語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【心理】しぐさから心を読みとる ~ボディランゲージ~

2015年10月24日 | 心理
(1)相手の話に「常に100%の信を置く」ことができるわけではない。そもそも、本人が自分のことを全部わかっているわけではない。そこで、ボディランゲージの研究がとても重要になる。
 無意識下、潜在意識に真実はある。全ての意識を100とすると、
  ①自分自身で感じられる顕在意識・・・・10~20%
  ②表に無意識に出てくる潜在意識・・・・70%
  ③本人にも他人にもわからなくて無意識にすら表に出てこない潜在意識・・・・10%
 つまり、自分のことでありながら一生知ることのない意識が10%もある。それほど人間の精神は、複雑な構造をなす。意識的に出てくる「言葉」だけに信を置くわけにはいかない。

(2)何事も、手がかりが一つだけで判断してはならない。
 嘘をつく時、人は左上を無意識に見るものだ。しかし、胴体には緊張や拒絶が見られない場合、左上を見たからといって単純に「嘘をついた」とは言えない。総合的な判断が求められる。左上を見たから嘘をついているらしいが、なぜ緊張していないのか・・・・を考えなければならない。

(3)初めの段階で、相反する状態の見極めが必要だ。
 心理学的には、相手の態度が「拒絶」であるのか「許容」であるのかが重要だ。また、「緊張」であるのか「緩和」であるのかも重要だ。これは初期の重要な「見極め」だ。どちらのボディランゲージをしているかによって、その後の全てのボディランゲージの解釈が影響される。
 <例>「拒絶」のボディランゲージをしている場合は、基本的に全てがノーだ。本人は無意識だが、自身を開示する気は全くないと心理学的には言える。
 <例>「緊張」状態のボディランゲージの場合も同様だ。緊張は、いらぬ要素まで持ち込む。真実を話した場合でも、無意識の緊張状態が不必要なボディランゲージをもたらし、解釈に余計なものが混ざってしまうのだ。この見極めが大事だ。
 そして、緊張状態を「許容」と「緩和」にまで引き上げることが、また重要になる。

(4)嘘をつこうとするボディランゲージ(実践例)。
 嘘をつこうとする人は、無意識に緊張状態になる。特に「上半身」に顕著だ。テレビなどでは、そわそわしたり、大袈裟な身振り手振りで嘘をつくと言う描写があるが、実際には「真逆」だ。嘘がばれないように、と思うと人は、無意識に固くなる。
 さらには、目が泳ぐような状態を無くそうと、無理に凝視したりする。
 しかし、自然に見つめている場合とは違い、この場合は無理にやっているのでだんだんと涙目になってくる。
 身振り手振りをしたとしても、肩が緊張状態の場合は、嘘をついている可能性が極めて高い。

(5)相手の好意を探るボディランゲージ(実践例)。
 相手の好意を探るためには、まず基本の「ポジティブ」ボディランゲージと「ネガティブ」ボディランゲージを知る必要がある。
  ①ポジティブ・ボディランゲージ・・・・心を開いている状態。身を乗り出したり、手足が組まれていたり、狭いポジションにないこと、時間的に長いアイコンタクト、テリトリーを狭くとっていること、などが挙げられる。
  ②ネガティブ・ボディランゲージ・・・・テリトリーを広くとっている、自身の顔周辺を必要以上に触る、手足が縮こまっている、視線が合わない、などが挙げられる。
 それぞれのボディランゲージを把握しておき、初対面の相手や、好意的かどうかを知りたい相手に使う。また、ボディランゲージを逆手にとって、好意を持たせるようもっていくこともできる。
 相手に対してポジティブ・ボディランゲージを使用していくと、相手もだんだんとポジティブ・ボディランゲージを使うようになってくる。いわゆるミラー効果【注】を活用するのだ。
 自分が相手に示すボディランゲージ次第で、相手のボディランゲージを導き出し、無意識下のボディランゲージから相手の気持ちを形作っていくことも可能なのだ。

(6)視線は最も重要なボディランゲージ(実践例)。
 「目は口ほどに物を言い」と言われるが、視線はさまざまな情報を読みとる重要なボディランゲージだ。
 ただ、組み合わせが重要だ。
 仮に視線を下に落としたとする。下を向いた場合、興味がない、嫌いといったことも考えられるが、口元が緊張してない場合、恥ずかしがっているだけだともいえる。この場合、好意から下を向いた訳だ。
 また、直視し、凝視している場合も、口元が緊張しているか否かで、怒りであるのか、積極的な好意の表現であるのか、解釈が変わってくる。この組み合わせと、心理学的なアプローチさえ理解しておけば、視線は相手の意識、無意識が実によくわかるボディランゲージの一つとなる。

(7)付き合いが長い場合はお約束のボディランゲージ(実践例)。
 付き合いが長い相手とのコミュニケーションにおいて、お約束のボディランゲージを覚えることは、人付き合いを円滑にする上で、極めて重要なことだといえる。
 相手の自分に対する感情などを推しはかるだけではなく、それ以外の部分で利用できることも実に多い。
 <例>職場の上司が肩口を意味もなくさする。一見無意味なしぐさに見えるが、上司は心中で、「この話はこれで終わり」と無意識にボディランゲージしているのだ。
 最初はわからないかもしれないが、付き合いが長くなるうちに心理学的に読み解けば、これが上司にとっての「無意識の合図」であると分かってくる。
 いったん分かってしまえば、それを踏まえて対応(言動)すればよく、上司との関係は極めて円滑になるはずだ。これもボディランゲージの利用の一つなのだ。

(8)ボディランゲージの結果、状況がどう変わったかで推しはかる(実践例)。
 ボディランゲージは、無意識に相手がどんな動作をとるかで物事を推しはかるものだが、その行動の結果、状況がどう変化したかでも推しはかることができる。
 <例>相手が好意を持っているかどうかががわからない異性とお酒を飲みに店に行ったとする。相手が何気なく置いた酒のグラスが、どこに置かれたかでも相手が自分に抱く好感度がわかる。つまり、2人の間の中心にグラスを置くか、端に置くかで無意識に相手との隔たりを表すのだ。
 商談でも同様だ。無造作に置かれた書類をまとめ、対面する相手との間から排除しようとしたら、それは相手との隔たりを無くそうとしているボディランゲージだ。商談成立の見込みがある。
 このようにボディランゲージを心理学的に見た場合、そのボディランゲージの結果も判断の重要な要素になる。

(9)まとめ
 今やボディランゲージは、行動心理学の見地からも重要な位置を占めている。犯罪捜査などにも欠かせない要素なのだ。ボディランゲージは、それだけ心理学的に真理を見出す役目を果たしている。実際の捜査などに使われるほど、人の無意識や潜在意識を探る上で役立つ手段なのだ。
 ただ、全体を総合的に見ていかねばならない。簡単にはマスターできない。
 しかし、だんだんと慣れていく。慣れてくると、かなりの確度で相手の無意識的行動を読解できるようになる。
 また、ミラー効果【注】を利用して相手の気持ちをコントロールすることさえ可能だ。
 しっかり覚えて、上手に利用すれば、さまざまなシーンで活用できる。もちろん、人付き合いの面で、実に円滑な交際が実現できるようにもなる。非常に有益だ。

 【注】ミラーリング・エフェクト、同調効果。簡単にいえば、「無意識に好きな人と同じ動作をとってしまう」心理のこと。あるいは、「自分と同様のしぐさや動作を行う人に対して好感を抱くこと」。それを応用して、初対面の人から憧れの先輩まで、自分に対する好感度を簡単にアップさせることができる。

□「ボディランゲージから相手の心理を読み解く7つの心理学
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【経済】国家戦略特区で起きた肝移植問題 ~神戸~

2015年10月24日 | 社会
 (1)国家戦略特別区域諮問会議(議長:安倍晋三・首相)が東京圏、関西圏など6区域を国家戦略特区に指定したのは昨年3月だ。を
 「関西圏」に属する神戸市は、さっそく資料「神戸市の国家戦略特区事業について」を発表し、まだ開院していない民間病院「神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)」を紹介している。
 <世界的な生体肝移植の権威である田中紘一郎先生が理事長を務める「神戸国際フロンティアメディカルセンター(KIFMEC)」病院(26年10月開院予定)において外国人医師を受け入れ、神戸周辺で働く外国人研究者・ビジネスマンなどに対して医療を提供する>。
 理事長兼院長に就任する田中医師が「元京都大学病院長」として写真入りで紹介されていた。

 (2)2014年11月に開院すると、KIFMECは積極的に生体肝移植手術を実施した。健康な人を臓器提供者(ドナー)とし、肝臓が悪い患者に肝臓の一部を移植する手術だ。
 ところが、わずか半年足らずの2015年4月、専門医らをメンバーとする日本肝移植研究会から手術中止を求められる事態に立ち至った。
 この時点でKIFMECは、8人に移植手術をしたが、このうち4人(2人は子ども)が術後わずか1ヶ月程度で死亡した。
 日本肝移植研究会は、医療体制が十分でない、と調査報告書で警告し、3人の死亡患者は究明できた可能性がある、とも指摘した。
 KIFMEC側は、「最善の努力を尽くして診察を行ってきた」と反発。逆に調査の手法を批判した。
 専門医同士の対立が解けないまま、KIFMECは一時中断した生体肝移植手術を6月3日に再開し、翌々日に患者が死亡する、という経緯もあった。

 (3)一方、この過程でKIFMECの別の顔が浮かびあがった。
 KIFMECがインドネシアの病院で関わった生体肝移植でも3人が術後1ヶ月程度で死亡したことが判明。この手術は、「医療の海外展開」を掲げる経済産業省が支援する事業の一環だった。
 事業費5,900万円のうち3,300万円がすでに支払われていた。じつは、KIFMECの日本での手術後に死亡した患者4人(のちに5人)のうち2人がインドネシア人で、この経産省支援事業で来日した患者だった。【5月9日付け「読売新聞」夕刊】。

 (4)そもそもKIFMECが病院を開設する際、費用の4割を出資したのは三井物産だ。同社は、当初はシンガポールの三井物産関連の生体肝移植専門病院から患者を紹介する計画があった(実際には行われなかった)【「週刊朝日」6月12日号】。
 要するに、KIFMECの移植手術は「ビジネスとしての医療」を推進する国家と企業丸抱えの“事業”なのだ。

 (5)長らく手術中断を余儀なくされたKIFMECは、9月24日、田中理事長が会見し、今後も生体肝手術を継続する方針を明らかにした。
 もはや問題は田中医師個人の力量などではない。医療をビジネスとみなし、国際展開する医療政策そのものの正当性が問われている。

□佐々木実「国家戦略特区で起きた肝移植問題 正当性問われる“国策手術事業”」(「週刊金曜日」2015年10月9日号)
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