いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

地上デジタルの泥沼化は回避できるか?

2007年08月29日 | たまには意見表明
 安倍内閣の内閣改造で総務大臣が菅さんから増田さんに交代しました。今回の内閣改造は参議院選挙での自民党大敗を受けて、いわゆる「お友達内閣」から「働ける内閣」への方針転換を打ち出したものだそうです。その理念からすれば、増田新総務相には期待してもいいのかも知れません。私の関心はタイトルの通り、地上デジタル問題です。これが解決しない限り、リタイア後の楽しみが減ってしまいますからね。

 菅さんが総務相の時に、南米を訪問して日本式の地上デジタル普及を呼び掛ける、というなかなかお笑いのネタになりそうなニュースがありました。公共性の高い無料テレビ放送のデジタル化において、日本方式はアメリカ方式やEU方式に比べて普及が遅れ、今や売り込める相手は南米ぐらいしか残っていない、などと批判されているのは当然ですが、何よりも日本式の地上デジタルは広い地域への普及を想定していないはずだからです。

 だって、狭い日本に乱立する地方局の業務(とそれに対する総務省の利権)を温存するために、わざわざ送信エリアの狭いUHF地上波を採用したのでしょう?広大なブラジル全土を地上デジタルでカバーするためにいくら掛かると思っているんです?

 だいたい、本国の日本でもずるずると巨額の国費投入が続き、5年以上も前から地上デジタル事業の泥沼化には強い批判が出ています。ここまで数千億円を表に裏に注ぎ込んでおきながら、またも追加で500億円を要求するらしいです。これを見たブラジル政府が、本気で日本方式を検討するとはとても思えません。

 今度の総務相である増田さんは前岩手県知事であり、拡大する経済格差にあえぐ地方の惨状をよく知っている人だと言われています。菅さんが「じゃ、あと500億円ね!」と要求した金額が、地域経済の規模と比較してどれだけ大きなものであるかもご存知でしょう。500億円あれば、地方でどれだけの農業振興ができるか、基幹病院が整備できるか、港湾が整備できるか。たかが数百万円とか数千万円の予算が不足して、学校を維持できない自治体だってあるでしょう。それを考えれば、地上デジタルへの「捨て金」に終わりそうな巨額の支出を許すわけにはいきません。

 政府筋では「10年単位で地域格差の拡大傾向は明らかではない」などという無理に作ったレポートが出されているようですが、統計を悪用した誤魔化しなど、丁寧に検証すれば論破できるものです。地域格差は間違いなく拡大しています。

 ここまで考えると、増田総務相が地上デジタルへの際限のない公金投入に批判的な立場を取るのではないか、と期待が持てます。地方では「あと4年足らずでアナログ停波」の縛りがどこへ行ったのかと錯覚するほどデジタル移行が進んでいません。アナログ放送にそこそこ満足しているし、わざわざ高価なデジタル機器を買い揃えるほどの余裕がないのです。

 本当に2011年7月までにアナログ停波が可能だと思っている人は、東京と地方の温度差をわかっていないのでしょう。地方経済を活性化するためには財源委譲などの課題が多数あり、住民の関心はテレビの画質改善などにはありません。内閣改造により、アナログ停波時期の見直しがいよいよ現実のものになってきたと思います。
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