駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

葛根湯医者

2017年01月27日 | 診療

       

 漢方薬を十数種類採用し、使用している。私が学生だった五十年前は漢方の講義はなかった。今でも全ての大学で漢方の講義があるわけではないようだ。しかし街中で医院を始めると、なんだか病気は重くないのだが色々訴えの多い患者さんが結構たくさん受診される現実があった。マイナートランキライザー、胃粘膜保護剤、軽い鎮痛剤などを投与していたのだが、上手くいかないことも多かった。そこで体質や症状に対応して処方する漢方薬に眼が行き、少しずつ使い始めた。勿論、漢方薬で全てが上手くゆくわけではないが、西洋薬を補完する機能があることを実感している。

 日曜日を半日潰して二回ほど講義を受け、漢方の本も数冊読んだので、免許皆伝とまでは行かないがある程度の知識も身に付けた。中には漢方にのめり込む先生もおられるようだが、そこまでは行っていない。唯、漢方なんぞ保険診療から外してしまえという厚労省とタッグマッチ?で主張される医師とは意見を異にしている。漢方薬は症例を選べば明らかに有効だ。

 さてそこで葛根湯なのだが、これは優れものだ。落語にどんな病気でも葛根湯しか出さない医者が出て来る。出さないのではなくてしか出せないらしい。葛根湯医者と呼んでからかっているのだが、藪よりは良さそうに思う。先手必勝という言葉がある、これは長い経験から出たそれなりに根拠のある考え方だが、葛根湯にはこの先手必勝の効果が期待できる。万人に期待できるかどうかは分からないが、時々「先生何だか風邪を引きそうだから葛根湯を下さい、頂戴」という患者さんが居られる。どうも、風邪を引きそうだと言う時に葛根湯を飲むと有効らしいのだ。少なからず葛根湯患者がいるから本当なんだろうと思う。実は私も微かに悪寒がする時や喉がイガイガする時に飲んでいる、何だか効いているように思う。

 葛根湯医者と呼ばれても気にしない、私は葛根湯も処方できる医者だと言い返そう。

コメント (2)
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