いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

次世代ディーゼルへの期待

2007年08月10日 | 自動車
 長らく「技術の日産」のキャッチフレーズを広告に使っていた日産自動車が、久々に「技術の日産」らしい新技術を発表しました。近い将来に実用化されるというSULEVディーゼルです。ディーゼル生き残りのためのターゲットとされてきたTier2Bin5規制に対して、更に未燃焼のHCを90%、NOxを70%も減らせるというのですから快挙と言うしかありません。

 1999年にホンダのSULEVガソリン車が出てきた時にも大きな話題になりましたが、SULEVのレベルになると都市部の大気よりもHCやCOが少なく、燃焼で不可避のCO2を除外すれば、自動車エンジンが空気清浄機とも言える優秀な浄化性能を持ちます。これを真っ黒な排気ガスで悪いイメージのあるディーゼルで実現できるとしたら、驚愕の進化と言えましょう。日産自動車はこの次世代技術に先立って、2008年秋から実用的なディーゼル車を市販するようで、ゴーンさんによるリストラばかりが目についた近年の日産自動車が、世界レベルの自動車メーカーの一角として甦る契機になると思います。

 今回の技術的なハイライトは、日産のサイトに説明のあるHC吸着触媒のようです。低分子に砕けたHCは酸化され易く、そのまま排出するとホルムアルデヒドなどを生成しやすいため、処理する必要がありました。完全に酸化してしまえば水とCO2になり問題はほとんどないのですが、不完全な酸化ではホルムアルデヒドそのものや、類似のアルデヒド、ケトン、アルコール類が発生してしまいます。

 ところがHCや、同時に排出される有害なCOを完全に酸化するために吸気を増やして酸素を過剰に供給すると、窒素までが酸化されやすくなりNOxが増加するという難しい関係にありました。この矛盾を解消するべく、触媒表面でHCとNOxを反応させてHCは酸化し、NOxは還元して無害な窒素に戻すという難しい技術が視野に入ったのは驚くべきことです。

 今までクリーンディーゼルで先行していた各社は、酸化触媒でHCとCOを酸化しておいて、その後で尿素水を使ってNOxを還元するシステムや、酸素過剰状態とわずかな酸素不足状態を細かく切り替えてエンジンを稼動することで、触媒に吸着したNOxとアンモニアを反応させてどちらも窒素にして処理するシステムを開発していましたが、新型触媒だけで処理できるのならそれが一番スマートなはずです。

 既に実用化されている尿素水システムに比べると触媒の開発が難しく、市販はまだ先の話だそうですが、メーカー間の活発な競争により次々に優れたシステムが開発されるのは頼もしいことです。

 これで2008年から2009年に掛けては、各社からポスト新長期規制に適合するクリーンディーゼル自動車が集中して発売されるでしょう。ディーゼルに対する排気ガス規制が急激に厳しくなったため、当初はメーカーや運輸業界などの関係筋から強い反発を招きましたが、実際にこの数年で東京都のディーゼル規制が功を奏しているのを見れば、どうしても必要な規制だと判断されます。規制を乗り越えて復活するディーゼル乗用車は、燃料価格の上昇傾向を受けて消費者から歓迎されるでしょう。我が家も次の買い替え時(かなり先だと思いますが)には検討したいと思います。それまでに各社から手頃なSULEVディーゼルが販売されていれば何よりです。
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