地上デジタルテレビへの全面移行まであと4年ちょっとと法律で決められています。この期限を過ぎるとアナログテレビ放送は停波され、デジタルチューナーを持たないテレビは映らなくなります。またデジタルチューナーを持たないビデオ機器は録画ができなくなります。
そして何より、デジタル受信用のアンテナやCATVと接続していないと、デジタル対応のテレビでも映らなくなります。地上デジタルチューナーの値段はかなり下がってきましたから、いざとなれば政府がこれに補助金を出してばら撒くことも可能(もちろん税金の無駄遣いです)ですが、アンテナは個々に最適な工事が必要なので、デジタルチューナー単体やデジタルチューナー内蔵テレビ、デジタルチューナー内蔵ビデオの普及に比べると大幅に遅れています。
極楽家のある名古屋市では、瀬戸のデジタル放送タワーから地上デジタル放送が送信されています。これはアナログUHFの八事送信所とは方角が明らかに違うので、各家庭のUHFアンテナを見れば地上デジタルに対応しているかどうかは一目瞭然です。周りを見てみると、これがほとんど普及していないんです。
恐らく、他の地方でも似たような状況でしょう。このまま2011年を迎えると、テレビを受信できない世帯が大量に発生することは必定であり、どうしても予定通りにデジタル移行を完了したいのなら、総務省は何が何でも各家庭のデジタル移行へのインセンティブを高め、その障害を取り除くべきです。
ところが放送業界の圧力で、それと逆の政策が水面下で進んでいることが報道され、記事を読んで唖然としました。
地上波テレビをアナログからデジタルに移行して、多くの人が不便を指摘しています。その最大のものが視聴者の間では悪名高いコピーワンスシステムです。これは地上デジタルの全番組に採用されており、一度録画した番組をコピーできないため、バックアップや編集に大きな制約があるという強圧的なコピーガードです。
放送局側のごり押しで、法律にも技術仕様にも明示されていないこのコピーワンスが一方的に導入されたのは、著作権保護のためと説明されています。アナログ時代のように自由にコピーができてしまうと、優良な番組が制作できなくなるのだそうです。
そんなわかり切った嘘を!と思うのが当然です。
まず、デジタルコピーを制限したところで、画質を落としてアナログ処理してしまえば幾らでもコピー可能です。"YouTube"を見てもわかるように、面白半分でコピー画像を利用する人は画質なんか二の次ですから、デジタルコピーだけブロックしても効力はありません。粗悪なコピービデオを販売する人も画質なんか重要視していないでしょう。画質劣化コピーを防ぐことは技術的に不可能ですので、これに対してコピーワンスは無力です。
番組に出演する俳優やアーティストに聞いてみたいですね。番組のデジタルコピーが不法に流通することは確かに損害でしょう。しかし劣化コピーが流通するのに耐えられますか?画質、音質が大幅に劣化したコピーが出回って、「これがXXXのライブか」なんて言われたら平静を保つのは難しいでしょう。それより、デジタル指紋システムなどで違法コピーを追跡して損害賠償を請求できるようにした方が有効なのではないでしょうか?
それから、家庭内のコピーすらブロックすることが、出演者の利益になるでしょうか?日本と違って放送局より制作側の力が強く、出演者の権利意識も高いアメリカですら、無料の一般放送でコピーガードなど採用していません。ある程度のコピーは著作権者の利益になるからです。
考えてみて下さい。地上デジタルを最初に導入した人が、親戚や友達にDVDをコピーしてあげて、「見てごらんよ。本当にきれいなんだから!」と広めてくれる。これは出演者のみならず、地上デジタルの最も有効な宣伝になります。出演者に興味を持って、今度はCDを買おうとか、映画を見てみようとか考える人も出てくるでしょう。これまで禁止することが、マーケットの広がりに大きな障害となっていることは明らかです。コンテンツは売れてなんぼ、なんです。囲い込んでも利益にはなりません。
従って、コンテンツ産業を振興する総務省としてはコピーワンス廃止以外にまともな選択肢はなかったはずです。それなのに今回の委員会の方向は一体何でしょうか?相変わらずコピーに大きな制約を掛けたまま、第一世代とか第二世代とか、しかも第一世代でも何回コピーしたとか、こんな複雑なことを視聴者に押し付けようとしているのでしょうか?
明言しますが、消費者は難しいものには手を出しません。
DVDレコーダーの普及が伸び悩んでいる原因は、コピーワンスの他に複雑なディスクの互換性があると言われています。DVD-R, DVD+R, DVD-RAM, DVD-RWとそれぞれ使い方が異なり、しかも単層あり二層あり、ダビング速度も2倍速、4倍速、8倍速、16倍速があり、データ用とビデオ用があり、CPRM対応と未対応あり、録画方式もビデオモードとVRモードありで、一度どれかに決めてしまえば他のフォーマットを試すなんて面倒でやってられません!
そこに複雑な「著作権保護」システムを押し付けようと言うのですよ。これで地上デジタルの普及が促進されるとか、レコーダーが沢山売れるとか、視聴率が上がるとか馬鹿なことをよもや期待していないでしょうね。
はっきり言って、コピーワンスやB-CASシステムは著作者や著作権者の利益のためではなく、放送局の利益のためのものです。テレビ広告を収入源とする放送局にとって、視聴者が古い番組を何回も楽しんで見るなんて迷惑そのもの。新しい広告を見てくれなければ、テレビ広告屋としての収入が増えないからです。どんな下らない番組だろうが、手抜きの番組だろうが、新しければ新たな契約が取れるのです。
そのテレビ広告屋としての独占の地位を脅かすのが、他でもないインターネットですね。ブロードバンドを利用したテレビ放送は世界中で普及が始まっており、中にはバドワイザーで有名なビールメーカー、Anheuser-Buschが自前でネット放送局を始めてしまうなど、既存の放送局離れが着々と進んでいます。
こうしたネットの攻勢に対して、今回の日本の放送局のごり押しは、視聴者に支持されることのない、いかにも無駄な悪あがきに見えます。幸い、日本の放送局はコンテンツホルダーとしても実績があるのですから、今までのように配信業務を独占して広告料を取るビジネスモデルから、間口をネットなどに広げてコンテンツを販売するビジネスモデルに移行することは可能なはずです。チャンネルが増えれば増えるほど、優良コンテンツは貴重になるはずではないですか。
それなのに、今のところ放送局がやっているのは、間口を狭くしてスポンサーが他に流れないように抑えているだけ。こんな封建主義ではネットにおける主導権を取れるはずがありません。このままでは隆盛を誇ったテレビ局も、新しい波に乗れずにネットに呑み込まれてしまうのかと思えば感慨もあり、今回の委員会の方向が地上デジタルの普及を阻害し、ひいてはネットという強敵の前で自滅するのが暗示されたように感じて暗澹たる思いです。
そして何より、デジタル受信用のアンテナやCATVと接続していないと、デジタル対応のテレビでも映らなくなります。地上デジタルチューナーの値段はかなり下がってきましたから、いざとなれば政府がこれに補助金を出してばら撒くことも可能(もちろん税金の無駄遣いです)ですが、アンテナは個々に最適な工事が必要なので、デジタルチューナー単体やデジタルチューナー内蔵テレビ、デジタルチューナー内蔵ビデオの普及に比べると大幅に遅れています。
極楽家のある名古屋市では、瀬戸のデジタル放送タワーから地上デジタル放送が送信されています。これはアナログUHFの八事送信所とは方角が明らかに違うので、各家庭のUHFアンテナを見れば地上デジタルに対応しているかどうかは一目瞭然です。周りを見てみると、これがほとんど普及していないんです。
恐らく、他の地方でも似たような状況でしょう。このまま2011年を迎えると、テレビを受信できない世帯が大量に発生することは必定であり、どうしても予定通りにデジタル移行を完了したいのなら、総務省は何が何でも各家庭のデジタル移行へのインセンティブを高め、その障害を取り除くべきです。
ところが放送業界の圧力で、それと逆の政策が水面下で進んでいることが報道され、記事を読んで唖然としました。
地上波テレビをアナログからデジタルに移行して、多くの人が不便を指摘しています。その最大のものが視聴者の間では悪名高いコピーワンスシステムです。これは地上デジタルの全番組に採用されており、一度録画した番組をコピーできないため、バックアップや編集に大きな制約があるという強圧的なコピーガードです。
放送局側のごり押しで、法律にも技術仕様にも明示されていないこのコピーワンスが一方的に導入されたのは、著作権保護のためと説明されています。アナログ時代のように自由にコピーができてしまうと、優良な番組が制作できなくなるのだそうです。
そんなわかり切った嘘を!と思うのが当然です。
まず、デジタルコピーを制限したところで、画質を落としてアナログ処理してしまえば幾らでもコピー可能です。"YouTube"を見てもわかるように、面白半分でコピー画像を利用する人は画質なんか二の次ですから、デジタルコピーだけブロックしても効力はありません。粗悪なコピービデオを販売する人も画質なんか重要視していないでしょう。画質劣化コピーを防ぐことは技術的に不可能ですので、これに対してコピーワンスは無力です。
番組に出演する俳優やアーティストに聞いてみたいですね。番組のデジタルコピーが不法に流通することは確かに損害でしょう。しかし劣化コピーが流通するのに耐えられますか?画質、音質が大幅に劣化したコピーが出回って、「これがXXXのライブか」なんて言われたら平静を保つのは難しいでしょう。それより、デジタル指紋システムなどで違法コピーを追跡して損害賠償を請求できるようにした方が有効なのではないでしょうか?
それから、家庭内のコピーすらブロックすることが、出演者の利益になるでしょうか?日本と違って放送局より制作側の力が強く、出演者の権利意識も高いアメリカですら、無料の一般放送でコピーガードなど採用していません。ある程度のコピーは著作権者の利益になるからです。
考えてみて下さい。地上デジタルを最初に導入した人が、親戚や友達にDVDをコピーしてあげて、「見てごらんよ。本当にきれいなんだから!」と広めてくれる。これは出演者のみならず、地上デジタルの最も有効な宣伝になります。出演者に興味を持って、今度はCDを買おうとか、映画を見てみようとか考える人も出てくるでしょう。これまで禁止することが、マーケットの広がりに大きな障害となっていることは明らかです。コンテンツは売れてなんぼ、なんです。囲い込んでも利益にはなりません。
従って、コンテンツ産業を振興する総務省としてはコピーワンス廃止以外にまともな選択肢はなかったはずです。それなのに今回の委員会の方向は一体何でしょうか?相変わらずコピーに大きな制約を掛けたまま、第一世代とか第二世代とか、しかも第一世代でも何回コピーしたとか、こんな複雑なことを視聴者に押し付けようとしているのでしょうか?
明言しますが、消費者は難しいものには手を出しません。
DVDレコーダーの普及が伸び悩んでいる原因は、コピーワンスの他に複雑なディスクの互換性があると言われています。DVD-R, DVD+R, DVD-RAM, DVD-RWとそれぞれ使い方が異なり、しかも単層あり二層あり、ダビング速度も2倍速、4倍速、8倍速、16倍速があり、データ用とビデオ用があり、CPRM対応と未対応あり、録画方式もビデオモードとVRモードありで、一度どれかに決めてしまえば他のフォーマットを試すなんて面倒でやってられません!
そこに複雑な「著作権保護」システムを押し付けようと言うのですよ。これで地上デジタルの普及が促進されるとか、レコーダーが沢山売れるとか、視聴率が上がるとか馬鹿なことをよもや期待していないでしょうね。
はっきり言って、コピーワンスやB-CASシステムは著作者や著作権者の利益のためではなく、放送局の利益のためのものです。テレビ広告を収入源とする放送局にとって、視聴者が古い番組を何回も楽しんで見るなんて迷惑そのもの。新しい広告を見てくれなければ、テレビ広告屋としての収入が増えないからです。どんな下らない番組だろうが、手抜きの番組だろうが、新しければ新たな契約が取れるのです。
そのテレビ広告屋としての独占の地位を脅かすのが、他でもないインターネットですね。ブロードバンドを利用したテレビ放送は世界中で普及が始まっており、中にはバドワイザーで有名なビールメーカー、Anheuser-Buschが自前でネット放送局を始めてしまうなど、既存の放送局離れが着々と進んでいます。
こうしたネットの攻勢に対して、今回の日本の放送局のごり押しは、視聴者に支持されることのない、いかにも無駄な悪あがきに見えます。幸い、日本の放送局はコンテンツホルダーとしても実績があるのですから、今までのように配信業務を独占して広告料を取るビジネスモデルから、間口をネットなどに広げてコンテンツを販売するビジネスモデルに移行することは可能なはずです。チャンネルが増えれば増えるほど、優良コンテンツは貴重になるはずではないですか。
それなのに、今のところ放送局がやっているのは、間口を狭くしてスポンサーが他に流れないように抑えているだけ。こんな封建主義ではネットにおける主導権を取れるはずがありません。このままでは隆盛を誇ったテレビ局も、新しい波に乗れずにネットに呑み込まれてしまうのかと思えば感慨もあり、今回の委員会の方向が地上デジタルの普及を阻害し、ひいてはネットという強敵の前で自滅するのが暗示されたように感じて暗澹たる思いです。