語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【メディア】「大変、大変」と叫ぶマヌケな限りの報道~常総市水害~

2015年10月25日 | 社会
 (1)茨城県常総市の水害から1ヶ月経った10月11日、「朝日新聞」朝刊が、平地での冠水予想の難しさを指摘した。
 決壊からはるか下流にある常総市役所の1階が同日夜になってから冠水し、被害を増大させていた件についてだ。
 
 (2)9月11日の朝、テレビは上空から市役所前の様子を生中継し、
 「自衛隊の車両も冠水しています」
と伝えた。この前代未聞の事態に、防衛省幹部は真っ青になったことだろう。
 災害支援活動を自衛隊の本務に加える法改正をし、各地に救援出動することで自衛隊は評価を高めてきた。
 「産経新聞」は、9月11日朝刊の第1面で、救助活動中の自衛隊ヘリを大写しにしていた。
 だが、災害対策本部(市役所前駐車場)で、派遣自衛隊の車両多数が冠水していた。市役所の屋上には多数の自衛隊員の姿があった。それら不様な姿が全国に伝えられてしまった。しかし、中継放送の記者は、「被害が拡大しています」と言うだけだった。
 同日夕刊で、この状況を写真付きで伝えたのは「朝日新聞」だけだった。
 その後、市役所などの冠水について、自衛隊や対策本部の不手際として厳しく指摘する報道はなかった。今回の「朝日新聞」記事も、鬼怒川以外からの氾濫を指摘しただけだった。

 (3)常総市役所の災害対策本部では、その活動中に濁水に浸入されたことになる。それが予想外だったことを、自衛隊車両多数の冠水が証明している。
 常総市役所は住民の避難所にもなっていた。ロビーにいた人びとは夜中に2階に移ったという。避難の際に駐車場に置いた乗用車も水に浸かった。
 「家だけでなく、車がここでダメになるとは思いもよらなかった」
という被害者の声をテレビは伝えた。しかし、
 「防げたはずの被害です」
というコメントはなかった【注】。

 (4)10日午後に鬼怒川の堤防が決壊したとき、はるか下流の市役所周辺に水は達していなかった。
 しかし、鬼怒川と小貝川に挟まれた縦長で下向きの二等辺三角形の頂点近くの市役所方向に、溢れた水が流れ下るのは、小学生でもわかることだ。
 だが、そうなることを、対策本部の市、県、警察、消防、それに自衛隊指揮官たちの誰も認識していなかった。状況監視の策を講じていなかった。
 さらに、10日に上空からの被害報道を繰り返した記者たちも同じだ。目前の光景を伝えるだけで、頭脳をまったく使っていない。記者が避難所の取材中に戻れなくなった、とわざわざ伝えたテレビや新聞がある。デスクまで無能ということか。

 (5)やがて水が来る、と早目に知らされていれば、市役所周辺の住民も床上浸水に備えた畳上げや家財運び上げで被害を軽減できた。
 新聞・テレビは政府の河川管理や市役所の避難指示の不備を衝いているが、夫子自身は何をしたか。現場で「大変、大変」と騒ぐだけの報道は間抜けでしかない。
 自衛隊車両は特別仕様で冠水にも耐えたのか。国有財産を毀損した事態なのか。
 具体的な被害台数などを含め、それぐらいは取材すべきだろう。

 【注】茨城県は、テレビでいうと関東1都6県の首都エリアにあるが、全国47都道府県中唯一、地元に民放テレビ局を持たない。また、大きな被害を受けた常総市は、メディア拠点がある水戸市(県都)から見れば外縁にあたり、これまで市内にはコミュニティFMなどの地元メディアもなかった(災害発生後の9月14日付けで市役所内に臨時放送局「常総災害FM」が発足し、水戸市の「FMぱるるん」がスタッフを派遣)。【岩本太郎「北関東・東北水害災害報道の主役はSNSと地元住民自身」(「週刊金曜日」2015年10月16日号)


□高嶋伸欣(琉球大学名誉教授)「「大変、大変」と叫ぶマヌケな限りの常総市水害の報道」(「週刊金曜日」2015年10月16日号)
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【心理】ノンバーバル・コミュニケーション

2015年10月25日 | 心理
 (1)しぐさから、「ノンバーバール行動」の言語を読み取ることができる。
 著者の一人ジョー・ナヴァロは、8歳のときキューバから米国へ亡命した。まだ英語を十分にはマスターしていない生徒時代、学校の部屋に入って行くと
   ・ジョーを本音で好きな生徒や先生は眉を上げた。
   ・あまり親しくない人は、ちょっとだけ目を細めた。
 「目をふさぐ動作」は、人が脅威を感じたとき、または見えるものが嫌いなときに起こるノンバーバル行動だ。目を細めたり、目を閉じたり、目を覆ったりする動作は、不快な像を「見ない」ようにして脳を保護するため、また他人に軽視の気持を伝えるために進化した。
 この動作を手がかりに、ナヴァロは捜査官時代に放火事件解決の突破口を開いた。その具体的な質問や尋問された者の反応については、本書第1章の「エピソード1:一瞬のまばたきが意味するもの」で語られている。

 (2)第「第1章 しぐさに秘められた意味を知る」によれば、
 ノンバーバル・コミュニケーションは、ノンバーバル行動やボディランゲージとも呼ばれる。
 顔の表情、身ぶり、体の触れ方、体の動き、姿勢、身なり、声のトーンや大きさや声色によって伝わるものいう。
 対人コミュニケーションのうち、およそ60~65%は、ノンバーバル・コミュニケーションである。
 つまり、対人コミュニケーションのうち、言葉によって伝わるものは、およそ35~40%にすぎない。

 (3)所見
  (a)仮説。いわゆる「空気が読めない人」は、ノンバーバル・コミュニケーションに注意を払わない人である。

  (b)仮説。文字だけが一人歩きするネット社会で生じる人間関係の軋轢(あつれき)は、ノンバーバル・コミュニケーションが介在しないためであることが多い。
 
□J・ナヴァロ/M・カーリンズ(西田美緒子・訳)『FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学』(河出書房新社(文庫)、2012)
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 【参考】
【心理】しぐさから心を読みとる ~ボディランゲージ~

  
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