ハンナとその姉妹 (Hannah and her sisters 、1986米、106分)
監督・脚本:ウディ・アレン
ウディ・アレン、マイケ・ケイン、ミア・ファーロー、ダイアン・ウィースト、バーバラ・ハーシー、キャリー・フィッシャー
これもやはりニューヨークのアートやメディア世界の人たちを中心とした人間関係のドラマである。登場人物の範囲と展開からも、舞台演劇にもなりうる話である。ウディ・アレンの作品特有のセリフの多さも演劇調で、先の仲代達矢が言うように映画としてはちょっとという感もする。しかし話の展開、場面のつながりは映画的な自由度とテンポがあり、アレンならではの音楽選曲、それもクラシックとジャズ双方の良さもあいまって、楽しめる映画になっている。彼の作品の中でひときわ評価が高いのもうなづける。
三姉妹の長女ハンナ(ミア・ファーロー)の前夫(アレン)と現在の夫(マイケル・ケイン)がそれぞれ二女、三女と仲よくなってしまい、彼ら彼女らの過去が浮き彫りにされるとともに、苦しそうな顔をしながら、あまり体裁を気にせずに進んでしまう(と言うよりほかないのだが)登場人物たちの行動が、風俗的にもセンスのいい画面で描かれる。
アレンの映画をそんなに多く見てはいないと思うが、彼の作品がなんとか見られるのは、格好のつけ方と、それにもかかわらず透けて見えてしまう主人公の、アレンのそれもかなり下卑た本音がうまく描かれていからだろう。「マンハッタン」でも書いたように、それが後年されに映画として楽しめるものになった。
そういう多くの映画の結末を並べてみると、これらはアレンがなんとか死なずに生きていけるためのラストシーンかな、と思えてくるのだが。