goo blog サービス終了のお知らせ 

語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】村野四郎「暗い雨のなかで」

2015年10月14日 | 詩歌
   悩みはしられていない
   愛は学ばれていない  リルケ

 分解された人間が
 ここまでたどった旅路の果に
 やっぱり待っていた
 この黒い死の弥撒
 海のむこうから流れてくる
 熱い物理学の雨の歌だ
 この国の女は 立て膝をついて
 くらい廂の下から
 アヤメの花をながめている
 はてしなく濡れるその紫のあたり
 ひととき ぼんやり
 顔もなければ 名前もない
 ふしぎに艶めく幻影を見るのだ

□村野四郎「暗い雨のなかで」(『亡羊記』、政治公論社、1959):第11回読売文学賞
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【詩歌】村野四郎「モナリザ」
【詩歌】村野四郎「芭蕉のモチーフ」
【詩歌】村野四郎「変な界隈」
【詩歌】村野四郎「塀のむこう」
【詩歌】村野四郎「さんさんたる鮟鱇」
【詩歌】村野四郎「無神論」
【詩歌】村野四郎「鉄棒(二)」
【詩歌】村野四郎「高障害」
【詩歌】村野四郎「競争」
【詩歌】村野四郎「鉄槌投」
【詩歌】村野四郎「拳闘」
【詩歌】村野四郎「棒高飛」
【詩歌】村野四郎「槍投」
【詩歌】村野四郎を読む(4) ~鹿~
【詩歌】村野四郎を読む(3) ~さんたんたる鮟鱇~
【詩歌】村野四郎を読む(2) ~体操~
【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込(二)~


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~

2015年10月14日 | ●佐藤優
 (1)9月21日夕刻(日本時間22日未明)、スイス・ジュネーブの国連人権理事会総会における翁長雄志・沖縄県知事の演説は、沖縄の自己決定権確立に向けて大きな貢献をした。
 注目点は三つ。

 (2)第一、沖縄県の有権者による直接選挙で選ばれた沖縄の最高指導者が、史上初めて、国連の場で沖縄の自己決定権に基づく自己主張をした。
 <翁長知事は「沖縄の米軍基地は第2次世界大戦後、米軍に強制接収されてできた。沖縄が自ら望んで土地を提供したものではない」と述べ、米軍普天間飛行場の返還条件として県内に代替施設建設を求める日米両政府の不当性を主張した。
 また、「沖縄は国土面積の0・6%しかないが、在日米軍専用施設の73・8%が存在する。戦後70年間、いまだに米軍基地から派生する事件・事故や環境問題が県民生活に大きな影響を与えている」と強調した。その上で「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」と訴えた。
 翁長知事は昨年の県知事選や名護市長選、衆院選など県内主要選挙では辺野古新基地建設に反対する候補が勝利したことに触れ「私はあらゆる手段を使い新基地建設を止める覚悟だ」と述べ、建設を阻止する決意を表明した。>【注1】
 在日米軍基地の過重負担によって沖縄人の自己決定権と人権がないがしろにされている、という日本政府による沖縄に対する構造的差別を指摘した上で、あらゆる手段を用い辺野古新基地建設を阻止するという決意を国際社会で宣言した。
 今、沖縄が主張しなければならない核心的論点が盛り込まれている。

 (3)第二、翁長知事が、文法的に正確な英語で、沖縄が置かれた状況を過剰な形容詞や修飾語を用いずに力強く訴えた。
 訴えの時間も2分間だった。沖縄人権委員会の参加者に、
   「沖縄にこういう問題があるのか」
ということを意識させるのに適切な長さだ。国連人権委員会に出席している人びとは、沖縄が抱えている問題について知識を持っていない。こういうときは、細かい話しを長時間展開するよりも短時間のスピーチで、核心的論点のみを強調する方が効果がある。
 近未来に、那覇に外国人記者団を招き、翁長知事が特別会見を行うことを沖縄県に検討してもらいたい。最初の挨拶は琉球語、知事からの冒頭発言は英語で行い。質疑応答は日本語/英語の通訳を用いて行えばいい。
 沖縄の政治家が外国人を相手に記者会見や演説をするときに冒頭発言で、極力、日本語を使わないようにすることは、言語においても植民地主義から訣別するというニュアンスを持つので、意外と重要だ。まさにこういう行事のために辺野古基金を用いるべきだ。

 (4)第三、「寿府代(じゅふだい)」(在ジュネーブ国際機関日本政府代表部)の対応が、予想外に弱かった。小田部陽一・特命全権大使ではなく、格下の嘉治美佐子・次席大使に反論を行わせた。
 「国連代」(在ニューヨーク国際連合日本代表部)には大使が3人、寿府代には大使が2人いる。翁長演説に日本政府が本気で反論するつもりだったならば、小田部大使が出てくるのが筋だ。
 外務省OBによれば、小田部大使は逃げたらしい。参事官か書記官対応では軽すぎるとも考えて。要するに、筋悪案件だから逃げたのだろう。
 筋悪案件とは、外務省の業界用語で、面倒でエネルギーを費やす割に評価が低い仕事を指す。筋悪案件は消極的権限争議の対象となり、外務官僚は逃げまわる。
 同じ外務省OBによれば、嘉治大使は有能で、外務省ではリベラルな人権派で通っている難民問題の第一人者だ。民族自決権や少数民族の人権についても通暁しているはず。本省から訓令がくるか、寿府代から請訓(訓令を求めること)して、嘉治大使は、東京から言われたことをそのまま読み上げただけだと思う。腹の中では面倒なことに巻き込まれたと思っているはずだ。要するに、寿府代は腰が引けているということだ。
 嘉治大使の『国際社会で働く--国連の現場から見える世界』(NTT出版、2014)を読むと、人権派官僚であることがよくわかる。沖縄の置かれている状況が、国際的人権基準に照らしてどれほど深刻な状況であるかを理解できないはずがない。また、沖縄が自己決定権を主張し、それが民族自決権の主張にまで至ると、どれほど面倒になるかについても嘉治大使を含む寿府代に勤務する外務官僚はよく理解しているはずだ。
 ちなみに、嘉治大使は前記の本で、次のように書いている。
 <人権問題は、人権理事会のほか、その報告を受けて、国連総会の第三委員会で扱われます。第三委員会で採択された決議が総会本会議で採択されることにより、国連総会としての正式の決議となります。>
 沖縄県幹部は嘉治大使に電話して、「あなたの本に書いてあるとおりに事態を進捗させたいのだけれど、どういう点に留意したらよいか」と訊いてみるとよい。外務官僚であれ、本を出した以上は、その内容に対する質問に誠実に答えるのが著者としての職業的良心だ。

 (5)翁長演説に対する中央政府の反応は、予想されたこととはいえ、無礼至極だ。
 <菅義偉官房長官は24日午前の記者会見で、翁長雄志知事が国連人権理事会で米軍普天間飛行場の移設問題に関する政府の対応を批判したことについて「人権や基本的自由の保護促進などを主な任務とする人権理事会で、沖縄の米軍基地をめぐる問題が扱われたことには強い違和感を持っている」と不快感を示した。
 菅氏は「政府は沖縄の基地負担軽減、沖縄振興に全力を挙げている。普天間飛行場の移設は19年間、多くの沖縄県関係者の協力を得ながら適正な手続きに沿って進めている」と政府の立場を強調。その上で「そうしたことを踏まえない翁長知事の主張は国際社会では理解されない」と批判した。>【注2】
 典型的な植民地主義者の発言だ。
 いくら対話を繰り返しても、このような人の世界観は変化しない。沖縄に求められるのは、国際圧力によって、菅官房長官のような植民地主義者の差別政策を封じ込めることだ。

 【注1】記事「新基地は「人権侵害」 知事、国連で演説 辺野古阻止訴え」(「琉球新報」電子版 2015年9月22日)
新基地は「人権侵害」 知事、国連で演説 辺野古阻止訴え
 【注2】記事「知事演説「強い違和感」 菅官房長官」「琉球新報」電子版 2015年9月24日)
知事演説「強い違和感」 菅官房長官

□佐藤優「沖縄の自己決定権確立に大貢献した翁長国連演説 ~佐藤優の飛耳長目 第112回~」(「週刊金曜日」2015年10月9日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~

2015年10月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)10月10日は目の愛護デーだ。1931年に定められた「視力保存デー」にはじまる。失明予防のための、目の記念日だ。

 (2)中高年が視覚障害に陥る原因として、すぐさま念頭に浮かぶのは緑内障だ。
 厚生労働省の調査によれば、40歳以上の20人に1人が緑内障患者と推計される。うち8~9割は受診もしていないという。進行が緩やかな上に、片目に発症しても正常な片目が欠けた視野を補うので、症状に気づかないのだろう。

 (3)イタリア・ミラノ大学の研究グループが、
   欧州の大学病院7施設で受診した緑内障患者の、
   失明率を調査したところ、
 初診時に失明していた患者(失明の定義:すでに視力が0.05未満、あるいは一部の視野が消失)の割合は、
   片眼失明11.0%
   両眼失明 1.6%
に及んだ。

 (4)(3)の7.5+-5.5年の追跡期間終了後では、
   片眼失明15.5%
   両眼失明 3.6%
に増加。年間1.1%の割合で、少なくとも片眼を失明する計算になる。
 このうち、137眼(97例)は、「原発開放隅角緑内障(POAG)」が原因の失明だった。ちなみに、POAGは日本人の緑内障患者の半数を占めている。
 これら症例の多くは、初診時にすでに視野が消失し、検査値上の失明危険ゾーンにあった。
 また、眼圧は17.1+-6.6mmHgと高めだった(日本人の正常値は10~20mmHg)。
 追跡期間中のデータを見ると、眼圧が年々改善されたにもかかわらず、視野検査のデータは急激に悪化していた。その悪化度は失明を免れた集団の約5倍にも上る。

 (5)研究者は、失明のリスク因子として、
   「初診時に視野消失があること、眼圧が高いこと、またすでに高齢であること」
をあげている。
 緑内障は、根本的な治療手段がないため、あの手この手で進行を遅らせるしかない。早期発見が何より効果的な失明予防になるのだ。
 特に眼圧が正常範囲でも症状が進む「正常眼圧緑内障」は、進行が極めて緩やかなので「自覚したときは手遅れ」になりかねない。
 「老眼年齢」の人は、眼鏡を作るついでに緑内障検査を一通り受けておくとよい。 

□井出ゆきえ(医学ライター)「目の愛護デー 緑内障による失明を予防 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.271~」(週刊ダイヤモンド」2015年10月17日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする