1つは、同紙社会面2に「一人暮らし老人の財産をどう守る!」「支援制度、浸透せず!」。先に発生した盛岡の元ヘルパー準詐欺事件から、いっこうに具体的対応策が見られない状況に警鐘し、一人暮らしの高齢者の財産管理や弱者を犯罪から守る地域社会の態勢づくりが早期に必要であることを訴えている。岩手県においても高齢世帯(65歳以上)は、2000年が6%、2025年には12.5%に上がるものと予想される。盛岡市においても、2005年6月現在の一人暮らし高齢者は6,518人で2000年から約1,500人増えた。認知症などで判断能力がない人、または不十分な人の契約、財産管理を支援する制度としては、家庭裁判所を通じて行う「成年後見制度」と社会福祉協議会を通じて行う「地域福祉権利擁護事業」を解説し、「成年後見制度」は判断能力を鑑定する費用が10万円程かかり手続きに時間を要するなど使い勝手が悪い。2000年の制度開始からこれまで、岩手県内の申立件数は430件にとどまっている。データや実態を重視し、地域で見守るために必要な態勢はどうあるべきか。貴重な問題提起をされている。
2つ目は、論説で、先の準詐欺事件の背景から現状課題を述べられ「援護の手が及ばぬ無念!」の見出しの思いが、「個人の権利を守るという積極的な意味合いで、県民に一人一人にかかわってくる。家族関係や地域コミュ二ティーも刻々変化しており、社会的弱者の権利擁護を社会が担うという認識は一層重みを増すだろう」と指摘され、今ある「制度の効果的活用を!」と訴えている。成年後見人などの「担い手」には、職務倫理の遵守と関係機関との協力・連携が必要であること。市町村申立を含む「成年後見利用支援事業」の実施には、「行政として、個人の資産管理に関与しにくいことが大きな要因とされるが、建前優先でニーズの有無さえないがしろにするのでは本末転倒」と、明確な解説をされている。
最初この2つの記事、指摘は「矛盾」するような印象を受けたが、よく読んでいるうちに理解が深まってきた。共通点はご指摘の通り、具体的な対応策が出ていないことの「事実」である、再発防止策も不透明である。大変大きな問題である。すぐに決定的な対策はないかも知れないが、適宜、継続的に検討していく問題ではないだろうか。「準詐欺事件」は、手口もさることながら「元ヘルパー」が逮捕されたことで悪質であり、驚嘆した。しかし、まだ捜査中で真相は分からない。一方、世の中では、この事件とは関係なくたくさんの出来事が報道され時間が経過していく。忘れ去られてしまう、流されてしまう事が怖いような気もする。本紙には継続して真相を報道していただきたい。