語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】村野四郎「芭蕉のモチーフ」

2015年10月12日 | 詩歌
 からだは すっかり冷えていた
 犬の骨などにつまずくと
 夕暮の孤独は
 いっそう蒼白になった
 たどりついた村の入口には
 痩せた牝牛が番をしていた
 家々には 誰もいる気配がなく
 有棘鉄線がはりめぐらされ
 村は とうに
 何かに占領されていた

□村野四郎「芭蕉のモチーフ」(『亡羊記』、政治公論社、1959):第11回読売文学賞
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 【参考】
【詩歌】村野四郎「変な界隈」
【詩歌】村野四郎「塀のむこう」
【詩歌】村野四郎「さんさんたる鮟鱇」
【詩歌】村野四郎「無神論」
【詩歌】村野四郎「鉄棒(二)」
【詩歌】村野四郎「高障害」
【詩歌】村野四郎「競争」
【詩歌】村野四郎「鉄槌投」
【詩歌】村野四郎「拳闘」
【詩歌】村野四郎「棒高飛」
【詩歌】村野四郎「槍投」
【詩歌】村野四郎を読む(4) ~鹿~
【詩歌】村野四郎を読む(3) ~さんたんたる鮟鱇~
【詩歌】村野四郎を読む(2) ~体操~
【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込(二)~



【食】アイスクリームやキャラメルの抹茶色 ~着色料~

2015年10月12日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)抹茶の原料は、玉露同様の被覆栽培【注1】した茶葉だ。
   →この茶葉を蒸して乾燥させる。
   →葉柄や葉脈などを取り除いて葉の部分だけを精選仕上げする。
   →石臼などで粉末にする。
 こうした過程を経て抹茶は作られる。

 (2)古来より、茶葉の栄養成分や効能は広く認知されている。その茶葉の栄養成分を丸ごと取り入れられる抹茶は、茶の湯をはじめ、和菓子、アイスクリーム、キャンディー、料理など広範囲にわたって利用されている。抹茶味のアイスクリームは、バニラ、チョコレートに次いでナンバー3の人気フレーバーだ【注2】。
 健康志向も追い風で、「抹茶入り」商品は軒並み高い人気を保っている。

 (3)本来緑茶は、栄養価に優れる反面、「高温・多湿・熱・光」に弱い。特に抹茶は、変質変色が非常に早い(デリケート)。
 つまり、さまざまな抹茶商品は、消費者の手に渡る前に変色しやすい。そのマイナス面をカバーするため、抹茶商品の多くに着色料が使用されている。

 (4)抹茶の色合いを演出する着色料として、次のものが使用されている(すべて天然系着色料)
   「抹茶キャラメル」(ロッテ)・・・・(a)紅花黄(こうかおう)、(b)カラメル、(c)クチナシ
   「やまざき 抹茶わらび餅」(山崎製パン)・・・・(d)カロテノイド、③クチナシ

   (a)紅花黄・・・・キク科の紅花の花弁から得られる黄色の色素。使用量が少ないことからあまり危険視されていないが、この色素には突然変異原性【注3】が指摘されている。
   (b)カラメル・・・・製法により4種に大別される。コスト面からして使用される大半は②~④。
     ①Ⅰ・・・・糖類を加熱して作られ、安全性は担保されている。
     ②Ⅱ・・・・糖類に酸やアルカリを加えて加熱処理して作られる工業生産品。突然変異原性が陽性(報告)。
     ③Ⅲ・・・・②と同じ。
     ④Ⅳ・・・・②と同じ。
   (c)クチナシ・・・・アカネ科のクチナシの果実から抽出される色素。青色・赤色・黄色の3種類の色素を持ち、抹茶色には青色と黄色が配合されて利用される。クチナシは、古来よりきんとんの色づけなどに使用されている。青色色素に関しては、アルテミア・サリーナ【注4】に対する致死率が高い(報告)。安全性について再検討が必要、とも指摘されている。
   (d)カロテノイド・・・・アナトー色素と呼ばれる黄色の着色料。(a)や(b)と同様、突然変異原性が疑われている着色料。

 (5)着色料を使用することで、本来の抹茶使用量を減らしたり、あるいはまったく使用しなくてもて抹茶色を出すことができる。
 着色料はしかし、原料が天然由来であっても、(4)のように不安要素がある。着色料を添加しても味や栄養価に何ら変化がない以上、着色料使用は健康リスクとバーターするほどの意義があるのか、消費者はもう一度熟考する必要がある。
 なお、抹茶100%の商品もあるが、値段が高くなるのは事実である。

 【注1】成育中の新芽に遮光資材を被せて一定期間光を遮って育てる方法。 
 【注2】日本アイスクリーム協会による調査、2014年。
 【注3】天然および合成化学物質などがDNAなどに損傷を与え、突然変異を起こす性質。
 【注4】甲殻類に属し、海よりも高い塩分濃度で生息できる生物。

□沢木みずほ「抹茶商品の抹茶色はどこから? 着色料で染めた商品もあるのよ」(週刊金曜日」2015年9月18日号)
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【詩歌】と時代精神 ~二十にして心已に朽ちたり~

2015年10月12日 | 詩歌
 中唐期の詩人、李賀に「贈陳商」(陳商に贈る)の一編がある。

 長安有男兒 長安に男児有り
 二十心已朽 二十にして心已に朽ちたり
 楞伽堆案前 楞伽 案前に堆く
 楚辭繋肘後 楚辞 肘後に繋る
 人生有窮拙 人生 窮拙有り
 日暮聊飲酒 日暮 聊か酒を飲む

 *

 「二十にして心已に朽ちたり」は、暗い時代の日本人の心に響く。
 粕谷一希は、遠藤麟一朗と「世代」の人々を描くにあたり、書名をここから採用した【注1】。
 粕谷はしかし、典拠を知らぬまま採ったらしい。このあたりの事情について、高田里惠子は次のように書く【注2】。
 <本の題名は、いいだもも【注3】が亡き友「エンリン」の生涯を指して、「長安ニオノコアリ、ヨワイ二十(ハタチ)ニシテ、心スデニ朽チタリ」と言ったことに由来する。「いささか、気楽な酒が廻っていたのか、私はその詩の出所も知らぬまま、ヨワイ二十(ハタチ)ニシテ、心スデニ朽チタリという一句に、強烈なイマジネーションを掻き立てられる想いがした>(pp.258-259)

 ところで、ここでいう暗い時代とは具体的には戦前を指すが、実のところ戦前に限った話ではないだろう。21世紀日本でも、戦前とは別の「時代閉塞の現状」を目の当たりにして、二十にして心朽ちる若者は少なくあるまい。

 【注1】粕谷一希『二十歳にして心朽ちたり --遠藤麟一朗と「世代」の人々』((洋泉社MC新書、2007)
 【注2】高田里惠子『学歴・階級・軍隊―高学歴兵士たちの憂鬱な日常』(中公新書、2008)
 【注3】本名:飯田桃。1944(昭和19)年、現・東京都港区にて出生。東京帝国大学法学部入学。同期に三島由紀夫がいたが、互いに面識はなかった。戦後まもなく、一高生を中心に全国の大学や高校をつなぐ同人誌世代」の創刊に参加。処女作はゾルゲ事件を背景に1940年代を描いた『斥候(ものみ)よ、夜はなお長きや』(河出書房新社、1961)、序文は松田道雄。1960年代後半はベ平連の活動を支え、思想の科学研究会で活動。
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