メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

「オリエント急行殺人事件」(1974)

2021-09-10 10:05:50 | 映画
オリエント急行殺人事件 (Murder on the Orient Express、1974英米、128分)
監督:シドニー・ルメット
アルバート・フィニー、リチャード・ウィドマーク、アンソニー・パーキンス、ジョン・ギールグッド、ショーン・コネリー、ヴァネッサ・レッドヅレーヴ、ローレン・バコール、イングリッド・バーグマン
 
アガサ・クリスティーのあまりにも有名な同名作品の映画化で、この原作ではおそらく初めてだろう。原作を読んですぐにリドリー・スコット監督の2017年版、そして最近再放送で見たTVシリーズ版(2010)、ようやく今回これを見た。つまり映画としては順序が逆であった。
 
ルメットとしてもかなり苦労したかもしれない。オリエント急行のセットに、おそらく制作側から提示されたオールスター・キャスト、しかし実はかなり細かく暗い陰湿な背景のかさなり、名探偵ポアロの推理とさばきといえども、仕上げていくのは簡単ではない。
 
最初にリンドバーグ事件にヒントを得たといわれる背景を出しているのはどうかなと思うのだが、この作品が通常の謎解きものとは違うという考えなのだろう。
そのあとの展開は特にどうということはないが、細部が解明されていくにつれて、こうだったという場面が後から初めていろいろ出てくるのはちょっと興ざめなところがある。
 
アルバート・フィニーはこのときまだ若かったらしいが、メイクと(無理して?)太った体躯で演ずるポアロ、しゃべりが強くせかせかしているのが気になった。
 
きらめくスターたちの中では、アンソニー・パーキンス、イングリッド・バーグマンが役としっくりあっていてここに配した価値があった。殺されるラチェットのリチャード・ウィドマーク、1960年代に西部劇を中心になじみがあったから、不思議ななつかしさ。
 
乗客の中でキーになるハバード夫人はローレン・バコール、好きな女優だけれど、彼女だと最初から重要人物という感じにどうしてもなりすぎてしまった。これは2017年版のミシェル・ファイファーが見事だった。
 
この作品、最後にさてどう格好をつけるかなのだが、オールスター・キャストになりがちな二つの映画ではえっそうなのという感じである。これらに比べ、そして原作に比べても、TV映画(2010)は秀逸だった。ここでのポアロ役デイヴィッド・スーシェの台詞と演技は長く記憶にのこるだろう。原作から一段階上に昇華したといえようか。

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