戦中の国家総動員体制を平時の経済振興にあてはめれば、「一億総活躍社会」政策となるのだ。

□竹信三恵子「「一億総活躍社会」で見えてきたアベノミクス破綻の修復戦略 ~経済私考~」(「週刊金曜日」2015年10月16日号)
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【古賀茂明】【原発】骨抜きの「ノーリターンルール」

2015年10月22日 | 社会
 (1)原子力規制委員会事務局や原子力規制庁の職員には「ノーリターン・ルール」が適用される。
 福島の原発事故まで、原発の安全規制は「原子力安全・保安院」が担当していた。「保安院」は経済産業省傘下の組織で、電力会社に天下りを送って癒着している原発推進官庁だ。
 原発事故をきっかけに、原発の規制官庁である保安院が、事実上電力会社の言いなりだったと知った国民はびっくりし、憤った。
 そこで、
   新しい機関:原子力規制委員会
   その事務局:原子力規制庁
を作って、経産省から完全に独立させることになった。
 それを担保するために作られたのが、
   「経産省の職員が規制庁で働くなら、その後、経産省には戻れない」
という「ノーリターン・ルール」だ。経産省に戻れると、復帰後のことを考えて、
   経産省の喜ぶこと=原発再稼働のために働くこと
になってしまうから、それを禁じるために作られた。

 (2)しかし、経産省の職員から見ると、「将来の天下りは誰が面倒を見てくれるのか」と不安になり、誰も規制庁に行かなくなる。それでは原発が動かない。
 世論から見ればそれでいいのだ・・・・が、当時の民主党政権は困った。
 労組の傀儡政権と化した民主党は、表向きは「脱原発依存」と言うが、実は、電力総連や原発メーカーなどの組合の意向で、原発を何とか動かそうと考えた。
 むろん、当時野党の自民党も原発再稼働に必死だった。
 そこで、民主党政権(担当:細野豪志・環境大臣)と自民党は、規制委員会設置法に、
    「法律の施行後5年間は、職員がどうしても戻りたいと言った場合などは、経産省に戻してもよい」
という例外を作った。これで、経産省と規制庁の間の人事異動は、事実上フリーパスとなった。
 
 (3)(2)の例外措置は法施行後5年(2017年)で切れる。
 早めに抜け穴を作ろう・・・・とした経産省は、そのために法律に入れておいた文言を活用する。それは、
    「(原発に関わっている)経産省と文科省には戻れない」
と明確に断言する代わりに用いた
    「原子力利用の推進に係る事務を所管する行政組織への配置転換を認めない」
という曖昧な文言だ。
 9月30日、規制委員会は、事実上、
    「禁止されるのは、直接原子力の仕事に関与する部署だけで、それ以外の経産省の他の部署なら戻っても良い」
という新しい解釈のルールを決めた。
 経産省に戻ることを認めれば、規制庁で働く間、戻った後のことを考えて、誰でも経産省のために働く。のリターン・ルールを定めた意味は、これで消滅してしまった。

 (4)これについて、田中俊一・委員長は、「行政官は、きちんと割り切って仕事をしてくれる」と答えた。
 それが本当なら、元々「独立した」規制庁はもちろん、規制委員会だって必要なかったはずだ。経産官僚に、「真面目に原発の安全規制ををやってくれ」と言えば済む、と言っているに等しい。
 規制委のトップが、経産省の言いなりになっているのと同じだ。
 霞が関では、福島の事故は過去のものとなった。
 原子力ムラは完全に復活し、規制委は経産省の完全な植民地となってしまった。 

□古賀茂明「骨抜きの「ノーリターンルール」 ~官々愕々第174回~」(「週刊現代」2015年10月31日号)
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 【参考】
【古賀茂明】アベノミクス「第二ステージ」 ~失敗を隠す官僚の常套手段~
【古賀茂明】難民と安倍とメルケルと ~ドイツと差がつく日本~
【古賀茂明】安保法成立の最大の戦犯
【古賀茂明】軽減税率、本当の問題 ~官々愕々第170回~
【古賀茂明】国民のために働く官僚の左遷 ~読売新聞の問答無用~
【古賀茂明】安倍首相の「積極的軍事主義」が根付くとき
【古賀茂明】電力自由化は進んでいない
【古賀茂明】【TPP】の漂流と「困った人たち」
【古賀茂明】安保法案の裏で利権拡大 ~原子力ムラ~
【古賀茂明】東芝の粉飾問題 ~「報道の粉飾」~
【古賀茂明】「反安倍」の起爆剤 ~若者たちの「反安倍」運動~
【古賀茂明】維新の党の深謀遠慮 ~風が吹けば橋下市長が儲かる~
【古賀茂明】腐った農政 ~画餅に帰しつつある「日本再興」~
【古賀茂明】読売新聞の大チョンボ ~違法訪問勧誘~
【古賀茂明】「信念」を問われる政治家 ~違憲な安保法制~
【古賀茂明】機能不全の3点セット ~戦争法案を止めるには~
【古賀茂明】維新が復活する日
【古賀茂明】戦争法案審議の傲慢と欺瞞 ~官僚のレトリック~
【古賀茂明】「再エネ」産業が終わる日 ~電源構成の政府案~
【古賀茂明】「増税先送り」「賃金増」のまやかし ~報道をどうチェックするか~
【古賀茂明】週末や平日夜間に開催 ~地方議会の改革~
【古賀茂明】原発再稼働も上からの目線で「粛々と」 ~菅官房長官~
【古賀茂明】テレビコメンテーターの種類 ~テレ朝問題(7)~
【報道】古賀氏ら降板の裏に新事実 ~テレ朝問題(6)~
【古賀茂明】役立たずの「情報監視審査会」 ~国民は知らぬがホトケ~
【報道】ジャーナリズムの役目と現状 ~テレ朝問題(5)~
【古賀茂明】氏を視聴者の7割が支持 ~テレ朝問題(4)~
【古賀茂明】氏、何があったかを全部話す ~テレ朝「報ステ」問題(3)~
【古賀茂明】氏に係る官邸の圧力 ~テレ朝「報道ステーション」(2)~
【古賀茂明】氏に対するバッシング ~テレ朝「報道ステーション」問題~
【古賀茂明】これが「美しい国」なのか ~安倍政権がめざすカジノ大国~
【古賀茂明】原発廃炉と新増設とはセット ~「重要なベースロード電源」論~
【古賀茂明】改革逆行国会 ~安倍政権の官僚優遇~
【古賀茂明】安部総理の「大嘘」の大罪 ~汚染水~
【古賀茂明】「政治とカネ」を監視するシステム ~マイナンバーの使い方~
【古賀茂明】南アとアパルトヘイト ~曽野綾子と産経新聞~
【古賀茂明】報道自粛に抗する声明
【古賀茂明】「戦争実現国会」への動き
【古賀茂明】日本人を見捨てた安倍首相 ~二つのウソ~
【古賀茂明】盗人猛々しい安倍政権とテレビ局
【古賀茂明】安倍政権が露骨な沖縄バッシングを行っている
【古賀茂明】官僚の暴走 ~経産省と防衛省~
【古賀茂明】安倍政権が、官僚主導によって再び動き出す
【古賀茂明】自民党の圧力文書 ~表現の自由を侵害~
【古賀茂明】自民党が犯した最大の罪 ~自民党若手政治家による自己批判~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走 ~傾向と対策~
【古賀茂明】解散と安倍政権の暴走
【古賀茂明】文書通信交通滞在費と維新の法案
【古賀茂明】宮沢経産相は「官僚の守護神」 ~原発再稼働~
【古賀茂明】再生エネルギー買い取り停止の裏で
【古賀茂明】女性活用に本気でない安部政権
【古賀茂明】【原発】中間貯蔵施設で官僚焼け太り
【古賀茂明】御嶽山で多数の死者が出た背景 ~政治家の都合、官僚と学者の利権~
【古賀茂明】従順な小渕大臣と暴走する官僚 ~原発再稼働~
【古賀茂明】イスラム国との戦争 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】「地方創生」は地方衰退への近道 ~虚構のアベノミクス~
【古賀茂明】【原発】原子力ムラの最終兵器
【古賀茂明】【原発】凍らない凍土壁に税金を投入し続けたわけ
【古賀茂明】【原発】勝俣恒久・元東電会長らの起訴 ~検察審査会~
【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

【詩歌】ゲーテ「捧げることば」 ~『ファウスト』より~

2015年10月21日 | 詩歌
 また近づいてきたか、おぼろな影たちよ。
 かつてわたしの未熟な眼に浮かんだものたちよ。
 今こそおまえたちをしかと捉えてみようか。
 わたしの心はいまもあのころの夢想に惹かれるのか。
 むらがり寄せるおまえたち。よしそれなら思うままに、
 もやと霧のなかからわたしのまわりにあらわれてくるがいい。
 わたしの胸はわかわかしくときめく。
 おまえたちの群をつつむ魅惑のいぶきに揺すぶられて。

 おまえたちは楽しかった日の、かずかずの思い出をはこんでくる。
 なつかしい人たちのおもかげのかずかずが浮かび出る。
 なかば忘れられた古い伝説(いいつたえ)のように、
 初恋も初めての友情もよみがえる。
 苦しみは新たになり、嘆きはまたも人の世の
 悲しいさまよいをくりかえす。
 かりそのめの幸(さち)にあざむかれて、美しい青春をうばわれ、
 わたしに先立って逝った親しい人々の名を私は呼ぶ。

 初めの歌の幾ふしをわたしが歌って聞かせた人々は、
 いまはそれにつづく歌を聞くよしもないのだ。
 したしい人たちの団欒(まどい)は散り、
 最初に起こった好意のどよめきは帰ってこない。
 わたしの嘆きは見知らぬ世の人々にむかってひびき、
 その賞讃さえわたしの心をわびしくする。
 いまも生きてわたしの声を喜んで聞いてくれる人たちも、
 遠く四方にちらばっている。

 しかし今わたしを捉えるのは、あの静かなおごそかな霊たちの国への
 ながく忘れていた憧れ。
 わたしの歌はいまようやくつぶやきをとりもどして
 おぼつかなくもエオルスの琴【注】のように鳴りはじめる。
 戦慄(おののき)がわたしをつかみ、涙はつづく。、
 かたくなった心もしだいになごんでゆくようだ。
 わたしがいま現実に見ているものは遠い世のことのように思われ、
 すでに消え失せたものが、わたしにとって現実となってくる。

 【注】ギリシャ神話、風によって微妙な音色で鳴るという琴。エオルスは風神の名。

 Ihr naht euch wieder, schwankende Gestalten,
 Die früh sich einst dem trüben Blick gezeigt.
 Versuch ich wohl, euch diesmal festzuhalten?
 Fühl ich mein Herz noch jenem Wahn geneigt?
 Ihr drängt euch zu! nun gut, so mögt ihr walten,
 Wie ihr aus Dunst und Nebel um mich steigt;
 Mein Busen fühlt sich jugendlich erschüttert
 Vom Zauberhauch, der euren Zug umwittert.

 Ihr bringt mit euch die Bilder froher Tage,
 Und manche liebe Schatten steigen auf;
 Gleich einer alten, halbverklungnen Sage
 Kommt erste Lieb und Freundschaft mit herauf;
 Der Schmerz wird neu, es wiederholt die Klage
 Des Lebens labyrinthisch irren Lauf,
 Und nennt die Guten, die, um schöne Stunden
 Vom Glück getäuscht, vor mir hinweggeschwunden.

 Sie hören nicht die folgenden Gesänge,
 Die Seelen, denen ich die ersten sang;
 Zerstoben ist das freundliche Gedränge,
 Verklungen, ach! der erste Widerklang.
 Mein Lied ertönt der unbekannten Menge,
 Ihr Beifall selbst macht meinem Herzen bang,
 Und was sich sonst an meinem Lied erfreuet,
 Wenn es noch lebt, irrt in der Welt zerstreuet.

 Und mich ergreift ein längst entwöhntes Sehnen
 Nach jenem stillen, ernsten Geisterreich,
 Es schwebet nun in unbestimmten Tönen
 Mein lispelnd Lied, der Äolsharfe gleich,
 Ein Schauer faßt mich, Träne folgt den Tränen,
 Das strenge Herz, es fühlt sich mild und weich;
 Was ich besitze, seh ich wie im Weiten,
 Und was verschwand, wird mir zu Wirklichkeiten.

□ヨハン ・ ヴォルフガング ・ フォン ・ ゲーテ(手塚富雄・訳)「捧げることば」(『ファウスト 悲劇』、中央公論社、1971)
□「Johann Wolfgang von Goethe: Faust: Eine Tragodie - Kapitel 1
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 【参考】
【詩歌】J・W・ゲーテ「塔守リュンコイスの歌」 ~『ファウスト』より~
【詩歌】ゲーテ「昔ツウレに王ありき」 ~『ファウスト』より~


【心理】アンリ・ワロンの方法論と業績 ~フランス心理学の特徴~

2015年10月21日 | 心理
 (1)フランスの心理学の特徴は、
   「病理学的方法」
に基礎を置いていることだ。この方法の創始者は、フランス心理学の祖ともいわれているテォデュール・アルマンド・リボーだ。彼によれば、精神病は自然が行ってくれる実験であり、正常の人間の心理は精神病患者の心理の中に拡大されたり縮小されたりして観察される。
 この考え方をさらに遡れば、クロード・ベルナールの実験医学序説のなかにその源流を見出すことができる。物理学や化学のように人為的に条件をつくりあげて、その変化を見るような実験方法を
   「人為的実験」
というならば、医学のようにやむを得ない自然の力によって(人間の手を加えないまま)病気という状況がつくりだされ、その変化の過程や結果を調べるやり方も、考えようによっては一つの実験であり、これを
   「自然実験」
と名づけたのだ。ベルナールによれば、正常なものと異常なものとのあいだには本質的な違いはなく、病気と正常状態との違いは偶然的な条件が入り込んでいるか否かの違いにすぎない。
 この考え方がリボーに受け継がれ、心理学に広く適用されたのだ。
 <例>リボーは、人間の記憶について研究し、名高いリボーの法則(「忘却は不安定な記憶から安定した記憶へ、新しい記憶から古い記憶へ、複雑な記憶から単純な記憶へ及ぶ」)を発見した。このとき観察の対象とされたのは高齢者であり、特にその知能の衰えていく姿を捉えようとした点で、いわば病理的な研究だった。
 リボーがこの方法を用いて以来、病理学的方法はフランス心理学の伝統となり、フランスのほとんどの心理学者はすすんでこれを用い、すぐれた業績をつぎつぎに発表していった。
 <例>ピエール・ジャネは、強迫症状をもつ精神衰弱患者を研究し、精神活動の段階の低下した状態を見出したのだが、そこからジャネは、正常人の精神活動に共通な法則を引き出した。
 <例>知能検査の創始者として名高いアルフレッド・ビネーは、最初に発達遅滞児を手がけた。まず、これら恵まれない子どもたちのために新しい知能尺度をつくろうと努力し、この尺度をさらに広く、正常の子どもに適用するに至った。

 (2)ワロンの業績について考える場合、常にこのような心理学の伝統ないし学問的風土のなかで見ていく必要がある。彼は心理学を研究し、その理論を構築する上で、精神病理学の成果を存分に活用した。と同時に、彼は精神医学者として、従来の精神病理学の概念に対して根本的な修正を企てたのだ。
 初め精神医学者として出発したワロンは、サルペトリエール病院で「強迫妄想」、とくに慢性解釈妄想を研究した。この病気に発展する発病前の徴候を徹底的に究明しようとした。その結果、いわば遺伝的な体質をなす「偏執的素質」だけがその徴候をなしているという従来の考え方(とくにクレペリン学派の考え方)に疑問をさし挟み、むしろある種の障害がこの妄想を引き起こすに違いない、と考えるに至った(1909年)。
 この研究の結果、彼はとくに人間の精神発達に関心をもつようになった。そこで彼は、ビセートル病院で男の子、ヴァレ財団病院で女の子の異常児について214の症例を集め、とくに発達遅滞児、重症の精神不均衡児、てんかん児、落ち着かない子、倒錯児などの組織的な分析的研究を企てた。この研究が、論文『騒乱児--運動発達と精神発達の遅滞と異常に関する研究』(1925年)に結実した。
 ここでは精神生理学の方法によって異常児たちの病前徴候が徹底的に追求されている。その結果、先の妄想に係る研究と同様、病因を遺伝的なものとしてのみ取り上げることができないことを発見し、もっと広く、両親との関係のなかに病気の頻発性を見るべきだと報告している。
 <例>両親が精神病であること、とくに父親がアルコール中毒であったり、梅毒患者であったりすると異常児が出現しやすい。また、妊娠の過程でドラマティックな情動ショックを受けた母親(<例>山で台風にあったり、暴風のさいちゅうに海で座礁した船に乗り合わせたりした母親)から生まれた子どももまた異常児となることが多い。
 しかし、出生時の状況も大きな病因となり得ることをワロンはとくに強調する。産科外傷、出生時窒息、痙攣、核黄疸、麻疹の脳炎などは、てんかんや強度の発達遅滞から軽い行動障害児に至るまでつくりだすことになるし、児童期の激しい情動も、重大な障害、いや小児痴呆の起源とさえなり得るのだ。

 (3)(2)のような事実は、まさに家庭状況が異常児の出現を支配する大きな要因となっていることを示すものだ。精神異常が、遺伝的な体質によるのではなく、後天的な障害に基づくというワロンの学説は、ここでも立証された。
 さらに、この確信を強めたものとして、ワロンにはなお二つの体験があった。
  (a)第一次世界大戦という戦争体験・・・・初め軍医として、次に精神医学センターの医師として動員され、戦後は戦争神経障害者センターで臨床を経験した。脳損傷やショックを初め、その他もろもろの戦争事故による神経精神障害者の診断と治療にあたったワロンは、ここで精神障害の神経的・器質的随伴現象を確かめたのだ。
  (b)1918年から20年にかけてフランスで猛威をふるった流行性脳炎に係る臨床体験・・・・ここでも、それまで体質的ないし遺伝的だと考えられてきた精神的平衡障害や幻覚妄想が多く見出された。つまり、C・ベルナールの言葉を借りると、流行性脳炎がいわば実験的に、これらの症状を作り出してみせたのだ。

 (4)(3)のような臨床体験から、ワロンの眼は、特に錐体外の機能と筋肉的トーヌスの機能へと向かった。これらの機能が障害を受けると運動障害という症状が生じるが、これこそ精神障害を生み出す根源であることを明らかにしようとした。実際、彼は異常児の精神活動障害の基礎として、運動的徴候をとりあげて詳細に記述している。それぞれの精神障害に対して、同じ種類の運動障害が結びついている。だから、運動障害は、いわば精神障害の写像のようなものだといえる。しかも、その運動障害が、錐体外の機能の撹乱によるものであることを発見したところにワロンの創見がある。当時は、精神病の運動障害は錐体の不全によるものであり、それはいわば体質的なものだと考えられていたのであ!る。

 (5)ともあれ、ワロンの業績のなかで大事なことは、精神現象の基盤を運動的事実に求めたことだ。彼は、「心理学者が精神生活の形や変化をもっぱら精神的な要因や要素だけに帰着させることができると、しばしば信じているような錯覚」に常に反対していた。この立場は一貫してつらぬかれ、のち(1942年)に発表された理論的労作過去『行動から思考へ』【注1】で心理学の大系として結実することになる。

 (6)では、運動と精神とを結びつけるものは何か。ワロンによれば、それは情動だ。彼は情動の概念のなかに、常に運動を含めて考察したのである。このことは、名高いジェームズ・ランゲ説(「私たちは悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ。嬉しいから笑うのではなく、笑うから嬉しいのだ」という感情論)以来、神経生理学者も、常に主張してきたことであり、とくにワロン以降、W・B・キャノンやフィリップ・バード(キャノン=バード説)、ヴァルター・ルドルフ・ヘスらの神経生理学者によって再確認されている事実だ。
 ワロンによれば、情動とは筋肉トーヌスの姿勢的変化や運動をひきおこす生理的な情的状態だ。だから情動には、なんらかのかたちで運動が伴う。しかもワロンは、この情動のなかに社会現象を見出したのである。「個人は、情動によって同じような反応をつくりだすすべての他人との結合を見出す」・・・・これが
   共感
だ。生後数ヶ月目の子どもにもすでに存在しているものだ。そして、「共感によって、他人という概念が導入されることになる」。この他人のなかでも、もっとも早く認識されるのは、申すまでもなく母親だ。ついで、子どもを取り巻く人びとだ。そして、子どもと母親(ないし周囲の人びと)とのあいだに生じる漠然たる情動の流れが、子どもの精神発達を条件づけるのである。

 (7)(6)のワロンの考え方は、ジグムント・フロイトの精神分析学にかなり近いものがある。精神病を引き起こす要因として、フロイトは情動の重要性を指摘したし、人間の日常生活における思考や行動を支配するものとして幼児期の家庭環境での感情生活を分析した。ワロンがこの問題を研究していたのと時を同じくしてフロイトが精神分析学を創始したのである。おそらくワロンがフロイトから学ぶところも多かったに違いない。しかし、フロイトが精神病理現象に対してあまりにも心理学的な起源を認めすぎ、その生理学的・神経学的基礎がおろそかにされるきらいがあるがゆえに、ワロンは精神分析学に全面的に共鳴できなかった。
 ワロンはのち(1942年)に『子どもの心的発展』【注2】をあらわし、子どもの発達段階の姿を解明するが、これもまったく異常児によって示された精神障害の症候の分析に基づく点がきわめて多い。ワロンによれば、「正常児は病的な子どものなかに発見されるのだ」。
 
 (8)ワロンの発達段階説は、
  (a)衝動的段階・・・・子どもが誕生したばかりの時期。この時期には、子どもの反応は多量で、トーヌス過剰である。
  (b)情動的段階・・・・トーヌスと姿勢の機能が情動によって利用される時期。それは、他人との接触の始まり、つまり社会生活の端緒を示すものだ。
  (c)感覚運動的段階・・・・子どもは感覚のはたらきと運動のはたらきとを供応させることができるようになって、さらに言葉の習得とともに、それがいっそう豊かになっていく。
  (d)投影的段階・・・・この時期は外界との接触も深まっていき、そのために常に意図的に子どもの行為が動員されるような時期だ。
 このようにして、ワロンは
   運動-情動-精神
の相互の結びつきと、その発展の姿を常に環境との関連のなかで明らかにしようとした。人間の精神発達は、生物学的なものと社会的なものとが絡み合いながら行われていく。個人の生物学的変化と、家庭場面の事件や社会体制の力とは、その強度や時間の大小はあるにせよ、常に発達曲線のうえに反映し、これをゆがめたり変えたりすることをワロンは解明した。
 彼は病理学の研究から出発して、正常人の生きた姿へと接近していったのだ。この意味でワロンは、フランス心理学における病理学的方法を最大限に駆使しているといえよう。

 (9)『病理学的心理学(精神病理学)』【注3】は、ワロンの立場から展望した精神病理学の理論的著作だ。本書が発表された時期に、ワロンはすでに二つの著作、
   『強迫妄想』
   『騒乱児』
を発表し、その画期的な見解によって学界の注目の的となっていた。これらの研究のなかには多くの臨床的症例が集められていたが、これらに対して改めて理論的に考究していったのが本書だ。これによってワロンは、精神医学会にゆるぎない地位を獲得した。
 理論的で独創的な著作が必ずしも大作であるとは限らない。少なくともフランスでは逆のことが多い。むろん、独創的で分厚い本もないわけではないが、それはやむをえない場合に限るとされている。フランス人には、独創性には必ず簡潔性を伴うという考え方が強く、独創的な書物ほど小さくて薄いものなのだ。本書も例外ではない。
 しかし、本書を読んで目を見開いた精神医学者がどれほど多かったことか。本書を読んで、自分のとっている病理学的方法に深い反省を加えた心理学者が、どれほど多かったことか。
 ともあれ、本書はワロンにとっては彼の今までの精神医学的研究の集大成であり、以後行われた心理学や児童心理学の研究の出発点をなしているという点でも、意味深い。私たちは本書からワロンの心理学的なものの考え方を学ぶことによって、のちに展開されるワロンの児童心理学や認識心理学の根本をいっそうよく掴むことができるのだ。

 【注1】邦訳名『認識過程の心理学』、滝沢武久・訳、大月書店、1983
 【注2】邦訳名『子どもの精神的発達』、竹内良知・訳、人文書院、1982
 【注3】邦訳名『精神病理の心理学 --異常心理と正常心理の弁証法的把握』、滝沢武久・訳、大月書店、1965

□アンリ・ワロン(滝沢武久・訳)『精神病理の心理学 --常心理と正常心理の弁証法的把握』(大月書店、1965)の「訳者はしがき」
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【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~

2015年10月21日 | ●佐藤優
 (1)ノーベル文学賞を受賞した作家には二種類ある。
   ①純粋に芸術的観点から評価された作家
   ②政治的観点から評価された凡庸な作家
だ。10月8日、スウェーデン・アカデミーは、2015年のノーベル文学賞をベラルーシ人の作家スベトラーナ・アレクシエービッチ氏(67)に授与すると発表した。
 <授賞理由を、「私たちの時代における苦難と勇気の記念碑といえる、多様な声からなる彼女の作品に対して」とした>【注1】

 (2)「苦難と勇気」という受賞理由から明らかなように、ソ連やベラルーシの権威主義的政治権力と闘ったというアレクシエービッチ氏の政治姿勢が評価されたわけだ。
 彼女は、ロシア語で本を書いている。アフガニスタン戦争、チェルノブイリ原発事故に係るアレクシエービッチ氏の本は、このレベルのノンフィクションならいくらでもあり、特段の感銘を与えるものではない。
 ノーベル文学賞受賞後の記者会見でも、アレクシエービッチ氏は政治性を遺憾なく発揮している。10月10日、ドイツはベルリンで行われた記者会見では、こんな見解を披露した。
 <ロシアのプーチン大統領について「この3年ほどで(悪い方向に)変化している。本性をあらわした」と述べ、メディアや言論への圧力を強めるプーチン政権を批判した。
 ソ連末期以降、国家の圧力の中で民衆の声を記録する取材を続けてきたアレクシエービッチ氏は、プーチン政権を支えるロシアのエリート層にも「非常に失望している」と語った。
 同氏は10年以上の国外生活を経て、近年ベラルーシに帰国。その理由について、ロシアのプーチン政権や、ベラルーシで独裁体制を敷くルカシェンコ政権が「想像以上に長期化したため」と説明。「民主主義はスイスのチョコレートのように簡単には輸入できないと思い知った」と語り、民主化のために母国で活動していく決意を示した>【注2】

 (3)(2)のアレクシエービッチ発言のどこに文学性があるのだろうか。
 西側のごく普通の新聞や雑誌に記されているプーチン評の再放送にすぎない。
 ロシアの読書人の水準は高い。こんな凡庸な発言を何度繰り返しても、ロシア世論に影響を与えることはできない。
 ロシア人もベラルーシ人も欧米流の民主主義に対しては、米国やEUが自らの価値観を旧ソ連諸国に押しつけて、帝国主義的な権益を拡大するための隠れ蓑であると考えている。
 彼女が「民主化のために活動する」という決意表明をしても、「笛吹けど踊らず」。
 「あんた、30年前のペレストロイカの時のまま時計が止まっているんじゃないの」
というのが、ロシア人、ベラルーシ人の標準的な反応だと思う。
 日本でもアレクシエービッチ氏の本が何冊か訳されている。今回のノーベル文学賞受賞によっても、彼女の凡庸な本がベストセラーになることはあるまい。

 【注1】記事「ノーベル文学賞にベラルーシ人作家 フクシマを積極発言」(朝日新聞デジタル 2015年10月8日)
.com/articles/ASHB854C1HB8UHBI01B.html" target="_blank">ノーベル文学賞にベラルーシ人作家 フクシマを積極発言」
 【注2】記事「「プーチン氏悪い方に変化」 ノーベル文学賞作家が批判」 ノーベル文学賞作家が批判」(朝日新聞デジタル 2015年10月11日)

□佐藤優「ノーベル文学賞 ロシア人の受け止め方 ~佐藤優の人間観察 第132回~」(「週刊現代」2015年10月31号)
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 【参考】
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
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【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
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【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
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【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
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【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 


【詩歌】村野四郎「登攀」

2015年10月20日 | 詩歌
 僕らは地表の凸凹(ジグザグ)の中にはいった
 麻痺させるほど巨きい垂直が屹立し
 岩燕が突きあたっては落ち
 耳元で軽銀製(アルミ)のコップが小さい音をたてた
 僕らは地表の背に立った
 夕雲が足元で斑(ふ)の絨毯をうごかした
 ピイクの風が友の裳裾をめくり上げると
 彼女は赤くなって
 それを抑えるのであった
 山岳は僕らを翻弄した
 それは抜きがたい力であった
 しかし遂に僕らは征服したのだ
 僕らを此処までも高く支えたもの
 それは何であったか
 振りかえると 
 一人の強力が其処にいた
 背中に
 僕らの山岳をのせて 

□村野四郎「登攀」(『体操詩集』、1939)
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 【参考】
【詩歌】村野四郎「暗い雨のなかで」
【詩歌】村野四郎「モナリザ」
【詩歌】村野四郎「芭蕉のモチーフ」
【詩歌】村野四郎「変な界隈」
【詩歌】村野四郎「塀のむこう」
【詩歌】村野四郎「さんさんたる鮟鱇」
【詩歌】村野四郎「無神論」
【詩歌】村野四郎「鉄棒(二)」
【詩歌】村野四郎「高障害」
【詩歌】村野四郎「競争」
【詩歌】村野四郎「鉄槌投」
【詩歌】村野四郎「拳闘」
【詩歌】村野四郎「棒高飛」
【詩歌】村野四郎「槍投」
【詩歌】村野四郎を読む(4) ~鹿~
【詩歌】村野四郎を読む(3) ~さんたんたる鮟鱇~
【詩歌】村野四郎を読む(2) ~体操~
【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込(二)~


【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~

2015年10月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)日本人男性は、非喫煙者も受動喫煙のため「歯周病」リスクが高くなるらしい。東京医科歯科大学と国立がん研究センターの共同チームの報告から。

 (2)同研究は、1990年、秋田県横手市の住民(当時40~49歳)に対して行った喫煙状況に係るアンケート調査をもとに、その後の歯の状態と喫煙との関連を検討したもの。2005~06年に歯の健康状態を確認した。
 最終的な解析対象者は、男性552人、女性612人、計1,164人。
 2005年の年齢は、55~75歳。
 受動喫煙と喫煙状況で6群に分類し、6mm以上の「歯周ポケット」が1歯以上ある場合を重度の歯周病と定義した。

 (3)年齢、学歴、糖尿病の既往、飲酒状況、歯科への通院歴など、歯周病の発生に関連する因子の影響を調整して解析した結果は、次のとおり。
   喫煙者のリスクは受動喫煙経験がない非喫煙者の約3.3倍
 しかし、男性の場合、非喫煙者であっても歯周病発生リスクは、
   家庭内でのみ、受動喫煙の経験がある場合は約3.1倍
   家庭や職場で受動喫煙のの経験がある場合は約3.6倍
 他方、女性の場合、喫煙状況と歯周病との間には明確な関連は認められなかった。女性はタバコの害に対する意識が高く、喫煙や受動喫煙を避けたためだろう。

 (4)タバコのニコチンは、歯周病菌の発育を促進し、病原性を高める。
 今回の研究で受動喫煙でも同様のメカニズムが働く可能性が示唆された。

 (5)たかが歯周病、されど歯周病。
 歯を失う原因のトップであり、さらに糖尿病など全身性疾患との関連が指摘されている。慢性的な歯茎の炎症によって細胞から放出される「内毒素」が、血糖値を下げるインシュリンの効き目を弱めるからだ。実際、糖尿病患者の歯周病を抗菌薬で治療すると、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー/血糖コントロールの状態を示す)値が改善する。

□井出ゆきえ(医学ライター)「受動喫煙が歯周病リスクに ただし、男性に限ります ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.2~」(週刊ダイヤモンド」2015年10月日号)
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 【参考】
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~



【共通番号】法動き出す ~NHK受信料徴収まで検討~

2015年10月20日 | 社会
 (1)10月5日、共通番号(マイナンバー)法が施行された。間もなく住民に番号を割り振られる通知カードが郵送される。

 (2)共通番号制度は、唯一無二の番号(12桁)を住民に振り、税や社会保障など市民の広範な個人情報について個人番号をマスターキーとして紐づけ、データマッチングすることにより、行政施策に利用・活用する仕組みだ。
 その利用範囲が野放図に拡大する傾向にある。
  (a)当初、2013年に制定された共通番号法では利用範囲は税・社会保障・災害に限られていた。にもかかわらず、法律の施行を待つことなしに金融分野(預貯金口座)、医療分野(メタボ検診情報や予防接種履歴など)にも利用範囲を拡げる改正法が9月3日に成立した。
  (b)さらに利用拡大をめぐり、二つの提案と構想が相次いで示された。
    ①政府・財務省は、10%への消費増税に際して(2017年4月)、共通番号制の個人番号カードを活用して飲食料費の購買について税率2%に相当する額を還付する制度を検討している旨明らかにした。・・・・税の還付を受けたければカードの取得と買物への携行を求めるという事実上の強制に等しい乱暴な手法だ。
    ②NHKの受信料徴収についてマイナンバーを活用する検討が、自民党情報通信戦略調査会放送法の改正に関わる小委員会の提言(9月24日)、籾井勝人・NHK会長の記者会見(10月1日)などにより提示されている。

 (3)(2)-(b)-②NHK受信料徴収という事務は、税や社会保障とは全く関係ない。行政上の事務でもない。ここまで利用範囲を広げることになれば、市民が関わるあらゆる情報は何でも共通番号法の利用対象となることを意味する。
 そもそも報道機関であるNHKは、市民のプライバシーの権利にも深くかかわる共通番号制度自体について批判的に吟味し、報道することを使命としているはずだ。そういう制度に自ら率先してコミットし、制度の当事者になることは報道機関の自殺行為以外の何ものでもない。

 (4)(2)-(a)、(b)に続き、番号の利用については健康保険証の機能を加え、戸籍、旅券、医療、自動車登録などいっそう広範囲な事務への拡大が政府部内ですでに検討されている。個人番号カードの促進、普及も急ピッチで進められようとしている。市民の個人情報は丸裸にされ、番号カードの携行も事実上強制されかねない深刻な事態だ。

 (5)共通番号制度は、憲法上のプライバシーの権利を侵害する企てにほかならない。
 個人番号カードの申請拒否をはじめ、制度自体の廃止の取り組みを強めていくべきだ。

□田島泰彦(上智大学教授)「NHK受信料徴収まで検討する事態! 動き出す共通番号法」(「週刊金曜日」2015年10月9日号)
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 【参考】
【堤未果】情報漏洩・巨大利権など不安材料が多数 ~マイナンバー~




【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~

2015年10月19日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)健康状態が良く、十分な収入があり、しかも学歴が高く、社会活動も積極的・・・・という「勝ち組」は、飲酒が有害なレベルまで行く、という研究結果が英国から報告された。
 この研究は、
   ・英国(イングランド)在住
   ・50歳以上
   ・男女
   ・延べ9,200人
について、有害な飲酒に向かわせる社会経済的要因を検討した2つの調査データを解析したもの。

 (2)飲酒内容は、ビール1パイント(約568ミリリットル)orワイン175ミリリットルを2単位とし、
   ・有害飲酒リスク「増加」・・・・男性22~50単位/週、女性15~35単位/週
   ・有害飲酒リスク「高リスク」・・・・男性50単位/週、女性35単位/週   
 追跡結果を見ると、
   ①男性の有害飲酒リスクは60代前半をピークに減少。
   ②女性は加齢とともにリスクが減少する半面、男性とは逆にリタイアが有害飲酒リスク増のきっかけになる傾向。
   ③男性は、独身、離婚などで一人暮らしであると、有害飲酒の高リスク群へ陥りやすい。
   ④女性では、鬱病や孤独感と飲酒リスクの関連は認められない。
 以上の研究結果で興味深いのは、
   ⑤男女ともに、高収入、高学歴、健康状態の良好さが飲酒リスクになる。「いわゆる“富裕な成功者”には、有害レベルの飲酒問題を抱えるリスクが潜在している」

 (3)なぜ、社会的な成功をおさめた高所得者で飲酒リスクが上昇するのか。
 男性のケースを日本流に解釈すれば、成功への過程で接待や同僚との付き合い酒、またストレス解消の1杯が重なる、という物語がありそうだ。リタイア後にリスクが減少する現象も首肯できる。
 他方、女性の場合、仕事に子育てに頑張ってきた女性ほど、リタイア後に時間を持て余し、酒に手が伸びるのかもしれない。
 対策の一つは、配偶者を大切にすること。
 男性の理由は明らかだ。
 女性も、旦那サマをあれこれ構っていれば、過度な飲酒に走るヒマはない。
 ただし、新たなストレス源にしないよう適度な距離を持つことだ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「「高収入の勝ち組」がリスク? 50歳以上の有害な飲酒 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.266~」(週刊ダイヤモンド」2015年9月12日号)
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 【参考】
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【詩歌】J・W・ゲーテ「塔守リュンコイスの歌」 ~『ファウスト』より~

2015年10月18日 | 詩歌
 見るために生まれ、
 見よと命ぜられ、
 塔の番を引き受けていると、
 世の中がおもしろい。
 遠くを見つめると、
 近くに見える、
 月も星も
 森も小鹿も。
 こうして万物の中に
 永遠の飾りを見る。
 そしてそれが俺の気に入るように、
 俺自身もおれの気に入る。
 幸福な両目よ、
 おまえたちがかつて見たものは、
 とにもかくにも
 やはりほんとに美しかった。

 Zum Sehen geboren,
 Zum Schauen bestellt,
 Dem Turme geschworen,
 Gefällt mir die Welt.
 Ich blick' in die Ferne,
 Ich seh' in der Näh'
 Den Mond und die Sterne,
 Den Wald und das Reh.
 So seh' ich in allen.
 Die ewige Zier,
 Und wie mir's gefallen,
 Gefall' ich auch mir.
 Ihr Glücklichen Augen,
 Was je ihr gesehen,
 Es sei wie es wolle,
 Es war doch so schön

□J・W・ゲーテ(高橋健二・訳)『ファウスト』の第二部第五幕「深夜」の章「塔守リュンコイスの歌」
□Johann Wolfgang von Goethe “Lied Lynceus des Turmers” )
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 【参考】
【詩歌】ゲーテ「昔ツウレに王ありき」 ~『ファウスト』より~


【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~

2015年10月18日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)座位時間が長いと出てしまう「貧乏ゆすり」。家族からも同僚からも「みっともない」と言われそうだ。
 しかし、英国の疫学調査によれば、貧乏ゆすりで死亡リスクが下がるという。

 (2)調査対象は、英国の37~78歳(平均年齢55.8歳)の女性、13,000人。
 1日当たりの平均座位時間、貧乏ゆすりの程度、食事や喫煙などの生活習慣、ほか教育程度、就労の有無などライフスタイルに係る情報を入手。
 貧乏ゆすりのレベルは、「全くしない」から「常にする」まで10段階で評価。
 座位時間、貧乏ゆすりの程度、平均12年の追跡期間中の全死亡との関連を調べた。

 (3)関連因子の影響を調整して解析した結果、
  (a)座位時間が5時間未満/日のグループに比べ、7時間以上/日かつ貧乏ゆすりをほとんどしない(レベル1~2)女性の全死亡リスクが1.3に上昇。
  (b)座位時間が7時間以上/日でも貧乏ゆすりをある程度する(レベル3~4)女性の全死亡リスクは0.75に、頻繁に行う(レベル5~10)女性は0.76に減少した。
  (c)座位時間が5~6時間/日かつ貧乏ゆすりを頻繁に行う女性の全死亡リスクは0.63と、有意に減少した。

 (4)「貧乏ゆすりは座りっぱなしに関連する全死亡を減らす可能性がある」【研究者ら】

 (5)近年、座りっぱなしの時間が長いほど2型糖尿病や心血管疾患の発症率が上昇し、全死亡リスクが増加することが知られるようになった。
 昼間はデスクワーク中心、車移動中心で、家でもゴロゴロの現代人にとって、他人事ではない。
 貧乏ゆすりがなぜ、全死亡リスクを下げるのか、そのメカニズムは不明のままだ。
 ただ、塵も積もれば何とやら。貧乏ゆすりのような「ノン・エクササイズ・アクティビティ」も、2.5時間/日の貧乏ゆすりで消費されるカロリーは、1時間/日の散歩に匹敵し、鬱血した血行の改善も期待できる。
 とはいえ、「積極的に貧乏ゆすりをする」わけにはいかない。
 マナーか、健康リスクか。それが問題だ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「周囲には悪評でも 貧乏ゆすりが命を救う? ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.2~」(週刊ダイヤモンド」2015年10月24日号)
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 【参考】
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
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【政治】先行き暗い石破の旗揚げ ~「単色化」する安倍自民党~ 

2015年10月18日 | 社会
 (1)石破茂は、9月28日、新派閥「水月会」を立ち上げ、3年後の総裁選に臨む意思を示した。
 設立会見には山本有二・元金融相、鴨下一郎・元環境相など石破の側近らを揃えたが、集まったのは20人にとどまった。しかも、盟友の浜田靖一・元防衛相、小此木八郎・国対委員長代理の姿はない。

 (2)「余計なことを言わず、普通にしていれば70人くらいは集まっただろうになあ」
 水月会に集まった人数を訊いた菅義偉・官房長官は半笑いで、番記者たちにこう言った、という。官邸や自民党にとって、石破の“チョンボ”を」挙げたら、最近だけでも枚挙にいとまがないそうだ。
 党内でメディアを威圧する発言が続出していた7月2日、石破は
 「なんか自民党、感じ悪いよね」
という言葉で党執行部を索制した。
 懸案事項であった安保法案が衆議院を通過する2日前の7月14日には、
 「『国民の理解が進んできた』と言い切る自信があまりない」
と官邸・与党全体に向けて弓を引くような発言をしている。
 いずれも国民感情に沿った発言といえるが、官邸や自民党内では、
 「相変わらず空気が読めない男だ」
と呆れる声が続出していた。

 (3)「決定的だったのは1年前の9月」
だとある自民党関係者は述懐する。この時もまた、石破が閣内に入るか無役になって次期総裁を目指して派閥を結成するかが議論になっていた。党本部では怒号が響きわたった、という。
 「絶対に閣僚を引き受けるな。一緒に無役になって、次期総裁に向けて準備をすべきだ」
 石破にこう向けたのが浜田元防衛相だった。安全保障を専門とするが、狭量な安倍官邸チームとは一定の距離を持ち、聞く耳を持つ議員として周囲の評価も高い。
 そんな浜田の懸命の説得にもかかわらず、石破は目の前にぶら下げられた地方創生相のポストにつかまってしまった。
 「浜田が石破を見限る決定的な場面だった」
と見る向きは強い。

 (4)「単色政党になってしまった」と、あるベテラン自民党担当記者は嘆くほど、自民党は安倍カラー一色に染めあがっている。そのベテラン記者は言う。
 「総理大臣や、総理大臣をめざす人間にとって何よりも重要なのは参謀。安倍政権には菅官房長官という強力な参謀がいるから、長期政権になっている。浜田氏や小此木氏は人望もあり、国会対策もできる。参謀になりうる党内でも数少ない議員なのに、その彼らが石破氏を見限ってしまった。水月会が、これから勢力を拡げていく見通しがあるとは思えない」

 (5)次期総裁の最有力候補に挙がるのが岸田派(宏池会)の領袖たる岸田外相だが、安保法制の審議で安倍首相にひと言も苦言を呈さなかった。
 「当面、憲法9条は改正することを考えない」(10月5日、岸田派の研修会)
のだそうだが、そこまで真実味があるのか。

□野中大樹(編集部)「変わり映えせぬ内閣改造、先行き暗い石破氏の旗揚げ 「単色化」する安倍自民党」(「週刊金曜日」2015年10月9日号)
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 【参考】
【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~


【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ ~知を磨く読書~

2015年10月17日 | ●佐藤優
 ①翁長雄志ほか『沖縄と本土 いま、立ち止まって考える辺野古移設・日米安保・民主主義』(朝日新聞出版 1,200円)
 ②小林節・佐高信『安倍「改憲」を撃つ』(平凡社新書 740円)
 ③アントニー・ベスト(武田知己・訳)『大英帝国の親日派 なぜ開戦は避けられなかったか』(中央公論新社、 2,200円)
   
 (1)①は、辺野古新基地に関する基本書だ。7月29日、朝日新聞東京本社で行われたシンポジウム「いま、沖縄と本土を考える」の記録に、一部の参加者の追加インタビュー、関連資料を加えて収録している。
 翁長雄志・沖縄県知事は、次のように強調する。
 <辺野古埋め立てに対して、ここまで反対しても埋め立てるなら、やはりこれは日米安保体制に対する重要な岐路に立つんではないかと思っています。ですから、(埋め立て承認について)法律的な瑕疵があると第三者委員会から言われていますので、これら政治のあり方にも節目節目でいろいろ考えることもありますが、私は辺野古には絶対に基地を造らせない。あるいは、造れないと思っているので、その視点から今回の第三者委員会の法律的な瑕疵というものは、しっかりとみんなで認識すべきだと思っています>
 それでも政府が辺野古新基地建設を強行した場合、流血の惨事となり、沖縄では日本からの分離運動が深刻になる可能性がある。

 (2)②は、小林節・保守派の学者と佐高信・リベラル派評論家が、「安倍『護憲』を撃つ」で、現政権を徹底的に批判している。
 小林は、岸信介・元首相と安倍晋三・首相を比較して、
 <岸さんは本当に修羅場をくぐっているし、とことん勉強している。それに対して安倍さんは胆力を鍛えるような修羅場を一つもくぐっていない。勉強も中途半端です>
 と批判する。
 小林節・佐高信の両氏の安倍首相に対する忌避反応は、知識人特有のものではないか。
 問題は、このような知識人の言葉が、安倍首相を支持する政治家や官僚にほ殆ど影響しないことだ。

 (3)日英同盟によって、日本は日露戦争に勝利した。
 英国には、日本シンパも多くいたはずなのに、なぜ両国は戦争に突入してしまったのか・・・・という問題の謎解きが、人物に焦点をあてた③において、詳細に行われている。
 チャーチル元首相の日本観について、著者は次のように特徴づける。
 <チャーチルが日本びいきでなかったことは明らかであるが、権力の座についた彼が日本への不信感に左右された形跡はない。彼の対日政策を導いたのは、彼がいうところの、イギリスの国益を追求するための合理的で慎重な現実主義である>と。
 もっともチャーチルは、日本の政治エリートも同様に合理的で慎重な現実主義に基づいて行動すると考えていた。
 アジアの国でありながら、欧米による植民地化を免れたのみならず、帝国主義列強に加わった日本人が自己肥大という泥沼に足を突っ込んでいるという現実を、チャーチルは過小評価していたのだ。

□佐藤優「日本からの分離運動の恐れ ~知を磨く読書 第121回~」(「週刊ダイヤモンド」2015年10月24日号)
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 【参考】
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
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【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
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【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
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【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
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【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~