「ポーカー・フェース」 沢木耕太郎 著 (2011年、新潮社)
特定のテーマに沿った長編、あるいは連作ではなく、このようなエッセイ集というのは、この著者には多くない。3作目である。
前の二つ「バーボン・ストリート」、「チェーン・スモーキング」も読んでいるが、今回はより著者の頭の中で発酵してでてきたという感がある。ただそれで、こちらつまりファンからすると、読み進む快感から少し遠くなったようにも思える。
中であげれば、高峰秀子の晩年を書いた「挽歌、一つ」だろうか。
ところでこの「ポーカー・フェース」というタイトルは、前の二つがあまり著者自身とそぐわないのにくらべ(確か沢木はタバコを喫わない)、そのイメージにあっている。この本でも、ギャンブルにはなじんでいないといいいながら、バカラは例外として書いたものがあるが、以前にもマカオやラスヴェガスだったか、ギャンブルについての詳細な観察があった気がする。
やはり次は、何か一つのテーマを追いかけたずっしりしたものを期待したい。