南海本線の撮影名所、紀ノ川橋梁、和歌山市駅から徒歩で難波方の河岸まで行きたい時は、駅の裏手に廻って、「河西橋」と言う紀ノ川を渡る人道橋を通るルートが歩きやすくておすすめです(対岸の堤防上を歩いて、北島橋か紀ノ国大橋を渡るルートだと、堤防上の道路が狭いのに非常に交通量が多くて歩きにくいです)。で、本題はその「河西橋」ですが、
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ええと…どう見ても元鉄道橋臭いです…
そう、廃線マニアにはお馴染みの物件ですが、この人道橋の正体は旧加太軽便鉄道の橋梁で、昭和28年までは和歌山市から北島を経由して東松江に至る南海加太線の本線として電車が走っていました。ただ規格的に重量貨物を通すにはやや心許なく、戦時中に住友製鋼所への貨物輸送のため、東松江から本線の紀ノ川駅に接続する現ルートが開業してこちらがメインルートとなりました。取り残された北島経由の路線は、この紀ノ川橋梁が水害で損壊したのを契機に和歌山市―北島間が昭和30年に廃止、北島支線と呼ばれるようになった残る北島―東松江間も昭和41年に廃止されました。そして、この紀ノ川橋梁は和歌山市に譲渡され、補修の上で人道橋として再生しました。
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橋脚が1本傾いています。これは昭和25年のジェーン台風の仕業だそうで、傾いた状態で仮復旧され、その上をタマゴ型木造電車が走る写真をどこかで見た記憶があります。今では考えられませんが、一応当時なりに4個モータの電車からモータを2個外して少し軽量化した電車を区間専用車として充てたり、速度制限したり気は使ったみたいですが。
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橋の中央は鉄道廃止後造り直された部分で、オリジナルの橋脚は石積みですが、改築部分はコンクリートで、そのスパンもかなり長いです。
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茶色い大きなビルが和歌山市駅です。
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橋の和歌山市方の廃線敷きは検車区の敷地に飲み込まれてしまいました。
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北島方にはもう一つ小さなガーダー橋が残っていました。
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橋脚や橋台には後天的な補強の痕跡が至る所に。
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釣りは禁止です。元鉄道橋故、道幅は狭いのでこんなところで長時間釣り糸を垂れていれば通行の邪魔ですね。
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新しい橋を架けるため測量中でした。数年後には河西橋は新しく生まれ変わる予定ですので、興味ある方は是非お早めにどうぞ。築百年を経たオリジナル部分は上記の通り、度重なる補修で満身創痍な状態ですが、この橋の最終的な寿命を決したのは恐らく後年改築した部分なんでしょうね。改築部分も半世紀位は経っている筈ですし、世界遺産で話題の「軍艦島」の崩壊っぷりを見ても判るように、コンクリート構造物は決して半永久的なものではないのは言うまでも無く。某所で明治期の石積み橋脚のJR本線と昭和初期のRC橋脚の地方私鉄の橋梁が並行しているのを観察した時、前者が重量級の列車が頻繁に通過する筈なのに外見上は未だしっかりしていたのに、後者は既にボロボロで鉄筋も露出し、近い将来大規模な補修が必要になるであろうことが目に見えて感じ取れたのを思い出しました。そう考えると石積みのオリジナル部分は補修で延命を繰り返し、改築部分が寿命に達した所で全体の架け替えを考えるというのはきっと妥当な処置なんでしょう。一つの構成の中に経年の違うものが混在している場合、旧い部分だけを新しく取り換えるか、それとも最旧部分が耐用年数に達した時点で、比較的新しい部分も含め総取り換えするか、担当者にとっては悩ましい所なんでしょうね。電車でもある形式は、初期車は設計上想定した耐用年数を超えても更新修繕で凌いでいるのに、同形式内でも最終グループは更新修繕の時期が訪れる頃には、次世代車への置き換え計画が具現化したため、未更新のまま廃車になる、一見不条理な現象が起きたりしますし。