この頃帽子をかぶっている人を見かけることは少ない。尤も、記憶を辿っても帽子をかぶっている人が多かった時代を思い出すことは出来ない。どうも帽子をかぶる人が多かったのは戦前のことのようだ。
外来に時々帽子をかぶった中高年女性がやってくるが、殆どはぼさぼさの頭を隠すためのもので、おしゃれというのとは違う。それでも我が町にも一軒帽子屋がある。外から見たところ女性用のようだが、ついぞお店内に客さんを見かけたことはなく、他人事ながらやっていけるのかなと余計な心配をしてしまう。昔は花嫁が帽子をかぶったものだが、最近はどうなんだろう。
シルクハットのロンドンでも帽子屋は減っているようで、帽子屋には苦虫を噛みつぶしたような親父が佇み、壁に面白半分でかぶってみるのはご遠慮をと書いてあった記憶がある。今はシティもカジュアルになってるのではと想像する。シルクハットの帽子屋はなくなっているかもしれない。
友人のK君は私より3、4才若いのだが、よく帽子をかぶっている。ハンチングというのだろうかベレー帽に一寸ひさしが付いたようなスポーティな感じの帽子だ。髪の毛は年齢相当で、禿げ上がっている訳ではないので、本人は否定するかもしれないがオシャレなのだろうと思う。当然よく似合い、スポーティで一寸品の良い感じが漂う。170cmで60kgくらい、いつも微笑を浮かべどちらかと言えば醤油顔なのだが、陽関を出たシルクロード辺りで羊でも飼っていそうな雰囲気を持っている。
帽子は髪型に依ってはかぶりにくいし、馴れないと一寸煩わしいかもしれないが、ネクタイ以上に雰囲気を変えオシャレな感じがするので、一寸似合う人には是非かぶって欲しいと、帽子屋の回し者のようなことを書いてしまう。K氏は穏やか謙遜な人柄で、彼が居ると場が和んで楽しい。帽子効果かもしれん。