語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】村野四郎「登攀」

2015年10月20日 | 詩歌
 僕らは地表の凸凹(ジグザグ)の中にはいった
 麻痺させるほど巨きい垂直が屹立し
 岩燕が突きあたっては落ち
 耳元で軽銀製(アルミ)のコップが小さい音をたてた
 僕らは地表の背に立った
 夕雲が足元で斑(ふ)の絨毯をうごかした
 ピイクの風が友の裳裾をめくり上げると
 彼女は赤くなって
 それを抑えるのであった
 山岳は僕らを翻弄した
 それは抜きがたい力であった
 しかし遂に僕らは征服したのだ
 僕らを此処までも高く支えたもの
 それは何であったか
 振りかえると 
 一人の強力が其処にいた
 背中に
 僕らの山岳をのせて 

□村野四郎「登攀」(『体操詩集』、1939)
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 【参考】
【詩歌】村野四郎「暗い雨のなかで」
【詩歌】村野四郎「モナリザ」
【詩歌】村野四郎「芭蕉のモチーフ」
【詩歌】村野四郎「変な界隈」
【詩歌】村野四郎「塀のむこう」
【詩歌】村野四郎「さんさんたる鮟鱇」
【詩歌】村野四郎「無神論」
【詩歌】村野四郎「鉄棒(二)」
【詩歌】村野四郎「高障害」
【詩歌】村野四郎「競争」
【詩歌】村野四郎「鉄槌投」
【詩歌】村野四郎「拳闘」
【詩歌】村野四郎「棒高飛」
【詩歌】村野四郎「槍投」
【詩歌】村野四郎を読む(4) ~鹿~
【詩歌】村野四郎を読む(3) ~さんたんたる鮟鱇~
【詩歌】村野四郎を読む(2) ~体操~
【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込(二)~


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