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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【TPP】の欧米版(TTIP)に反対デモ25万人 ~ドイツ~

2015年10月28日 | 社会
 (1)10月10日、ドイツの首都ベルリンで、米国とEU間で交渉中の貿易投資協定TTIP(環大西洋貿易パートナーシップ)に反対する大規模デモが行われた。
 デモは市民団体が呼びかけたもので、全国から市民25万人が参加し、プラカードやポスターを手に、ブランデンブルグ門や国会議事堂付近を行進した。

 (2)TTIPは、貿易、投資、雇用、情報のやり取りの自由化を目的に、関税撤廃、各種規制の統一、非関税障壁の削減をめざす。いわば欧米版TPPだ。
 2013年7月から交渉が始まり、これまで10回にわたって協議を重ねている。
 TTIPの受け止め方は各国で異なる。欧州委員会が2015年1月に発表した加盟28か国を対象にした世論調査では、ドイツでTTIPに賛成すると答えたのはオーストリアについで2番目に低い39%(EU平均58%)で、反対派41%(同25%)だった。

 (3)ドイツで賛成派が少ない背景に、貿易自由化によって自動車部品や化学製品の輸出増が見込まれる一方、投資家が新たな法規制によって自らの利益に被害がおよぶと判断した場合、投資先の政府を訴えることを認める保護条項(Investor-State Dispute Settlement(ISDS)条項)が盛り込まれたことだ。
 同条項により欧州の厳格な安全法規制が弱められ、環境や消費者保護の側面がないがしろにされるのではないか、という懸念が国民の間に広がっているのだ。

 (4)ドイツではまた、環境保護団体は、米国の遺伝子組み換え食品や成長ホルモン剤が投与された牛肉が、表示義務なしに、店頭に並べられることなどを例に挙げ、消費者の健康と安全が危険にさらされかねない、と警鐘を鳴らしている。

 (5)協議文書が情報公開されないなど、一連の交渉過程の不透明さに加え、米国家安全保障局(NSA)がドイツ国内でメルケル首相をも対象に含む大規模な諜報活動を展開していた・・・・という今年6月に発覚したニュースも、米国とTTIPに対する不信感を増幅した。

 (6)デモの主催者は、次のようにコメントした。
 「デモを通じて大企業の利益だけを追求するTTIP交渉をストップさせ、よりフェアな世界貿易を求めるという市民のメッセージをしっかりと伝えられたと思う」

□神野直子(ジャーナリスト)「欧米版TPP反対に25万人」(「週刊金曜日」2015年10月23日号)
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 【参考】
【TPP】がもたらす影響とは? ~日米共同作業で進む食の荒廃~
【古賀茂明】【TPP】の漂流と「困った人たち」
【TPP】漂流する可能性が出てきた ~大筋合意見送り~
【メディア】とTPPの「壁」を突き崩す調査報道(2)
【メディア】とTPPの「壁」を突き崩す調査報道
【米国】が狙い撃ちする日本の自動車部品メーカー ~カルテル摘発続出~
【TPP】の最大の抵抗勢力 ~米国の議会と社会~
【TPP】というゾンビに食い荒らされる日本
【TPP】というドラキュラの死とTPPのゾンビ化
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~
【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~
【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~
【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知
【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~
【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~
【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~
【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~

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【TPP】がもたらす影響とは? ~日米共同作業で進む食の荒廃~

2015年10月28日 | 社会
 (1)10月5日、強引ともいえる手法でTPP交渉の大筋合意がなされた。
 TPP参加をにらみ、これまで日本政府が進めてきた規制緩和を見れば、食と農が深刻な打撃を受けるのは確実だ。

 (2)遺伝子組み換え(GM)食品・添加物。
 日本政府は相次いで規制緩和を進めてきた。
 2015年6月23日、食品工場などで用いるGM微生物に関して、本来、安全性を確認して申請しなければいけなかったものを、手続きをしないで使えるようにしてしまった。
 その1年前には、大半のGM食品添加物について「安全性審査も申請も必要ない、名称も公表しなくてよい」とする2014年6月27日付け通達を出している。これにより、GM食品添加物の大半が消費者の目から隠されてしまった。

 (3)GM食品表示。
 米国政府や多国籍企業が次のターゲットにしているのが、これだ。
 EUが行っている厳密なGM食品表示によって、ヨーロッパではGM食品が流通していない。これを米国政府や多国籍企業は苦々しく思っている。現在進行中の欧米間自由貿易交渉でも最大の壁になっている。
 日本の表示についても同様で、撤廃に向けて動き出すのは確実だ。

 (4)食品添加物。
 日本政府は、食品添加物そのものに関しても、国際的に広く使われているものの日本では未承認だった添加物を「貿易障壁となる」という理由で、「国際汎用添加物」として扱い、審査を簡略化して次々に認めてきた。その結果、指定添加物は、10年間で、
   2005年 361品目
   2015年 449品目
にまで増え、既存添加物365品目と合わせると814品目になった。
 さらに承認作業を加速させるために、政府による規制・制度改革に係る方針(2011年4月8日閣議決定)に基づき、「食品添加物の指定手続きの簡素化・迅速化」措置がとられたのだ。

 (5)残留農薬問題。
 ポストハーベスト農薬の安全審査の簡略化が狙われている。すでに米国通商代表部(USTR)は、輸入果物の表皮に塗る農薬について、規制緩和を求めている。日本では果物の表皮に農薬を塗ってはいけないから、現在は例外扱いで食品添加物として承認している。
 しかし、米国側から見ると、農薬と食品添加物の二重の安全性審査を経なければならず、手間がかかる。審査の一本化を求めているのだ。
 この次にくるのが、穀物や野菜などの残留農薬の基準緩和だ。以前、GM食品の登場に合わせて、米国で除草剤「ラウンドアップ」の残留基準が緩和、日本の基準も20倍も緩和された。さらに2013年にも米国でラウンドアップの基準が再緩和されたことから、日本での再緩和も必至となっている。

 (6)テレビや新聞は、TPPで安い輸入食品が増え、消費者には朗報だ、という論調がほとんどだ。
 しかし、外国産にはポストハーベスト農薬のほかにも、食肉に使われる
   ・ホルモン剤
   ・抗生物質
   ・放射線照射
など安全性を脅かす要因はたくさんある。
 さらには、安い食品や食材が入れば、日本の食品産業もより安くして対抗しようとする。
 それがもたらすものは、労働者の非正規化、時間外労働の不払い、低賃金といった労働現場の荒廃だ。
 昨年、冷凍食品工場で農薬を混入する事件が起きた。過酷な労働条件に不満を抱いた労働者による犯罪だった。労働現場が荒廃すれば、食の安全が脅かされる。
 TPPは、確実に次のものをもたらす。
   ・安全性を脅かす規制緩和
   ・安全性に問題がある輸入食材・食品・添加物の増加
   ・国産の荒廃

□天笠啓佑「TPPがもたらす影響とは? 日米共同作業で進む食の荒廃」(「週刊金曜日」2015年10月23日号)
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【本】巨悪利権 ~仮構のなかの事実~

2015年10月28日 | 小説・戯曲
 文庫書き下ろし、警視庁公安部・青山望シリーズ第6弾。
 本署によれば、著者は1957年生まれ。中央大学法学部卒業後、警視庁入庁。2004年、警視で退職。警視総監賞など受賞多数。衆議院議員政策担当秘書を経て、危機管理コンサルティング会社を経営。その傍ら作家業を営む。『警視庁情報官』(講談社、2007/改題『警視庁情報官 シークレット・オフィサー』、講談社文庫、2010)で作家デビュー。累計54万部(2015年10月現在)。

 本書に限らず濱嘉之作品に共通の特徴だが、小説としての起伏に乏しくて平板、人物の造型もステレオタイプだ。しかし、細部の事実や時事の解釈、仕事の効率的な運用(理想化されているにせよ)に学ぶところがある。雑学だし、フィクションの一部だが、物語的興味の波にのせられて記憶に残りやすい。
 <例1>中国の金持ちは、日本円に換算して年収5千万円以上の者が3千万人はいる。日本人口の4分の1が富裕層である。彼らは中国国内で税金と固定資産税を逃れている。その一方で、その日の食事にも困る人が12億人以上いる。
 <例2>外国人研修生の給与は、毎月の基本賃金は11万円ほど。そこから家賃5万円(都会ではない地域のボロアパートの6畳1間に4人で)のほか、光熱費・布団・洗濯機・テレビ・ガス器具・電気炊飯器・掃除機などのリース代に加えて流し台の使用料まで引かれる。結果的に、1か月働いても、研修生は2万円以上の借金を抱えることになる。こういう研修生が全国で10万人超もいる。その3分の2が中国人だ。
 <例3>トリカブト毒のアコニチンとフグ毒のテトロドトキシンの配合を調節することで互いの効力を弱めることができる。
 <例4>官職氏名を名乗る義務がある警察官は、制服警察官だ。私服の捜査員にはその義務がない。
 <例5>バーテンダーの中でもトップクラスが着用する白衣のことをバーコートという。白衣を着る理由は多々あるようだが、バーテンダーが出すカクテルがそもそも薬だったと伝えられており、医者、薬剤師同様に店のバーテンダーのトップは白衣を用いるようになったと言われている。

 もう一つ、濱嘉之作品は、警察官の、特に有能なノンキャリアに視座を置く。そこから導き出されるのは、第一に組織から見た個人であり日本の社会であり、第二に権力の側に立つが、権力の中心ではなく周縁に立つ者の視線である。
 こういう視座、こういうものの見え方は、組織や権力を好む者にはもとより、好まない者にとっても、生活力や実践力をつけるのに意外と役立つと思う。それは、戦争や軍隊を好まない者が、戦記や戦史から得るところが大きいことと共通している。

□濱嘉之「巨悪利権」(文春文庫、2015)
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