ヘンデル:歌劇「アグリッピーナ」
指揮:ハリー・ビケット、演出:デイヴィッド・マクヴィカー
ジョイス・ディドナート(アグリッピーナ)、ケイト・リンジー(ネローネ)、ブレンダ・レイ(ポッペア)、イェスティーン・デイヴィーズ(オットーネ)、マシュー・ローズ(クラウディオ)
2020年2月29日 ニューヨーク・メトロポリタン 2021年5月 WOWOW
ヘンデル(1685-1759)が1709年に発表したオペラ・セリア、ヘンデル24歳であるから、この作曲家イメージゆより早熟のようである。
ローマ時代、皇帝クラウディオが外地で死んだとの報があり、後継者を誰にするかということになるが、忠実な部下オットーネをという声に対し、皇后アグリッピーナは連れ子のネローネ(ネロ)をと企む。ところがクラウディオは死んでおらず、さてと構図はこじれてきて、オットーネと相思相愛のポッペアも加わり、なんとも混乱した話が進行する。
この登場人物だと、最後は悲劇的と想像するのだが、幕間で誰かが語っていたように、実は喜劇であって、みな色と権力のはざまで葛藤を繰り広げる、その強さと可笑しさ、それを盛り上げる音楽がこの作品の見どころ、聴きどころであり、特にライヴで映えるものとなっている。
演出は、古代の人たちが現代の霊廟に現れて、というしつらえになっていて、衣装、ダンス、男女のからみなど、時代を超えてなんでもありの中、マクヴィカーさすがに楽しませてくれる。
舞台によく現れる長く細い階段、これを上り下りするのは歌手も大変だが、それと大きな赤いマリリン・モンローを想像させる唇、もちろん権力と色欲、わかっていても効果的である。
歌手陣は、ディドナートを中心によくまとまり、からみ、バランスがとれているといったらいいか。ディドナートは少し久しぶりだからか、これまでのすっきりしたイメージより豊満な感じが出ていてピタリだし、ポッペアのレイも風貌はそれに負けない。オットーネはカウンターテナーのデイヴィーズ(名手らしい)で、ポッペアに対して体躯が小さいのは別として、ここにこの声というのは全体の中でいいアクセントになっている。この時代はこういう役割・編成が多かったのだろうか。
クラウディオのローズは巨体とだまされそうな感じがユーモラス。そしてここで一番の話題性、となったのはケイト・リンジーのネローネで、変な性格の、まだ子供だがワルという子を演技たっぷり、しかし歌は見事に演じ切る。
実は以前からファンで、ケルビーノ、「ホフマン物語」のニクラウスなどで注目していた。ズボン役といっても、他の;歌手のように衣装の下は女性という感じがなく、現在他に変わる人がいない感じである。
ヘンデルの音楽は他の同じような繰り返しでしつこく続くオーケストラは他のオペラと同様だが、歌を支えるチェンバロなどの部分はより表現力があると感じた。
歌が筋の進行にくらべ長々と繰り返して続くのは、当時の聴衆の楽しみに沿ったものだったのだろう。
指揮のビケットは飽きさせない進行、酒場を想定した場面では舞台上でチェンバロ(即興?);色っぽいダンスを盛り上げていた。
初めて観たものだが、こういう発見は楽しい。
指揮:ハリー・ビケット、演出:デイヴィッド・マクヴィカー
ジョイス・ディドナート(アグリッピーナ)、ケイト・リンジー(ネローネ)、ブレンダ・レイ(ポッペア)、イェスティーン・デイヴィーズ(オットーネ)、マシュー・ローズ(クラウディオ)
2020年2月29日 ニューヨーク・メトロポリタン 2021年5月 WOWOW
ヘンデル(1685-1759)が1709年に発表したオペラ・セリア、ヘンデル24歳であるから、この作曲家イメージゆより早熟のようである。
ローマ時代、皇帝クラウディオが外地で死んだとの報があり、後継者を誰にするかということになるが、忠実な部下オットーネをという声に対し、皇后アグリッピーナは連れ子のネローネ(ネロ)をと企む。ところがクラウディオは死んでおらず、さてと構図はこじれてきて、オットーネと相思相愛のポッペアも加わり、なんとも混乱した話が進行する。
この登場人物だと、最後は悲劇的と想像するのだが、幕間で誰かが語っていたように、実は喜劇であって、みな色と権力のはざまで葛藤を繰り広げる、その強さと可笑しさ、それを盛り上げる音楽がこの作品の見どころ、聴きどころであり、特にライヴで映えるものとなっている。
演出は、古代の人たちが現代の霊廟に現れて、というしつらえになっていて、衣装、ダンス、男女のからみなど、時代を超えてなんでもありの中、マクヴィカーさすがに楽しませてくれる。
舞台によく現れる長く細い階段、これを上り下りするのは歌手も大変だが、それと大きな赤いマリリン・モンローを想像させる唇、もちろん権力と色欲、わかっていても効果的である。
歌手陣は、ディドナートを中心によくまとまり、からみ、バランスがとれているといったらいいか。ディドナートは少し久しぶりだからか、これまでのすっきりしたイメージより豊満な感じが出ていてピタリだし、ポッペアのレイも風貌はそれに負けない。オットーネはカウンターテナーのデイヴィーズ(名手らしい)で、ポッペアに対して体躯が小さいのは別として、ここにこの声というのは全体の中でいいアクセントになっている。この時代はこういう役割・編成が多かったのだろうか。
クラウディオのローズは巨体とだまされそうな感じがユーモラス。そしてここで一番の話題性、となったのはケイト・リンジーのネローネで、変な性格の、まだ子供だがワルという子を演技たっぷり、しかし歌は見事に演じ切る。
実は以前からファンで、ケルビーノ、「ホフマン物語」のニクラウスなどで注目していた。ズボン役といっても、他の;歌手のように衣装の下は女性という感じがなく、現在他に変わる人がいない感じである。
ヘンデルの音楽は他の同じような繰り返しでしつこく続くオーケストラは他のオペラと同様だが、歌を支えるチェンバロなどの部分はより表現力があると感じた。
歌が筋の進行にくらべ長々と繰り返して続くのは、当時の聴衆の楽しみに沿ったものだったのだろう。
指揮のビケットは飽きさせない進行、酒場を想定した場面では舞台上でチェンバロ(即興?);色っぽいダンスを盛り上げていた。
初めて観たものだが、こういう発見は楽しい。