語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【共通番号】法動き出す ~NHK受信料徴収まで検討~

2015年10月20日 | 社会
 (1)10月5日、共通番号(マイナンバー)法が施行された。間もなく住民に番号を割り振られる通知カードが郵送される。

 (2)共通番号制度は、唯一無二の番号(12桁)を住民に振り、税や社会保障など市民の広範な個人情報について個人番号をマスターキーとして紐づけ、データマッチングすることにより、行政施策に利用・活用する仕組みだ。
 その利用範囲が野放図に拡大する傾向にある。
  (a)当初、2013年に制定された共通番号法では利用範囲は税・社会保障・災害に限られていた。にもかかわらず、法律の施行を待つことなしに金融分野(預貯金口座)、医療分野(メタボ検診情報や予防接種履歴など)にも利用範囲を拡げる改正法が9月3日に成立した。
  (b)さらに利用拡大をめぐり、二つの提案と構想が相次いで示された。
    ①政府・財務省は、10%への消費増税に際して(2017年4月)、共通番号制の個人番号カードを活用して飲食料費の購買について税率2%に相当する額を還付する制度を検討している旨明らかにした。・・・・税の還付を受けたければカードの取得と買物への携行を求めるという事実上の強制に等しい乱暴な手法だ。
    ②NHKの受信料徴収についてマイナンバーを活用する検討が、自民党情報通信戦略調査会放送法の改正に関わる小委員会の提言(9月24日)、籾井勝人・NHK会長の記者会見(10月1日)などにより提示されている。

 (3)(2)-(b)-②NHK受信料徴収という事務は、税や社会保障とは全く関係ない。行政上の事務でもない。ここまで利用範囲を広げることになれば、市民が関わるあらゆる情報は何でも共通番号法の利用対象となることを意味する。
 そもそも報道機関であるNHKは、市民のプライバシーの権利にも深くかかわる共通番号制度自体について批判的に吟味し、報道することを使命としているはずだ。そういう制度に自ら率先してコミットし、制度の当事者になることは報道機関の自殺行為以外の何ものでもない。

 (4)(2)-(a)、(b)に続き、番号の利用については健康保険証の機能を加え、戸籍、旅券、医療、自動車登録などいっそう広範囲な事務への拡大が政府部内ですでに検討されている。個人番号カードの促進、普及も急ピッチで進められようとしている。市民の個人情報は丸裸にされ、番号カードの携行も事実上強制されかねない深刻な事態だ。

 (5)共通番号制度は、憲法上のプライバシーの権利を侵害する企てにほかならない。
 個人番号カードの申請拒否をはじめ、制度自体の廃止の取り組みを強めていくべきだ。

□田島泰彦(上智大学教授)「NHK受信料徴収まで検討する事態! 動き出す共通番号法」(「週刊金曜日」2015年10月9日号)
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 【参考】
【堤未果】情報漏洩・巨大利権など不安材料が多数 ~マイナンバー~





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