「電子書籍奮闘記」(萩野正昭著、新潮社)
電子書籍の紙の本に対するポジションがいよいよ現実的なものになってきているときに、これまでこの分野をある意味でひっぱってきたそして苦闘してきたボイジャー主宰者萩野正昭の、本質をついた、そして本音を出した本である。
この30年あまりの著者の半世紀、そして関連分野の光景は、ああやはりそうだったのかというところと、えっとびっくりするところと、両方である。
著者がこの分野に入り込む前、パイオニアにいてレーザー・ディスクをやっていたというのは知らなかった。この本を読んで、改めてまだ我が家に残っている比較的初期のプレーヤーを動かし、そのリモコンを見てみると、本書に書いてあるような、このメディア・方式とエキスパンド・ブックとの対応が本当に感じられ、驚く。
つまるところ、本も印刷された紙でなければならないということはないわけで、テキストの連なりはメディアを規定しないし、そのメディアが変わっても残らなければ、残さなければならない。
あまり、メディア、プラットフォームに頭を煩わせずに、とにかテキストをく残していくということを考えた方がいいかもしれない。
メーカーも出版社も、この本を一度は読んで置いたほうがいいだろう。
インターネット・アーカイブに関する言及も、この本の文脈で読むと納得した。