語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】村野四郎「モナリザ」

2015年10月13日 | 詩歌
 つまらぬ表情はやめてください
 そのような精神の痙攣は無意味です
 どうぞ其処を退いてください
 あなたが居るので
 風景が見えない
 あなたはいつも遮るのです
 あなたの背景と ぼくらの前景とを
 あなたは まったくぼくらの眼帯
 そのかげで
 ぼくらの眼は充血している
 あなたが拡げる 漠然とした
 秘密の豊穣のうしろには
 永遠など在りはしない
 ぼくらが知りたくおもうのは
 いたましい変化の実相
 あなたが背後にかくしている
 荒涼たる断崖と 新しい骨だ
 大きな表情のかげで
 ぼくらの表情は見えないだろうが
 あなたのおかげで ぼくたちには
 ぼくらの風景が見えないのだ

□村野四郎「モナリザ」(『亡羊記』、政治公論社、1959):第11回読売文学賞
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 【参考】
【詩歌】村野四郎「芭蕉のモチーフ」
【詩歌】村野四郎「変な界隈」
【詩歌】村野四郎「塀のむこう」
【詩歌】村野四郎「さんさんたる鮟鱇」
【詩歌】村野四郎「無神論」
【詩歌】村野四郎「鉄棒(二)」
【詩歌】村野四郎「高障害」
【詩歌】村野四郎「競争」
【詩歌】村野四郎「鉄槌投」
【詩歌】村野四郎「拳闘」
【詩歌】村野四郎「棒高飛」
【詩歌】村野四郎「槍投」
【詩歌】村野四郎を読む(4) ~鹿~
【詩歌】村野四郎を読む(3) ~さんたんたる鮟鱇~
【詩歌】村野四郎を読む(2) ~体操~
【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込(二)~
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【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~

2015年10月13日 | ●佐藤優
 ①NHKスペシャル取材班『老後破産 長寿という悪夢』(新潮社 1,300円)
 ②大城立裕『レールの向こう』(新潮社 1,600円)
 ③栗原康『現代暴力論』(角川新書 800円)
   

 (1)①は、現在55歳の佐藤優にとって、ひとごとでない近未来の地獄絵を描いている。
 <ある日、福祉窓口に駆け込んできた80代の女性は「もう暮らしていけない」と訴えた。質素にひとり暮らしをしてきた女性のもとに失業した息子が転がり込んできたことが「老後破産」のきっかけだった。
 50代でリストラされた息子は、家賃が払えなくなり、実家に戻ってきた。故郷の実家には、父親が亡くなった後、母親がひとりで暮らしていた。農村の旧家だから部屋は余っている。
 しかし、母親が息子の出戻りを喜んだのは最初だけ。除々に生活が苦しくなっていった。
 母親の年金は、8万円余りだ。息子の再就職は決まらず、2人分の生活費を賄っていたら、赤字が続き、わずかな貯えはすぐになくなった。
 それから半年後--本当の不幸がやってきた。息子が脳梗塞で倒れたのだ>
 行政は頼りにならないので、自分の身は自分で守るというリアリズムで将来に備えるしかないようだ。

 (2)②は、今年同名の短編小説で川端康成文学賞を受賞した大城立裕の傑作だ。大城は、
 <私としては私小説はめずらしい。ただ、妻が思いがけなく脳梗塞という病気を患い、それを見守っているうちに、それを作品にしなければならない衝動を抑えることができなかった。といっても、単なる病妻ものにはしたくない、と思っているところへ、亡友への思いと絡めることができ、それが独自の普遍性を生んで。川端康成賞を受けることができた。
 (中略)数十年間、「沖縄」にこだわってきて、「沖縄の私小説を書いています」と冗談を言ったりするが、この機会に両作品で、私小説の普遍的存在というものが見えてきた気もする>
 と記す。沖縄を理解するための必読書だ。

 (3)現在、日本で生きていくのは息苦しい。そのような状況を暴力的な爆発によって一気に転換しようとするアナーキストの心情を③は語る。
 <でも、ほんとのところ、自分がしんそこひどい目にあわされたり、まわりがひどい目にあわされたりしていたら、どうしようもないほど義憤に駆りたてられて、アイデンティティも社会的地位もなにもかもふり棄てて、行動を起こしてしまうものだ。会社をメチャクチャにしたり、商店を破壊したり、わるい人たちをぶん殴ったり、場合によっては殺してしまうこともあるかもしれない>
 現実の社会に存在するさまざまな問題に対する解決能力を、政府も国会も有していない。そうなると、直接行動に訴えて突破口を開くという動きが現実化する可能性がある。
  
□佐藤優「現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書 第120回~」(「週刊ダイヤモンド」2015年10月17日号)
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 【参考】
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
【佐藤優】恐ろしい本 ~元少年Aの手記『絶歌』~
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? ~沖縄~
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか ~日本の「曖昧戦術」~
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
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【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~

2015年10月13日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)長時間労働は、心血管より脳血管にダメージを与えるらしい。医学誌「ランセット」オンライン版によれば。

 (2)労働時間と健康との関連を調べた研究は多い。
 心筋梗塞など冠動脈疾患と労働時間との関連では、週35~40時間を1とすると、それ以上で、1.4倍に上昇すると言われている。
 ただし、これらの結果は
   「社会経済的な地位(SES)が高い職種のほうが、長時間労働が多い」
   「冠動脈疾患は、SESが低い階層の発生率が高い」
という“現実”に即していない、という批判があった。
 また、冠動脈疾患に比べ、寝たきり要因になりやすい脳卒中と労働時間との関連ははっきりしていない。

 (3)そこで今回、英国の研究チームが欧州、米国、オーストラリアの3地域で実施された複数の研究結果を系統的に解析し、労働時間と脳・心血管疾患との関連を調べた。本研究における定義は次のとおり。
   ①標準労働時間・・・・35~40時間/週
   ②長時間労働・・・・55時間/週
 総コレステロール値、体格指数、生活習慣などの影響を排除して解析した結果、
   冠動脈疾患の発症リスク・・・・①に比べ②は1.13倍に上昇
   脳卒中の発症リスク・・・・①に比べ②は1.33倍に上昇   
 しかも脳卒中の場合、次のように労働時間の長さに相関してリスクが上昇した。
   労働時間41~48時間/週・・・・1.10倍
   労働時間49~54時間/週・・・・1.27倍
   労働時間55時間/週・・・・1.33倍(再掲)
 SESと冠動脈疾患との関連では、限定された結果だが、長時間労働リスクが、
   SESの高い職種・・・・0.87
   中間層・・・・1.22
   地位が低い職種・・・・2.18
 著者は、「長時間労働によるリスクは、冠動脈疾患より脳卒中のほうが大きい」と結論している。

 (4)脳血管疾患と冠動脈疾患。
 予防法はほぼ同じだが、脳卒中の焦点をあてるなら、血圧の厳格な管理と適度な水分摂取で血液サラサラを心がけること。
 塩分過多は御法度。
 日本人の塩分摂取基準は8g/日だが、本気で疾病予防を考えるなら。世界保健機関推奨の5g/日にとどめるべきだ。
 残業しないのが一番だが。

□井出ゆきえ(医学ライター)「長時間労働は脳卒中リスク 週41~48時間でも上昇 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.269~」(週刊ダイヤモンド」2015年10月3日号)
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 【参考】
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~
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