(1)10月10日、ドイツの首都ベルリンで、米国とEU間で交渉中の貿易投資協定TTIP(環大西洋貿易パートナーシップ)に反対する大規模デモが行われた。
デモは市民団体が呼びかけたもので、全国から市民25万人が参加し、プラカードやポスターを手に、ブランデンブルグ門や国会議事堂付近を行進した。
(2)TTIPは、貿易、投資、雇用、情報のやり取りの自由化を目的に、関税撤廃、各種規制の統一、非関税障壁の削減をめざす。いわば欧米版TPPだ。
2013年7月から交渉が始まり、これまで10回にわたって協議を重ねている。
TTIPの受け止め方は各国で異なる。欧州委員会が2015年1月に発表した加盟28か国を対象にした世論調査では、ドイツでTTIPに賛成すると答えたのはオーストリアについで2番目に低い39%(EU平均58%)で、反対派41%(同25%)だった。
(3)ドイツで賛成派が少ない背景に、貿易自由化によって自動車部品や化学製品の輸出増が見込まれる一方、投資家が新たな法規制によって自らの利益に被害がおよぶと判断した場合、投資先の政府を訴えることを認める保護条項(Investor-State Dispute Settlement(ISDS)条項)が盛り込まれたことだ。
同条項により欧州の厳格な安全法規制が弱められ、環境や消費者保護の側面がないがしろにされるのではないか、という懸念が国民の間に広がっているのだ。
(4)ドイツではまた、環境保護団体は、米国の遺伝子組み換え食品や成長ホルモン剤が投与された牛肉が、表示義務なしに、店頭に並べられることなどを例に挙げ、消費者の健康と安全が危険にさらされかねない、と警鐘を鳴らしている。
(5)協議文書が情報公開されないなど、一連の交渉過程の不透明さに加え、米国家安全保障局(NSA)がドイツ国内でメルケル首相をも対象に含む大規模な諜報活動を展開していた・・・・という今年6月に発覚したニュースも、米国とTTIPに対する不信感を増幅した。
(6)デモの主催者は、次のようにコメントした。
「デモを通じて大企業の利益だけを追求するTTIP交渉をストップさせ、よりフェアな世界貿易を求めるという市民のメッセージをしっかりと伝えられたと思う」
□神野直子(ジャーナリスト)「欧米版TPP反対に25万人」(「週刊金曜日」2015年10月23日号)
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【参考】
「【TPP】がもたらす影響とは? ~日米共同作業で進む食の荒廃~」
「【古賀茂明】【TPP】の漂流と「困った人たち」」
「【TPP】漂流する可能性が出てきた ~大筋合意見送り~」
「【メディア】とTPPの「壁」を突き崩す調査報道(2)」
「【メディア】とTPPの「壁」を突き崩す調査報道」
「【米国】が狙い撃ちする日本の自動車部品メーカー ~カルテル摘発続出~」
「【TPP】の最大の抵抗勢力 ~米国の議会と社会~」
「【TPP】というゾンビに食い荒らされる日本」
「【TPP】というドラキュラの死とTPPのゾンビ化」
「【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~」
「【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~」
「【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~」
「【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~」
「【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知」
「【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~」
「【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~」
「【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~」
「【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~」
「【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加」
「【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~」
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
デモは市民団体が呼びかけたもので、全国から市民25万人が参加し、プラカードやポスターを手に、ブランデンブルグ門や国会議事堂付近を行進した。
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2013年7月から交渉が始まり、これまで10回にわたって協議を重ねている。
TTIPの受け止め方は各国で異なる。欧州委員会が2015年1月に発表した加盟28か国を対象にした世論調査では、ドイツでTTIPに賛成すると答えたのはオーストリアについで2番目に低い39%(EU平均58%)で、反対派41%(同25%)だった。
(3)ドイツで賛成派が少ない背景に、貿易自由化によって自動車部品や化学製品の輸出増が見込まれる一方、投資家が新たな法規制によって自らの利益に被害がおよぶと判断した場合、投資先の政府を訴えることを認める保護条項(Investor-State Dispute Settlement(ISDS)条項)が盛り込まれたことだ。
同条項により欧州の厳格な安全法規制が弱められ、環境や消費者保護の側面がないがしろにされるのではないか、という懸念が国民の間に広がっているのだ。
(4)ドイツではまた、環境保護団体は、米国の遺伝子組み換え食品や成長ホルモン剤が投与された牛肉が、表示義務なしに、店頭に並べられることなどを例に挙げ、消費者の健康と安全が危険にさらされかねない、と警鐘を鳴らしている。
(5)協議文書が情報公開されないなど、一連の交渉過程の不透明さに加え、米国家安全保障局(NSA)がドイツ国内でメルケル首相をも対象に含む大規模な諜報活動を展開していた・・・・という今年6月に発覚したニュースも、米国とTTIPに対する不信感を増幅した。
(6)デモの主催者は、次のようにコメントした。
「デモを通じて大企業の利益だけを追求するTTIP交渉をストップさせ、よりフェアな世界貿易を求めるという市民のメッセージをしっかりと伝えられたと思う」
□神野直子(ジャーナリスト)「欧米版TPP反対に25万人」(「週刊金曜日」2015年10月23日号)
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