「Wの悲劇」 (1984年、108分)
製作:角川春樹、監督:澤井信一郎、原作:夏樹静子、音楽:久石譲
薬師丸ひろ子、世良公則、三田佳子、三田村邦彦、高木美保、蜷川幸雄、南美江
クレジットが流れるところで使われている「WOMAN」(作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂)を時々カラオケで歌うのに、この映画は見ていなかった。
「Wの悲劇」という劇の上演とその周囲で起きる出来事という設定であるから、全体が舞台みたいな感じである。劇中でない台詞もそれっぽいが、それはあまり気にならない。それがこの脚本の狙いでもあるのだろう。
さて、そういう舞台みたいな台詞が飛び交うなか、気にならないどころか、それが一番自然で魅力あるものになっているのが薬師丸ひろ子である。
劇団では下っ端で、今回の上演でようやく端役とプロンプターをもらったあまり要領のよくない目立たない子、ドラマだからいずれ上を追い越してとも思わせない。脚本の上でもそうでなければおかしいし、またそれが彼女が演じると可愛くていい、という感じになっている。
だから終盤、顔をひっぱたかれて怒り「女優なんだから」という台詞、そして最後に後姿から振り返って見事に決めるポーズが、効果的におさまる。
舞台「Wの悲劇」の筋も、映画全体の進行にあわせて少しずつ明かされていくという。これも効果的である。
薬師丸ひろ子二十歳で、二十歳の役、この時すでにスターなのだが、こういう演技ができる人を見出し、一連の企画で起用した角川映画、やはり勢いがあったか。
演劇中心ということからか、蜷川幸雄の指導、演出家として本人も出演、そしてゴシップを追いかける人たちにも何人か本物を起用、手間をかけている。